山登りをやっていると、山の宗教に触れる機会も多いので、気になって買ってみたのですが、ちょっと思ってた内容とは違いました。
帯に信仰で有名な山や山とかかわりのある寺院の名前が列記されていたので、てっきり、この山にはこうこうこういう信仰の歴史があり...といったことをある程度宗旨などで分類した上で、紹介している本なのかなと思っていたのですが、そうした信仰の事例に触れつつも、テーマとしてはもっと広い視点で古代から現代に至る日本の山の宗教史と向き合う本でした。
山の宗教と言うと、これまで山登りなどで触れてきた経験から、富士山、立山、白山などの霊山への信仰登山、大峯山などの険しい峰々を回峰する修験道、深山に常住し修行に勤しむ高野山や比叡山、長い道のりを歩いて遠く離れた聖地を巡礼する熊野参詣などをまず思い浮かべます。
それぞれが山の宗教の到達点を示すような象徴的な例かと思いますが、これらは山の宗教が時代や環境の変化とともに変容し、多様に広がって行った結果、形作られたものであって、古代には高山や深山に信仰の場を求めることは稀で、人々の生活の場の辺縁である山の裾野が山の宗教の中心地だったそうです。
本書の特徴は、この山の裾野に着目し、人々の暮らしとの関わりの中から山の宗教を考えているところにあるのかなと思います。
そういう観点で山の宗教を見てみると、これまでとは違った印象も受け、なるほどなと思うところも多々ありました。
ただ、話が仏教寄りに偏っていて神話に由来する神々を祀る神道の話がほとんど出てこなかったところ、現代に生きる我々の近い時代である近世以降がかなり駆け足だったところ、イメージしづらい事例がいくつかあったところには、物足りなさ、バランスの悪さ、わかりづらさを感じました。
それは結局、何を期待してこの本を買ったかというところに帰するわけで、本を選ぶ難しさを改めて実感しました。