
交通網がこれだけ発達した現在でも大阪市内には8か所の渡船場があり、毎日渡し船が運航されています。
大阪市市政 現在運行中の渡船場
そのうち、4箇所を巡ってきました。
まずは、天保山行きの市バスに乗って夕凪バス停で降りて徒歩12分。
港区と大正区の間、尻無川を渡す、甚兵衛渡船場 からスタートです。

尻無川の堤はその昔、紅葉の名所で、ここには甚兵衛さんの茶店があり、蛤が名物だったのだとか...
スロープを登って降りて堤防を越えると、小さな浮桟橋があります。
対岸にも同じような浮桟橋があり、渡船が停泊しています。

渡船は日中は15分間隔で運航しており、まずは対岸の大正区側から港区側へとやってきます。
川幅は100mもなく、1分もたたないうちに到着です。

船は簡素な屋根がついたオープンデッキの動力船で、人と自転車が乗ることができます。
定員は50名くらいでしょうか? 自転車なら十数台乗れそうな感じです。
着岸すると乗客が入れ替わり、すぐに折り返します。
復路は一旦バックしてから出るため往路よりも少し時間がかかりますがそれでもあっという間に到着です。

甚兵衛渡船場からは倉庫街や住宅街の中を15分ほど歩き、千歳渡船場 に向かいます。
千歳渡船場は大正内港の入口を横断する渡船場で、新千歳橋という立派な橋と並走しています。

橋脚の下が渡船場。
新千歳橋は徒歩でも自転車でも渡ることができますが、かなり高さがあるため利便性が悪いということで、いまだに渡船が存続しているそうです。

渡船場からは遠くに港大橋も望むことができます。
先ほどの渡船もそうでしたが、大阪市内の渡船は澪標のマークからもわかるように大阪市が運営しています。
そして、運賃は何と無料。
経費は掛かっていますが、これは観光の船ではなく、市民の生活の足。
橋を渡るのにお金が要らないのと同じ理屈なんでしょうね。

千歳渡船場はそこそこ距離があり、船旅気分が若干増します。
振り返って、左手奥に見えるのは弁天町の駅前のビルですね。

千歳渡船場を渡るとそこは鶴町。
生活の足としての渡船だけに、行きつく先はどこもみな倉庫街、工場街、住宅街であり、特に観光スポットはありませんが、域外から来た人間が楽しめる場所として、今はIKEAがあります。
千歳渡船場から徒歩20分くらい。
徒歩なので本気の買い物はできませんが、2Fショールームを一回りし、1Fマーケットホールとスウェーデンフードマーケットで軽く買い物をし、ビストロでコーヒーとシナモンロールで一服させていただきました。
(シナモンロールはまずかった...ホットドックにすればよかった。)

IKEAから15分ほど歩き船町渡船場 へ。
IKEAに思いのほか長い時間いたため、日が少し傾いてきました。

ここは木津川運河を渡るごく短い渡船です。
幅が狭いため、かつては船を連ねてその上に板を渡して人や自転車が通行していたのだとか。
この渡船は利用者が少ないらしく、20分間隔での運航で、私が乗った便は他に乗客がおらず貸し切りでした。

そして、最後、船町渡船場から日立造船や中山製鋼所などの設備群を横目に見ながら、12分ほど歩くと、木津川渡船場 があります。
木津川渡船場は、大正区から住之江区へと木津川を渡す渡船で、新木津川大橋と並走しています。
看板の背後、三重に重なる高架は新木津川大橋の取り付け部の三重ループです。

新木津川大橋は大型船が往来するということで高さが50mもあるため、北側はスペースの関係から取り付け部がループになっているそうです。
で、この高さですから徒歩での横断が困難ということで、渡船があるそうです。
ただ、ここも利用者は少ないようで、30分間隔の運航でした。

もうすぐ日没。
赤く染まる空、夕日に輝く水面と渡船というのも風情があります。
木津川渡船場を渡り終えたら、夕焼けに染まる殺風景な道を12分ほど歩き、柴谷橋西詰バス停からバスに乗って帰路につきました。
以上、めちゃくちゃ楽しいというものでもありませんが、昭和の港町の暮らしを垣間見るといいますか、ノスタルジーを感じるちょっと変わった散策でした。
経済効率優先の世の中で、こういう”文化”が残されているというのはいいものですね。