人々を無差別に死に追いやるペストという不条理、そして、ペスト禍においてあぶり出される様々な不条理を例示し、人は不条理にどう立ち向かうべきなのかを問う、カミュの代表作の一つであり、不条理文学の代表作の一つとも言われる作品です。
突然ペストに襲われた小都市で起こることの一部始終を、その災禍の中心でつぶさに見届けてきた語り手が、感情を抑え、努めて客観的に語るスタイルは、瞬時にして激烈な被害をもたらす地震、台風、火山の噴火などとは異なり、静かに進行していく疫病の恐ろしさを表現するにふさわしく、その一方で、ふと浮かび上がってくる登場人物の内に秘められた心の美しさがじんわりと沁みこんでくる心地よさも感じます。
疫病の性質や時代背景も異なりますが、コロナ禍の今と照らし合わせてみても、通ずるところが多く、まったくの架空の話ながらも、リアリティがあり、この時代をどう生きるかという意味でも一つのヒントになるように思います。
医師リウーが友に語った「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。」という言葉。
”誠実さ”とはつまり、「自分の職務を果たすことだと心得ています。」と続けるその言葉は、今の我々にも当てはまるとても大事な言葉だと思います。
今自分ができることをしっかりとやること。 それがコロナと戦う唯一の方法だと思います。
しかし、それにしても独特な文体で、意味がよく理解できない文章も多く、読みにくい本でした。
今だからこそ読みたい本ではありますが、今しか読めない本ですね。