
ふと思い立ってお伊勢参りに行ってきました。
これまで内宮にしかお参りしたことがなかったのですが、本来、お伊勢参りは外宮からというのが古来からのならわしということなので、そのならわしにしたがってお参りしてみたかったんです。

外宮は豊受大神宮といい、食物・穀物を司る豊受大御神が祀られているそうです。
正宮が見上げるような高台に設けられている内宮とは違って平地にあるというのが意外でした。
この違いには何らかの謂れがあるのだろうとは思いますが、我々に衣食住の恵みをお与えくださる神ということで、我々に近いところに降りてこられているような、そんな印象を受けます。

外宮には宮域内に土宮、風宮、多賀宮の3つの別宮があり、多くの方はこれらの別宮も併せてお参りするようです。(上の写真は多賀宮)
といっても宮域内にあるのは別宮のほんの一部で、伊勢神宮というのは、正宮、別宮、摂社、末社、所管社、合わせて125の宮社の総称なんだそうですね。
半日や1日ですべてにお参りするなど到底不可能です。

外宮の正宮の前、注連縄で囲まれていた「三ツ石」と呼ばれる石。
案内図には「三ツ石」としか書かれていなかったので、お参りをしていた時は意味がわかりませんでしたが、式年遷宮の時に穢れを祓う「川原祓所」と呼ばれる特別な場所なんですね。
石の上に手をかざすと温かみを感じるとも言われ、最近はやりのパワースポットとしても注目されているようです。
ただ、私も目の前で見たんですが、注連縄の上から身を乗り出して手をかざしたり、注連縄の中に入ってしまうってのはちょっといただけませんね。

式年遷宮といえば、20年に一度、社殿を造り替える一大行事ですが、次回は平成25年ということで、すでに現在の正宮の左隣の新御敷地で工事が始まっていました。
かなり古びた風合いとなっている正宮が、2年後には真新しい正宮に生まれ変わるわけですね。
その時にはまた訪れてみたいと思います。

外宮の参拝を終えたら、バスで内宮へ移動。
外宮では人は非常に少なかったのですが、内宮はかなりの人で賑わっていました。
内宮は皇大神宮といい、天照大神を祀る日本で最も尊いとされるお宮です。
外宮、内宮というと対等のように思えますが、伊勢神宮は内宮を中心に形作られているんですね。
これまでの私もそうですが、それゆえに、内宮にだけ参拝される人がかなり多いということのようです。
内宮は五十鈴川に掛かる宇治橋を渡ってお参りします。
この宇治橋の両側に立つ鳥居。
これは式年遷宮の時に、旧御正殿の棟持柱を再利用して造るのだそうです。
そして、20年間鳥居として使われたあとは、内側の鳥居は鈴鹿峠の麓の「関の追分」、外側の鳥居は桑名の「七里の渡し」の鳥居としてさらに20年間使われるのだそうです。

そういえば数年前に七里の渡しの鳥居(上の写真)を見ましたが、改めて見ると確かに宇治橋の鳥居と同じ形、かつさらに古びた感じですね。

宇治橋を渡り、第一鳥居をくぐって右手にある五十鈴川御手洗場。
参拝する前に心身を清める場所で、昔は鯉がたくさんいたように記憶しているのですが、今回は一匹もいませんでした。
上流で工事をやっていたのですが、その影響なんでしょうか?

そしてさらに進むと一番奥に正宮があります。
見上げるような位置にあり、木々の間から陽光が注ぎ込む様が、崇高な印象を与えているような気がします。
式年遷宮で真新しく造り替えられた直後などはより輝きを増し、そういう印象が強まりそうです。
長い歴史を持つ伊勢神宮ですが、信仰そのものは歴史ではありません。
その時代その時代を生きる人々にとって生きたものでなければならないはずです。
式年遷宮は神々が常に生きた存在であり続けるために不可欠な仕組みなのかもしれませんね。
いや、それにしても暑い。
夏とはいえ、木々に囲まれ、もっと涼やかなのではないかと思っていたのですが、あまり関係ないですね。
ただ、心は少し清らかになったような気がしました。
時にはこういう時間と空間に身を置くことも必要ですね。