「昨日の自分よりも成長し、目的を達成するための実践」

のひとつとして、図書から学んだことを実践していこう

 

 

本日は8月4日

理念と経営2026年8月号より
「巻頭対談」より

 

 TODAY'S
 
「事業戦略ストーリー」を熱く語れ!

米グーグル、米アマゾンといった「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大IT企業から注目されているのが株式会社フジクラである。過去最大の赤字を計上し、一時は存続の危機に追い込まれた同社は、いかに現在のポジションを獲得するまでに至ったか。

P08抜粋

 

ポイント

1. 世界一の技術は「常識を疑う」ことから生まれた

フジクラの主力製品「SWR/WTC」は、一つのケーブルに最大一万本以上の光ファイバを収容できる、超高密度光ファイバケーブルです。

従来のリボンファイバは、光ファイバ全体を樹脂で固めるため、曲げられる方向が限られていました。

岡田直樹社長は、

光ファイバをすべて固めず、部分的に接着すればよいのではないか

と考えました。

業界では「長手方向に均一であること」が常識でしたが、それを捨てたことで、

  • あらゆる方向へ曲がる

  • ねじれに強い

  • ケーブルを細くできる

  • 高密度に収容できる

という革新が生まれました。


2. 革新的な技術ほど、量産化に時間がかかる

最初の試作品は、光ファイバを並べ、瞬間接着剤で部分的に接着するという簡素なものでした。

しかし、量産技術として成立させるまでには約十年かかりました。

アイデアだけでは事業になりません。

  • 安定品質

  • 製造技術

  • 生産設備

  • コスト

  • 顧客評価

まで整える必要があります。

イノベーションとは、着想の新しさだけでなく、量産と事業化までやり切る力である。


3. 技術が優れていても、市場選択を誤れば売れない

日本では光ファイバ網の整備が早く進み、市場が成熟していました。

そこで岡田氏は海外展開を進めましたが、中国やインドという巨大市場をあえて狙いませんでした。

SWR/WTCは高性能ですが、一般的なケーブルより価格は高い。

人件費が安く、新たな管路工事が可能な新興国では、その価値が伝わりにくいと考えたからです。

一方、欧米では、

  • 人件費が高い

  • 既存管路に空きが少ない

  • 新規土木工事が高額

  • 光ファイバの普及余地がある

ため、細いケーブルを既存管路へ追加できる価値が大きい。

大きな市場ではなく、自社技術の価値を最も理解する市場を選んだ。


4. 売ったのはケーブルではなく「総コスト削減」

岡田氏が欧米で語ったのは、製品性能だけではありませんでした。

ケーブル自体は高くても、土木工事が不要になるため、顧客の総コストは下がる

という事業戦略ストーリーです。

顧客が欲しいのは、細いケーブルそのものではありません。

  • 工期短縮

  • 工事費削減

  • 既存設備の活用

  • 将来の通信容量

  • 運用負担の軽減

です。

技術を顧客の利益へ翻訳したことで、差別化が成立した。


5. 顧客によって意思決定の速さは違う

通信事業者への採用には、最初の接触から四年かかることもありました。

一方、グーグルやアマゾンなどのハイパースケーラーは、商品価値を認めれば迅速に採用しました。

岡田氏は、通信会社だけでなく、巨大クラウド事業者にも積極的に接触しました。

その結果、生成AIとデータセンター建設の急拡大による需要を取り込むことができました。

将来を正確に予測したというより、複数の有力顧客との接点を先に築いていたことが、追い風を成果に変えた。


6. 危機では撤退と集中を同時に行う

フジクラは二〇二〇年三月期に、過去最大となる三八五億円の赤字を計上しました。

経営再建では、「一〇〇日プラン」を策定し、

  • 経営体制の改革

  • 不採算事業の撤退・売却

  • 不採算製品の廃止

  • 値上げ

  • 人員削減

  • 拠点統合

など、一〇〇項目を超える施策を実行しました。

多くは縮小や撤退でしたが、SWR/WTCへの投資だけは継続しました。

危機対応とは、すべてを削ることではなく、未来を生む一つを残すことである。


7. 組織の部分最適を壊した

社内カンパニー制では、各事業や部門の責任者が、自部門を守る方向へ動きやすくなっていました。

業績がよい時は機能しても、危機になると、

  • 撤退判断が遅れる

  • 責任が分散する

  • 部門間の利害がぶつかる

  • 全社最適が失われる

という問題が起きます。

岡田氏は社内カンパニー制を廃止し、ガバナンスを再構築しました。

自身が担当していた次世代光ケーブル事業では、開発・製造・設計・営業を一気通貫で統括していました。

一つの事業全体に責任を持つ組織の方が、判断が明確になる。


8. しがらみのなさが改革を進めた

岡田氏は長く研究開発拠点に勤務しており、本社幹部との強い利害関係やしがらみがありませんでした。

そのため、不採算事業の過去や経緯に過度に引きずられず、撤退を判断できました。

長く携わった人ほど、

  • 過去の投資

  • 関係者への遠慮

  • 成功体験

  • 自分の責任

に縛られやすくなります。

改革には、過去を理解する人だけでなく、過去に執着しない視点も必要である。


9. 一つの事業を任せることが経営者を育てる

岡田氏は、自身が次世代光ケーブル事業の全工程に責任を負った経験が、経営者としての訓練になったと語っています。

現在は、社員から新規事業や既存事業強化のアイデアを募集し、採用者自身をプロジェクトリーダーにしています。

上司を通さず社長へ直接提案でき、実行責任も本人が持ちます。

人を育てるには、研修だけでなく、小さな事業を丸ごと任せる経験が必要である。


10. 成功後も次の柱を準備する

現在は生成AIの普及によって、データセンター向け光ファイバ需要が急増しています。

しかしフジクラは、その成功だけに依存せず、

  • 核融合発電向け超電導線材

  • 光ファイバの次の技術

  • 新規事業プロジェクト

を育てています。

「進取の精神」と「技術のフジクラ」は別々ではありません。

社会変化を早く捉え、必要な価値を技術で実現することが、フジクラのDNAである。


結論

フジクラの復活を支えたのは、世界一の技術だけではありません。

技術を、どの顧客に、どの価値として、どのように利益へ結びつけるかという事業戦略ストーリー

があったからです。

  • 中国・インドを狙わない

  • 欧米先進国へ集中する

  • 製品価格ではなく総コストを語る

  • 危機でも成長事業への投資を残す

  • 不採算事業は撤退する

という選択が、一つの筋の通った物語になっていました。


水平思考

この事例は、技術開発の成功ではなく、

顧客のコスト構造を変えた事例

として見ることができます。

フジクラはケーブルを細くしただけではありません。

既存管路を使えるようにすることで、顧客が行っていた大規模な土木工事そのものを不要にしました。

つまり、競合製品より高くても、

顧客の仕事全体を見れば安くなる

という新しい競争軸をつくったのです。


量子思考

一見すると、

  • 撤退と投資

  • 高価格とコスト削減

  • 技術者と経営者

  • 標準化と常識破壊

は矛盾します。

しかしフジクラは、不採算事業から撤退しながら、成長技術へ投資しました。

高価格の商品を売りながら、顧客の総コストを下げました。

技術者だった岡田氏が、事業全体へ責任を持つことで経営者になりました。

強い戦略とは、どちらか一方を選ぶだけでなく、一見矛盾する価値を一つの物語として成立させることである。


自社への活用方法

活用キーワードは、

事業戦略ストーリー・顧客価値・市場選択・総コスト・選択と集中・撤退基準・一気通貫・責任者育成・未来投資・技術の収益化

関係者に共有すべき視点は、

  • 技術や商品だけを説明しない

  • 誰に最も価値があるかを絞る

  • 顧客の全体コストを見る

  • やらない市場を決める

  • 危機でも残す成長分野を明確にする

  • 一つの事業を一人に任せる

  • 技術から収益までの道筋を語る

という点です。


自社の哲学と照らし合わせて

今回の内容は、自社が大切にする、

  • イノベーション

  • シンプル

  • 正しい評価

  • 当事者意識

  • 多様性

と重なります。

特に「正しい評価」とは、商品の価格だけで判断せず、

  • 顧客の手間

  • 工期

  • 将来の負担

  • 維持費

  • 全体最適

まで見ることです。

また、自社の哲学である、

「世界に一つしかない地域をつくるために、世界に一つしかない組み合わせを育て続ける」

ためにも、個別の事業を並べるだけでは不十分です。

不動産、地域、伝統文化、外国人支援、農業、デジタルが、

  • 誰の課題を解決するのか

  • なぜ自社が行うのか

  • どのようにつながるのか

  • どう継続的な収益になるのか

を一つのストーリーとして語る必要があります。

最後に一言でまとめるなら、

技術や資源の価値は、それ自体では決まらない。顧客の成功と自社の利益を結ぶ物語を描き、熱く語ることで初めて事業になる。

 

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