西田幾多郎 無私の思想と日本人 (新潮新書)/新潮社- ¥842
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京都の哲学の道を歩くと、その名が西田幾太郎に因んでいるという豆知識が頭に浮かびますが、観光客で賑わい、思索にふけるような雰囲気とは程遠い今の哲学の道を歩いても、その西田幾太郎がどのようなことを考えた人なのかを知りたい、その哲学・思想といったものに触れてみたい、と思うに至る人はなかなかいないかもしれません。
かくいう私は長年、興味こそあれど、きっかけなく...という状態だったのですが、先日、哲学の道を歩いた後、本屋でたまたま今年の新書大賞でトップ10にランクインしていたこの本を見つけ、ようやく手に取ってみた次第です。
西田幾太郎の文章は非常に読みにくく難解だということですが、この本では、西田幾太郎の思想とその源泉について、平易な文章で丁寧に解説されており、何も知らない私にはちょうどよい内容でした。
特に西洋の哲学と日本発の哲学である西田哲学を対比させることによって、その思想の特性を浮かび上がらせようというアプローチが、難解な論理をイメージとして掴みやすくしているように思います。
そこから見えてくるのは、西田哲学が、日本的な精神、文化、宗教観といったところから生まれているものであるということであり、そういう意味では、西田幾太郎と現代に生きる我々との間に通底するものがあるということになるのですが、それでもその論理については、この本を読んだくらいで理解できるものではありません。
何か掴めそうな感覚はあるのだけれども、掴みきれない...
しかし、何かのきっかけでほつれた糸がほどけるように、すっと理解できるような気がして、妙にひきつけられます。