全12回程度で考えていく連載、
「AIが全部やってくれたら、人間は何をする?」
今回は第3回です。
前回は、
「AIに仕事を奪われたら、誰が商品を買うの?」
という疑問について考えてみました。
企業がAIやロボットを導入すれば、人件費を減らし、生産性を上げられる。
企業にとっては大きなメリットです。
ところが、それを社会全体で進めていったら、
人間の仕事が減り、給料をもらう人も減っていく。
すると、
企業は商品を作れるのに、それを買う人間にはお金がない。
なんとも不思議な状態になります。
だったら、
「働いていない人にも国がお金を配ればいいじゃないか」
という話になります。
いわゆるベーシックインカムのような考え方です。
ところが前回の最後で、私はまた一つ疑問にぶつかりました。
そのお金、いったいどこから出すの?
今回はここから考えてみます。
今、私たちはいろいろな形で税金を払っている
普段生活していると、税金って本当にいろいろあります。
働いて給料をもらえば所得税。
住んでいれば住民税。
会社員なら社会保険料も給料から引かれます。
買い物をすれば消費税。
会社が利益を上げれば法人税。
もちろん細かく見れば、もっとたくさんあります。
今の社会では、
人間が働く
↓
給料をもらう
↓
税金や社会保険料を払う
↓
残ったお金で買い物をする
↓
そこでも税金を払う
という仕組みが大きな柱になっています。
つまり現在の税制や社会保障制度のかなりの部分は、
「人間が働いて、お金を稼ぐ」
ということを前提に作られています。
では、その前提が崩れたらどうなるのでしょう。
AIが働いて、人間が働かない世界
かなり極端な未来を想像してみます。
会社の事務処理はAI。
問い合わせ対応もAI。
工場ではロボットが製造。
倉庫もロボット。
配送は自動運転。
農業もAIと農業ロボット。
建設現場にもロボット。
今まで100人必要だった会社が、10人、5人、
場合によってはほとんど人間を必要としなくなる。
すると企業から支払われる給与の総額は当然減ります。
給与が減れば、そこから入っていた所得税なども減る。
人間に所得がなければ、買い物をする力も弱くなる。
消費が減れば、消費に伴う税収にも影響するでしょう。
社会保険料についても、
「そもそも給料をもらっている人が少ない」
となったら、今と同じ仕組みを維持できるのでしょうか。
そこで「ベーシックインカム」という話になる
AI時代の話になると、よく出てくるのがベーシックインカムです。
ものすごく簡単に言えば、
仕事をしているかどうかに関係なく、国民に一定額のお金を配る
という考え方です。
仮に毎月生活できるだけのお金がもらえるなら、
AIによって仕事がなくなっても、人間は生活できます。
そして、そのお金を使って食べ物を買ったり、服を買ったり、旅行したりする。
企業の商品も売れる。
なるほど。
一見すると、
AIによって仕事がなくなる問題を解決できそう
に見えます。
でも私は、ここでどうしても気になります。
だから、そのお金はどこから持ってくるの?
ということです。
「税金で配る」だけでは話が終わらない
例えば国民全員に毎月一定額を配るとします。
当然、とてつもない金額が必要になります。
「税金を財源にすればいい」
と言っても、その税金を払う人間が大幅に減っている世界を想定しているわけです。
これでは、
人間の仕事がなくなる
↓
人間の収入がなくなる
↓
国が生活費を配る
↓
そのために人間から税金を取る
では、何だか話が一周してしまいます。
だったら、税金を取る相手そのものを変える必要が出てくるのかもしれません。
人間ではなく「AIが生み出した価値」に税金をかける?
ここで発想を変えてみます。
仮に100人の会社があったとします。
一人あたり年間500万円の人件費がかかっていたとすれば、単純計算で年間5億円です。
ところがAIとロボットによって、その仕事の大部分を自動化できた。
会社は以前と同じ、あるいはそれ以上の商品やサービスを作れる。
つまり、
社会から5億円分の生産能力が消えたわけではありません。
むしろ生産能力は上がっているかもしれない。
消えたのは、
そのお金を「給料」という形で人間に配る仕組み
なんですよね。
だったら将来は、
人間の給料に税金をかけるのではなく、
AIやロボットによって生まれた企業利益や付加価値などから、
社会へお金を戻す仕組みに変わっていく可能性もあります。
いわゆる「ロボット税」のような考え方も、この延長線上にあります。
AIやロボットそのものに税金を払わせるというより、
人間の労働をAIが代替することで生まれた利益を、どう社会全体へ還元するのか
という問題です。
企業だけがAIの利益を持ったらどうなる?
ここはかなり重要だと思います。
AIが100人分の仕事をして、そこで生まれた利益を企業の所有者だけが受け取る。
一方、仕事を失った100人には所得がない。
そんな社会になったら、ものすごい格差になるでしょう。
逆に、
AIによって生まれた莫大な生産力の一部を社会へ戻して、
人間にも分配する仕組みができれば、
「働かなければ食べられない社会」から、「働かなくても生きられる社会」
へ変わる可能性もあります。
これは考えてみれば、とんでもないことです。
今まで人間は、
生きるために働いてきました。
それが初めて、
生きるためには働かなくてもいい
という世界になる。
これは人類にとって不幸なのでしょうか。
それとも、人類が何千年も目指してきた究極の豊かさなのでしょうか。
でも、ここでまた変なことに気づく
AIとロボットが働く。
企業は商品を大量に作れる。
その利益の一部を税金などで国が集める。
国が人間にお金を配る。
人間はそのお金を持ってスーパーへ行く。
そしてAIとロボットが作った商品を買う。
……。
ここまで考えたところで、私はまた、
「あれ?」
と思ってしまいました。
ちょっと待ってください。
AIが農作物を育てる。
ロボットが収穫する。
自動運転トラックがスーパーへ運ぶ。
ロボットが棚に並べる。
人間がスーパーへ行く。
その人間に、国が一度お金を配る。
そして人間は、そのお金をスーパーへ渡して食料を持って帰る。
だったら……
最初から食料を持って帰ればいいんじゃないの?(笑)
服だって同じです。
AIがデザインして、ロボットが作って、自動で店まで運ぶ。
国からもらったお金を店に渡して服を買う。
だったら、
その「お金」というワンクッション、本当に必要なのでしょうか?
お金は何のためにある?
ここまで来ると、税金の話だったはずなのに、
今度は、「そもそも、お金って何?」
という話になってきます。
今の私たちは、
仕事をする
↓
お金をもらう
↓
そのお金と商品を交換する
という仕組みを当たり前だと思っています。
でも、AIとロボットが人間の代わりにほとんどのものを
作れるようになったら?
食料も大量にある。
服も大量にある。
生活用品も大量にある。
輸送も自動化されている。
そして人間が働かなくても、それらを作り続けられる。
そんな世界になったとき、
お金は今と同じ価値を持ち続けるのでしょうか?
もしかするとAIが本当に変えてしまうのは、
「仕事」だけではないのかもしれません。
私たちが何千年も当たり前のように使ってきた、
「お金」という仕組みそのもの
なのかもしれません。
次回、第4回は、
「AIが全部作るなら、お金そのものが要らなくない?」
について考えてみたいと思います。
スーパーへ行って、
欲しい食料を必要なだけ持って帰る。
服も必要なら持って帰る。
レジもない。
財布もない。
給料もない。
そんな社会は、本当に成立するのでしょうか。
そして、もしお金が必要なくなったら……
人間は一体、何のために働くのでしょう。
【第4回へ続く】
