私たちが暮らす土地の地形はどのようにして形成され、変化してきたのか、そして私たちはどのような地形に住まい、どのように地形を利用して生業を営んできたのか。
特に多くの人々が暮らす平野を中心に、歴史地理学の観点から紹介している本です。
河川の営力によって、何百年、何千年という時間をかけて形作られ、姿を変えてきた平野部の地形。
昔の人々は、地形条件をみて、平野の中に作り出される台地や自然堤防といった微高地に住み、後背湿地のような低地を水田として利用することで、河川によってしばしばもたらされる水害に備えていたそうです。
しかし、時代が進み、築堤技術が進歩し、重機やコンクリートの利用によって大規模な治水が行われるようになった現代では、人々の水害に対する警戒心が緩み、人口増加・人口集中による土地の需要の高まりも相まって、かつて人の住まなかったような土地にどんどんと高層マンション、工場、商業施設などが建てられるようになっています。
ただ、人工堤防による治水にも限界があり、ひとたび堤防が決壊するなどすれば、真っ先に被害を被るのはこうした低地であり、その被害に関しては地球温暖化や異常気象のせいばかりにはできないのではないかと思います。
とは言っても、多くの人はそういったいつ起こるか起こらないかもわからないような災害のリスクからは目をそらし、ついつい目先の利便性を重視しがちなわけですが...
以前読んだ寺田寅彦「天災と日本人」では、”地を相する”と表現されていましたが、防災・減災を真剣に考えるのであれば、単にハザードマップを見るだけではなく、地相、すなわち地形条件を見極める術というものも少しは身につけておくべきなのでしょうね。