最近、テレビやネットを見ていると、

「住宅ローン金利が上昇!」

「変動金利はこれから危ない!」

「金利が1%上がると総返済額がこんなに増える!」

といった話をよく目にします。

 

もちろん、金利上昇を気にすること自体は大切です。

でも私は不動産の仕事をしながらお客様と住宅ローンの話をしていると、時々こう思うんです。

 

ちょっと金利上昇の話に踊らされすぎていないだろうか?

 

そして、そもそも住宅ローンって、

「総返済額を一番少なくすること」が本当に正解なのでしょうか?

 

今回はそんなことを考えてみます。


まず35年ローンと50年ローンを比べてみる

例えば4,230万円を借りるとします。

ボーナス払いなし、元利均等返済。

今回の試算条件を、

  • 35年:年1.08%

  • 50年:年1.18%

として計算すると、

 

返済期間 月々の返済額 総返済額 支払利息
35年 約12万990円      約5,081万6,000円   約851万6,000円
50年 約9万3,364円    約5,601万9,000円   約1,371万9,000円

 

50年ローンにすると、

毎月約2万7,600円安くなる。

 

その代わり、最後まで返済すれば、

総返済額は約520万円増える。

 

こういう表を見せられると、

「だったら35年の方が得じゃないか」

と思いますよね。

 

確かに、80歳まで予定通り全部返すという前提なら、その通りです。

でも私は、ここで一度考え方を変えます。


住宅ローンは「借金」である前に「住居費」でもある

生きている以上、住む場所は必要です。

住宅を買わなければローンはありません。

でもその代わり、賃貸なら毎月家賃を払います。

しかも最近は賃料も上昇傾向です。

 

つまり、

住宅を買わなければ住居費がゼロになるわけではありません。

そう考えると住宅ローンも、「4,230万円もの借金を背負う!」

という見方だけではなく、

「毎月いくらの住居費なら無理なく生活できるのか」

という見方が必要だと思っています。

35年なら約12万1,000円。

50年なら約9万3,000円。

毎月2万7,000円以上違えば、家計への負担感はかなり違います。

 

私は住宅ローンで一番大切なのは、

とにかく今、無理なく払えることだと思っています。

 

将来の利息を減らすために今の生活が苦しくなるくらいなら、

その買い方は少し考えた方がいい。

50年にしても支払いが苦しいのであれば、

そもそもその住宅は今の自分には高すぎるのかもしれません。


では変動金利と固定金利はどう考える?

ここも最近よく話題になります。

 

2026年9月現在、三菱UFJ銀行の変動金利は、

年1.195%

店頭表示金利3.375%から、

完済まで年▲2.18%

という条件になっています。

一方、フラット35の21年以上35年以下の最頻金利は、

年3.46%

です。

もちろん固定金利には、

「最後まで金利が変わらない安心」

があります。

これは大きなメリットです。

でも単純に現在の数字だけを見ると、

1.195%と3.46%。

かなり差があります。


変動金利が3.46%になるには?

三菱UFJの全期間優遇▲2.18%が契約上維持されるとして、

適用金利が現在のフラット35と同じ3.46%になるには、

 

基準金利5.64% − 優遇2.18% = 適用金利3.46%

となります。

 

つまり現在3.375%の基準金利が、

5.64%まで上がって初めて、現在のフラット35と同じ水準になる。

 

もちろん将来どうなるかは誰にも分かりません。

 

でも私は、

変動金利の基準金利が5%台後半まで上昇するというのは、

かなりハードルが高いのではないかと考えています。

 

三菱UFJの場合、変動金利の基準金利は短期プライムレートをもとに決めています。

短期金利がそこまで上がるということは、日本経済全体にも相当大きな影響があります。

そのような金利水準まで上げられる経済状況なのであれば、通常は賃金や名目所得も

今より上昇している可能性があります。

 

もちろん、

「金利が上がれば必ず給料も上がる」

と言っているわけではありません。

 

景気が悪いのに物価だけ上がるケースもあります。

ただ、

住宅ローン金利だけ将来の高金利を想定して、給料だけ現在のままで35年、50年計算する

というのも少し不自然ではないでしょうか。


そして「全期間優遇」そのものにも価値がある

私はここも大きいと思っています。

 

昔の住宅ローンには、

「当初3年間大幅優遇」

「当初5年間優遇」

という商品がよくありました。

 

現在は三菱UFJのように、

完済まで▲2.18%という商品があります。

 

将来も新規のお客様に同じ大きな全期間優遇が提供され続けるとは限りません。

金利環境が変われば、新規向けの優遇幅が縮小したり、

商品設計そのものが変わったりする可能性もあります。

 

だから私は、

現在の1.195%という低金利だけを見るのではなく、

「全期間▲2.18%という条件を今確保できる」ことにも価値がある

と思っています。


テレビの「総返済額○○万円増加!」に感じる違和感

テレビではよく、

「金利がこれだけ上がると、35年間の総返済額が○百万円も増えます!」

と説明しています。

計算自体は間違っていません。

 

ただし、その計算には大きな前提があります。

借りた本人が最後まで生きて、予定通り完済すること。

住宅ローンには普通の借金とは大きく違うものがあります。

そう。

団体信用生命保険です。


団信こそ住宅ローンの大きな特徴

一般的な団信では、住宅ローン返済中に契約者が死亡したり所定の高度障害状態になった場合、

その時点の住宅ローン残高が保険によって完済されます。

 

三菱UFJでも、死亡または所定の高度障害状態になった場合、

住宅ローン残高が0円になるとしています。

※がんになっただけで残高が0円になるかなど、

保障範囲は加入している団信・特約によって異なります。

 

これって、ものすごいことだと思うんです。

例えば30歳で50年ローンを組んだとします。

完済は80歳。

 

でも仮に55歳で万一のことがあれば、その時点の残債は団信で完済されます。

残り25年間を本人が返すわけではありません。

 

だから私はお客様に、少し言い方は悪いですが、

「最後まで絶対に自分で返さなければ、なんて考えなくてもいいんですよ」

とお話しすることがあります。

 

すると意外と、「そうか……」という顔をされます。

 

50年という数字を見ると、「80歳までローンを払うの!?」と考えてしまう。

でも実際には、

80歳まで元気に生きていれば80歳まで払う。

 

途中で団信の支払事由に該当する万一があれば、

そこで住宅ローンは終わる。

これが住宅ローンなのです。


では繰上返済は本当に必要なのか?

ここで私は、よくある住宅ローンのアドバイスにも少し疑問を持っています。

「住宅ローン控除が終了したら、貯まったお金で繰上返済しましょう」

よく聞きますよね。

もちろん利息だけを計算すれば、繰上返済した方が利息は減ります。

でも団信まで考えると、見方が変わります。

 

例えば住宅ローンが3,000万円残っていて、手元に2,000万円あるとします。

そこで2,000万円を繰上返済したら、住宅ローン残高は1,000万円になります。

 

ところが、その翌年に万一のことが起きたらどうでしょう。

 

団信で消えるのは、残っている1,000万円です。

先に繰上返済した2,000万円は当然戻ってきません。

 

逆に繰上返済せずに持っていれば、

住宅ローン3,000万円は団信で完済。

手元の2,000万円は家族に残ります。

 

もちろん実際にはその間の利息や相続なども考えなければなりません。

でも少なくとも、

「借金は早く返した方が絶対に得」

とは言い切れないと思うんです。

 

住宅ローンは、

低金利の借金であると同時に、残高に連動した生命保険が付いている特殊な借金

だからです。


だから50年ローンを「総利息」だけで判断しない

今回の例では、35年から50年にすると支払利息は約520万円増えます。

それだけ聞けば、

「50年なんて損だ」

となります。

 

でも私は、その520万円を本当に全部払うのかは分からない

と思っています。

 

30歳から50年ローンを組んで80歳まで元気に生きて、最後の1円まで返済した。

 

その時は、

「いやぁ、長生きしたね。全部払っちゃったよ!」

でいいのではないでしょうか。

 

私は勝手にこれを、

「長寿返済」

と呼びたいと思います(笑)。

 

80歳まで生きて完済してしまったら、

団信との勝負には負けました。完敗です!

 

でも50年間、毎月の返済負担を低く抑えられた。

その分、貯蓄もできた。

家族との旅行にも行けた。

生活にも少し余裕があった。

そして何より80歳まで生きられた。

 

だったら、「まあ、長寿返済だったけど、それはそれでいいか」

くらいでいいと思うんです。

 

ある意味、

長生きした人だけが最後まで払う利息

とも言えるのかもしれません。


賃貸ならローンはない。でも家賃は続く

もちろん、

「そんなに長いローンなら賃貸でいい」

という考え方もあります。

 

それも一つの選択です。

 

ただ、生きている以上、住む場所は必要です。

賃貸なら住宅ローンはありませんが、家賃は払い続けます。

 

しかも将来、家賃が上がらない保証もありません。

そして賃貸の場合、契約者に万一のことがあっても、

家族が住み続けるなら基本的にはその後も家賃が必要です。

 

一方、団信付きの住宅ローンなら、支払事由に該当すれば

ローン残高がなくなり、住宅を家族に残せる可能性があります。

 

だから、

「家を買う=借金」
「賃貸=借金がないから安全」

という単純な話でもありません。

 

どちらにしても、

住居費は生きている限り必要なのです。


私が住宅ローンで一番大事だと思うこと

変動金利か固定金利か。

35年か50年か。

繰上返済をするのかしないのか。

いろいろな考え方があります。

 

正解は人それぞれです。

 

固定金利で将来の返済額を確定させたい人もいるでしょう。

35年で早く終わらせたい人もいるでしょう。

それはそれでいいと思います。

ただ、私が住宅ローンを考えるときに一番大切だと思っているのは、

「今、無理なく払えるか」

これです。

将来の利息を少しでも減らすために、今の生活を苦しくする必要があるでしょうか。

 

住宅ローンを早く返すために、

旅行にも行けない。

貯蓄もできない。

急な出費が怖い。

毎月給料日を待ちながら住宅ローンを払う。

 

そんな状態になるくらいなら、私はその住宅は買わない方がいいと思います。

 

住宅ローンは、早く返す競争ではありません。

35年でも50年でもいい。

変動でも固定でもいい。

 

大切なのは、

自分たちの生活を壊さない返済額にすること。

 

そして住宅ローンには団信という大きな保障もある。

だから私は、「最後まで返さなければ!」と必要以上に構えなくてもいい

と思っています。

 

無理なく払いながら生活する。

万一の時には団信が家族を守ってくれる。

そして最後まで元気に払ってしまったら、

長寿返済で完敗!

でも、それはきっと悪い負け方ではありません。

むしろ、

「80歳まで元気で良かったね」でいいのではないでしょうか。


※この記事は住宅ローンについての個人的な考え方をまとめたものです。実際の借入れでは、年齢・収入・家族構成・資産状況・金利タイプ・団信の保障内容などによって適した選択は異なります。また、金利は2026年9月時点の情報を参考にしています。