前回から始めた全12回程度の連載、
「AIが全部やってくれたら、人間は何をする?」
今回は第2回です。
第1回では、
「AIが全部働いてくれるようになったら、人間は何をして生きるんだろう?」
というところから考えてみました。
人類は長い年月をかけて、少しでも楽に暮らせるように技術を発展させてきました。
歩くのが大変だから自転車を作り、自動車を作り、電車を作った。
洗濯機、冷蔵庫、パソコン、インターネット、スマートフォン……。
そして今、AIが急速に進歩しています。
今まで機械が主に人間の「作業」を助けてきたのに対して、
AIは「考えること」まで助け始めています。
では、この先さらにAIとロボットが進歩して、
人間の仕事の多くをできるようになったら?
前回の最後に、私は一つの疑問にぶつかりました。
人間が働かなくなったら、誰が商品を買うんだ?
今回はここから考えてみます。
企業からすれば、AIはものすごく魅力的
まず企業側から考えてみます。
仮に今まで100人でやっていた仕事を、
AIとロボットを使うことで10人でできるようになったとします。
企業にとっては大きなメリットです。
90人分の人件費が減る。
AIなら基本的には休憩もいらない。
有給休暇もない。
深夜でも働ける。
人間のように「今日は体調が悪い」ということもない。
もちろんAIやロボットを導入・維持する費用はかかります。
それでも、人を雇うより安く、速く、正確に仕事ができるようになれば、
企業がAIを使わない理由はだんだん少なくなっていくでしょう。
これは企業が悪いという話ではありません。
同じ仕事ができるなら、より効率の良い方法を選ぶ。
企業としては当然の判断です。
そしてAIを使った企業の利益は増えるかもしれません。
ここまでは非常に分かりやすい話です。
でも、その先を考えると急におかしくなります。
90人の給料はどこへ行く?
先ほどの例では、100人いた社員が10人になりました。
企業としては90人分の人件費を削減できました。
では、その90人はどうなるのでしょう。
別の会社へ就職すればいい。
今までなら、それで済んだのかもしれません。
実際、人類はこれまで何度も技術革新を経験しています。
機械によってなくなった仕事があっても、その一方で新しい仕事が生まれてきました。
自動車が登場すれば、自動車を作る仕事が生まれる。
コンピューターが登場すれば、プログラマーという仕事が増える。
インターネットが普及すれば、それまで存在しなかった仕事が大量に生まれる。
だから、
「AIによって仕事がなくなっても、また新しい仕事が生まれるよ」
という考え方もあります。
私も、それなら問題ないと思います。
ところがAIには、それまでの技術とは少し違うところがあります。
新しく生まれた仕事までAIがやったら?
AIによって事務の仕事が減った。
だったらAIを管理する仕事をしよう。
でも、そのAIの管理までAIができるようになったら?
プログラマーになろう。
でも、AIが人間より速くプログラムを書くようになったら?
デザイナーになろう。
でも、AIがデザインする。
音楽を作ろう。
AIが作る。
動画を作ろう。
AIが作る。
文章を書こう。
AIが書く。
ロボットを修理する仕事なら残る。
でも、そのうちロボットを修理するロボットが登場するかもしれない。
もちろん、本当にそうなるかは分かりません。
でもAIという技術の少し特殊なところは、
「AIによって新しく生まれた仕事そのものを、さらにAIができる可能性がある」
ということです。
これまでの機械は、人間の能力の一部分を代替するものでした。
ところがAIとロボットが組み合わさって進歩していけば、
人間の頭脳労働と肉体労働の両方に入ってくる可能性があります。
そうなると、
「別の仕事を探せばいい」
だけでは済まなくなるかもしれません。
そして消費者がいなくなる
ここで最初の疑問に戻ります。
企業がAIを導入する。
人件費が減る。
企業の利益が増える。
素晴らしい。
ところが、それをあらゆる企業がやったらどうでしょう。
人間の仕事が減る。
給料をもらう人が減る。
すると当然、
お金を使える人も減ります。
自動車メーカーが、ほぼ無人の工場で素晴らしい自動車を大量に作れるようになった。
でも、その自動車を買う給料をもらっている人がいない。
AIが服をデザインし、ロボットが大量に服を作った。
でも買う人にお金がない。
AIとロボットが素晴らしい家を短期間で建てられるようになった。
でも人間には家を買う収入がない。
これって、かなり変な世界ですよね。
商品は山ほどあるのに、買える人がいない。
企業は誰のために商品を作るのか?
企業というのは、基本的には商品やサービスを
誰かに買ってもらうことで成り立っています。
だから人件費を削減すること自体は合理的でも、
社会全体でそれを究極まで進めてしまうと、
企業自身が、自分の商品を買ってくれる消費者の収入をなくしてしまう
という矛盾が出てきます。
例えば日本中の会社が、
「社員を全部AIにしました!」
となったとします。
会社はものすごく効率的になります。
でも翌月から、元社員たちは給料をもらえません。
さて、その会社の商品を誰が買うのでしょう。
ここで私は、
「AIによって仕事がなくなる」ことより、
こっちの方が大きな問題なんじゃないか?
と思ったんです。
そもそも「働く」と「消費する」はセットだった
今の社会では、
人間が働く
↓
企業が給料を払う
↓
人間がそのお金で商品やサービスを買う
↓
企業に売上が入る
↓
企業がまた給料を払う
という大きな循環があります。
ものすごく単純化していますが、私たちはこの循環の中で生活しています。
ところがAIによって、
「人間が働く」
という最初の部分が大幅に小さくなったらどうなるのでしょう。
企業は商品を作れる。
それどころか、今よりはるかに大量に、安く作れるかもしれない。
でも人間には、それを買うためのお金がない。
つまり、
モノを作る能力は上がっているのに、人間は貧しくなる
という、なんとも不思議なことが起きる可能性があります。
食べ物はたくさんある。
服もたくさんある。
家だってAIとロボットが建てられる。
でも、
「あなたは働いていないので、お金がありません。だから買えません」
となる。
なんだかおかしな話です。
だったら、お金を配ればいい?
ここまで考えると、当然こんな考えが出てきます。
「だったら、働いていない人にもお金を配ればいいじゃないか」
いわゆるベーシックインカムのような考え方です。
毎月、生活できるだけのお金を国が国民に配る。
そうすれば仕事がなくても生活できる。
人間はそのお金で商品を買う。
企業にも売上が入る。
なるほど。
これなら、
AIが働く
↓
人間はお金をもらう
↓
人間が消費する
↓
企業が儲かる
という循環を作れるかもしれません。
私も最初は、
「じゃあ、それでいいじゃない」
と思いました。
ところが、ここでまた一つ疑問が出てきます。
そのお金、誰が出すの?
国がお金を配る。
でも、国のお金はどこから来るのでしょう。
今なら、働いている人が所得税や住民税を払います。
企業も税金を払います。
働く人と会社は社会保険料も負担します。
そして私たちは、給料でもらったお金を使って買い物をして、消費税を払います。
つまり今の社会は、
「人間が働いて給料をもらう」
ということを前提に、税金の仕組みもかなり組み立てられています。
ではAIがほとんど働いて、
人間の多くが給料をもらわなくなったら?
所得税は?
住民税は?
社会保険料は?
そして人間に消費するお金がなければ、消費税は?
国の収入そのものが大きく変わってしまいます。
そんな状態で、
「仕事がなくなった皆さんに毎月お金を配ります」
と言っても、
「その財源、どこにあるの?」
という話になります。
AIによって仕事がなくなる。
給料がなくなる。
商品を買えなくなる。
だから国がお金を配る。
でも働く人がいないから、今までのようには税金が入らない。
……また話がおかしくなってきました(笑)。
ということで次回は、
「働く人がいなくなったら、税金は誰が払う?」
について考えてみたいと思います。
そしてこの税金の話を考えていくと、
その先にはさらに妙な疑問が出てきます。
AIが食料も服も家も作ってくれるなら、そもそも『お金』って必要なの?
どうやら、この話はまだまだ終わりそうにありません(笑)。
【第3回へ続く】
