十二国記18年ぶりの書下ろし新作。
しかも、私の好きな泰麒の話ということで期待して読みました。
時系列で言うと「魔性の子」の後、戴国に帰還した泰麒らが、消えた戴国の王、驍宗を探し出し、偽王を玉座から引きずり下ろすというお話です。
この玉座奪還劇に関与する様々な人々、組織の思惑、行動、その背景などを丁寧に描いていく前半は、遅々として話が進みません。
しかし、その分物語が肉厚になっていきます。
思い返せば、過去の作品もそうでしたが、本作は過去最長の4巻構成であり、たっぷりと紙数を割いて進行していくので、その重厚さも過去最高。
偽王の専横に立ち向かい、自ら懐に飛び込んでいく泰麒の成長、決してあきらめない驍宗麾下の武将達の忠心、苦しい生活を強いられる民の願い、それぞれの登場人物の思いがずっしりと圧し掛かってくるような重みがあります。
ちょうど物語の中間あたりで、数々の伏線の中からおおよそこういうことではないかと当たりがついてしまい、早くそこにたどり着けよとヤキモキしたりもしましたが、この我慢の時間帯を乗り越えて後半に入ると、物語が一気に動き出し、もうページをめくるのが止まらなくなりました。
ただ、その結末はうーん、どうなんでしょう?
私が十分に読み切れていないのかもしれませんが、伏線をきれいに回収しきれていないような、若干、不完全燃焼感が残りました。
18年待たされて、4巻読まされて、勝手に結末に対する期待が膨らみ過ぎたということもあるかもしれませんが、兎にも角にも、久々の十二国記の世界観を十分に堪能させていただきました。