世の中が大変な状況になると、「この人はどういうことを考えているのかなぁ...」と話を聞きたくなる人が何人かいます。
養老先生もその一人です。
コロナ禍に書かれたこの本ですが、がっつりコロナのことを書いているわけでもなく、この間に気になったことあれやこれやについて考えてみたというような内容に加え、ご自身のコロナ禍の日常や、飼い猫のまるについても書かれています。
全体を通して、世の中の「ああすればこうなる」、「仕方がない」といった考え方とのズレが特に気になっているようで、そうしたズレを解消しようといろいろ考えを巡らせているのですが、相変わらずの養老節を感じつつも、何かこれを言いたい、書きたいというような強い意気込みは感じられず、過去の「壁」シリーズよりも、半歩下がってやんわりと語られている印象を受けました。
養老先生の日常やまるとの生活などについては、テレビで時々やっていた「まいにち養老先生、ときどきまる」も何度か観ましたが、あの番組の雰囲気がそのまま本になったというような感じもします。
養老先生の著書には、特に生き方のヒントみたいなものを求めているつもりはありませんが、その発想や考え方には共感できる部分が多く、読むと気持ちが軽くなるような気がします。
この本のあとがきに”「あんたの書くことくらいは誰でも考えているんだよ。ただ表現能力がないだけだ」といわれた。”と書かれていましたが、確かにそういう一面もあるのかもしれません。
考えを的確に表現するためには、技術とともに知識や経験も必要なわけで、改めて己の未熟さを痛感しました。