
兵庫県立美術館と神戸市立博物館をハシゴしてきました。
兵庫県立美術館の特別展は「生誕180年記念 富岡鉄斎 -近代への架け橋-展 」。
幕末から明治、大正期にかけて活躍した近代文人画の巨匠、富岡鉄斎の回顧展です。
同じく幕末から明治期にかけて活躍した山岡鉄舟と混同してしまうほど鉄斎については知識がなかったのですが、清荒神清澄寺に鉄斎美術館があるのがずっと気になっていて、今回はその鉄斎美術館の所蔵品をはじめ、各地から集められた作品や資料が一堂に会する展覧会ということで観に行ってみた次第です。
「万巻の書を読み、万里の道を往く」を座右の銘とし、中国や日本の古典を題材にした人物画、神仙図、仙境図、見聞にもとづいた真景図など数多くの作品を描いた鉄斎ですが、独学で中国や日本のあらゆる画法を研究したというその画風は、伝統を継承しつつも、自由闊達で独創的。
絵の題材はそれ以前の時代とそう変わりませんが、それまでにない画風と、その後の近代の画家たちに影響を与えたという点でも、まさに”近代への架け橋”です。
また、書にも長け、書と画が一体となった作品が多いのも鉄斎の特徴で、「自分の絵を観るなら、まず賛を読んでほしい」と常々言っていたそうです。
特に蘇東坡に強く傾倒していたようで、誕生日が同じということもあり、作品に「東坡同日生」という印をも使用しています。
しかし、そこは感性だけではついていけないところで、己の薄学ゆえに鉄斎が作品に込めた想いを100%感受することができないのが残念なところ。
それでも解説などに頼りつつその想いを少しは感じ取ることができたように思います。
この展覧会は前期と後期に分かれていて一部観たかった作品が観れなかったりもしましたが、そのうちいくつかは鉄斎美術館で観れるようなので、そちらの方にも一度行ってみたいと思います。

王子動物園から兵庫県立美術館までの道はミュージアムロードとして、様々なアーティストの作品が配置されていますが、美術館の海側には、ヤノベケンジの「Sun Sister なぎさ」というオブジェが新たにできていました。
(写真では大きさが伝わりにくいですが6mあります。)
一目見て希望、勇気、逞しさといったメッセージが伝わってくるこの一連のシリーズ、わりと好きです。

兵庫県立美術館のあとは、てくてく歩いて神戸市立博物館へ。
こちらの特別展は「我が名は鶴亭-若冲、大雅も憧れた花鳥画(かっちょいいが)!? 」。
江戸中期の黄檗僧、画家である鶴亭の展覧会です。
鶴亭は、長崎に生まれ、清の画家、沈南蘋に中国の花鳥画の技法を学んだ熊斐の門下として南蘋流の花鳥画を独自の画風にアレンジし、京坂に広めたそうで、伊藤若冲や池大雅にも影響を与えたそうです。
鶴、黄鳥、鷹、四君子などの画題を好み、「嚶鳴」、「威振八荒」などの吉祥性を込めて描いた作品は、着色画では鮮やかな色彩と繊細な筆づかいで鳥や花の生き生きとした表情を表現し、水墨画では大胆な筆致で空気感を際立たせています。
着色画では「牡丹綬帯鳥図」の綬帯鳥の羽根や尾、牡丹の鮮やかな色づかい、全体の構図の素晴らしさに目を奪われました。
水墨画では、「花鳥雑画押絵貼屏風六曲一双」の構図、特に左右から斜めに見た時の対比の面白さに惹かれました。
江戸期の画家の中ではそれほど有名ではないようですが、なかなかどうして魅力的です。
神戸市立博物館では、「南蛮技術・古地図企画展-西洋との出会い-」も開催されており、教科書でお馴染みの「聖・フランシスコ・ザヴィエル像」、狩野内膳の「南蛮屏風」、西洋人が書いた世界地図なども観ることができました。
こちらもなかなか興味深いです。