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沈黙 (新潮文庫)
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マーティン・スコセッシ監督が長年の構想を経て映画化した遠藤周作の小説「沈黙」。
たまたま、これを取り上げたドキュメンタリー番組を見て、興味が沸いてきたので原作を読んでみました。
遠藤周作の作品は高校生の頃に「海と毒薬」を読んで(読まされて?)以来ですが、どんよりとした厚い雲が垂れ込める中、真っ黒な海を漂っているような、とても重苦しい印象の作品だったことを今でも覚えています。
「沈黙」もストーリーこそ異なりますが、読んでみるとやはり同じような感覚を抱きました。
イエズス会が日本に派遣していたクリストヴァン・フェレイラ教父が棄教したという衝撃的な報告を受け、真実を確かめたいという理由から、島原の乱後、キリスト教への弾圧・迫害が一層厳しさを増している日本に潜入したポルトガルの司祭のロドリゴ。
もうこの時点で、いかなる幸せな結末も思い描けないような絶望的な状況で、ただ神への信仰のみが彼を支えていたわけですが、日本人の信徒たちに加えられる残忍な拷問や殉教に接し、また、裏切りによって自らも捕らえられ、奉行らの狡猾なやり口に追い詰められ、ついには彼自身も棄教を迫られることになります。
神の存在、信仰のあり方、信仰を棄てるということ、そして日本人と西洋人のキリスト教のとらえ方の違いなど、深く考えさせられる一冊です。
特にキチジローという人物をどう理解したらいいのかが、非常に悩ましい...