
「十二国記」、ようやく全部読み切りました。
このシリーズは作品ごとに主人公や時代が異なり、一本のストーリーが刊行順にしたがって展開していくわけではありませんが、素直に刊行順に読みました。
世界観を理解するためにも、作品をまたいで登場する人物について理解するためにも、そのほうがよいようです。
風の海 迷宮の岸―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥660
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戴国の麒麟、泰麒を主人公にした作品。
(十二国記の世界から見て)異世界である日本に流され、人間の子供として育った泰麒が、十二国記の世界に引き戻され、麒麟として成長し、やがて王を選ぶ時がやってくる...
麒麟に本来備わっている本性・能力がなかなか理解できず葛藤しながらも、必死に麒麟としての使命を果たそうとする幼き泰麒の姿がとても愛おしく切ないです。
東の海神 西の滄海―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥660
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延王尚隆、延麒六太を主人公にした作品。
十二国の中では奏に次ぐ五百年という長い治世を誇る雁。
登極して二十年、延麒六太を人質に取り延王に叛旗を翻した元州の騒乱を通して、延王がいかにして雁国に安寧をもたらしていったかを、六太が尚隆を王として迎えるまでの物語とともに描いています。
一見いい加減ででたらめ、しかし考えるべきことは考え、やるべきことはやる尚隆と、口は悪いが根は慈悲深い麒麟六太の名コンビの活躍ぶりが痛快です。
風の万里 黎明の空〈上〉―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥660
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風の万里 黎明の空〈下〉―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥660
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景王となった陽子を主人公とした作品。
王としての未熟さを恥じ、国情を学ぶために市井に降りることを決意する景王陽子。
陽子と同じく日本から異界へと流されてきた鈴。
非道の罪により父である峯王仲韃が誅されたため、公主の座を追われた祥瓊。
異なる過去を持つ同じ年頃の3人の少女はやがて慶の街で邂逅を遂げ、義民とともに圧政に苦しむ街を解放すべく戦いに挑みます。
勧善懲悪のメインストーリーとともに、3人がそれぞれの過去の不幸や悩みを乗り越えて人生を切り開いて行く姿そのものが、読む者に生きる力を与えてくれます。
図南の翼 十二国記 講談社文庫/小野 不由美- ¥730
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恭王となる少女珠晶を主人公にした作品。
裕福な商家で生まれ育った少女珠晶は、先王が亡くなって荒廃が進む恭国を憂い、自ら王になるために蓬山を目指します。
蓬山への道は数多の妖魔がうろつく人外の地、黄海を渡る苦難の道。
そんな命をも賭す危険な旅にわずか十二歳の少女が挑む...しかも王になるために...
一見、小生意気で身の程知らずな子供...
しかし、無謀とも思える行動に踏み切らせた彼女の考え方には、なるほど確かにこれは王たる器かもしれないとうならせるものがあります。
黄昏の岸 暁の天―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥750
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戴国の将軍、李斉を中心に多くの王や麒麟が登場する作品。
王と麒麟が姿を消し、偽王が立つという危機に見舞われた戴国。
その戴国を命がけで脱出した将軍李斉は景王に助けを求めます。
しかし、天の条理によって成り立つ十二国記の世界では、他国を救おうにも天の条理が妨げになります。
天の条理とは何なのか、それを定める天とは何なのか...
戴国の危機を救うという目的を通して問われるその意味は、現実世界にも通じるものがあり非常に深いです。
華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記 (講談社文庫)/小野 不由美- ¥680
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これまでの物語を補完する短編集です。
その中で、「華胥」はこれまでに登場しない才国の話です。
民の先頭に立って前王の失政を糾弾し、前王が斃れた後、周囲の期待通りに登極した采王砥尚は、自らの描く理想の国を目指しますが、正道を歩んでいるのに一向に理想に近づかない、それどころか混乱を深めるばかりの政に悩み、やがて「責難は成事にあらず」という言葉を残し禅譲します。
人を責めることはたやすいが、それは何かを成すことではない...
正しい道を示し、理想の国を築き上げることがいかに難しいか...どこぞのリアル国家の政局に当てはめて考えてしまいます。
ここまですべて読んでみて、ファンタジーとしてもすばらしい作品でしたが、 登場人物を通して語られる人の生き方、国のあり方などが、理想論だけでもなく、きれい事だけでもなく、建前でもなく、非常にインパクトがありました。
この十二国記シリーズ、文庫では久しく続編が発表されていませんが、まだ完結していない話もあるので、是非とも続きを出してもらいたいものです。