先週までNHKの土曜時代ドラマで放送されていた雲霧仁左衛門。
ドラマが面白かったので、原作を読んでみました。
原作は池波正太郎。
江戸市中を騒がす大盗賊雲霧一味とそれを追う火付盗賊改方の攻防を描いたこの作品。
ドラマと原作では趣が大きく異なりました。
ドラマでは、原作のストーリーの大きな流れは活かしつつも、登場人物の役どころやエピソードをけっこう大胆に組み替えて再構成しています。
特に原作のその後を描くシリーズ3以降は、雲霧一味の盗賊としての義が強く押し出されており、時折へまをやらかしつつも土壇場でミラクルを連発する雲霧一味と、安部式部は切れ者だが、配下が凡庸で煮え湯を飲まされ続ける火付盗賊改方というパワーバランスにツッコミを入れたくなりつつも、暴利を貪る商人や賂をもって権力を得ようとする老中や家老からまんまと金を盗み出し、天罰を下す様が痛快で毎回楽しく観ていました。
その中で、とりわけ中井貴一演じる雲霧仁左衛門と國村隼演じる火付盗賊改方長官安部式部の、追う者と追われる者という敵同士の立場に身を置きながらも、男として互いを認め合う関係性が渋くて魅力的なのです。
一方の原作はもっと泥臭く、艶めかしく、ああ、そうだ、池波作品ってこうですよね、という味わいがあります。
首領二人が悪目立ちすることなく、組織対組織の攻防に焦点を当てており、一丸となって事に当たる組織の強さと、わずかな綻びから瓦解してしまう組織の脆さ、その両面を巧みに表現されているところが、魅力になっていると思います。
ドラマも原作も、それぞれ媒体に適した演出で、どちらも面白かったです。
異なる2作品楽しんだようなお得感がありました。