”天災から日本史を読みなおす”
地震が秀吉・家康の天下取りに与えた影響など、天災が歴史を変えた事例も書かれていますが、この本で本当に訴えたいことは、どちらかというと逆に”日本史から天災を読みなおす”、つまり、古文書や言い伝えとして残されている天災の歴史を、今後の防災に役立てることの重要性ではないかと思います。
どのような規模の災害でどのような被害が出たのか、繰り返し発生する災害であれば何年間隔で発生するのか、前兆現象があったのかどうか、人々がとった避難行動、災害後に行った災害対策など、この本には様々な災害と防災の記録が例として挙げられていますが、防災計画を立てる上で歴史に学ぶことは非常に多いと思います。
度重なる天災、激甚化する天災によって、年々、日本人の防災意識は高まっているとは思います。
自分の住んでいる地域にどのような災害の危険があるのかを知るにあたっては、自治体が配布している防災のガイド的な冊子やハザードマップも参考になりますが、こういう無機質な情報よりも、過去にその地域で起こった天災の記録や、先人が残した知恵や教訓といった生きた情報の方が説得力があります。
災害の記録・記憶というのは、時代の経過とともに薄れ、忘れ去られがちですが、情報技術の発達した現代であれば、埋もれている情報を掘り起こすことも、散らばっている情報を集約することも、広く一般に情報を広めることも共有することも、次の時代に受け継いでいくことも容易なはずですので、各地域でこういう活動にも力を入れていくことが重要なのではないかと思います。
最近、大規模な災害の被災地を中心に”語り部活動”が盛んに行われていますが、やはり、人から人へ直接語り伝えるのが一番人の心に響くと思いますので、こういう活動は特に大切なことなんだなと改めて思いました。