プロ野球やメジャーリーグを見ていて、以前から何となく気になっていたことがあります。

「野球って、ボール替えすぎじゃない?」

 

ホームランやファウルボールがスタンドに入ってしまえば分かります。

3アウトになったとき、外野手がファンサービスでスタンドに投げ込むこともあります。

これはもう戻ってこないので、新しいボールを出すしかありません。

 

でも、そうじゃないときも頻繁に交換しています。

キャッチャーが捕り損ねてワンバウンドした。

ピッチャーがボールを眺めて、ちょっと気に入らなそうな顔をして審判に渡した。

バットに当たったボールを審判が確認して、そのまま新しいボールに交換。

 

テレビを見ていると、

「いやいや、それまだ全然使えるでしょ!」

と思ってしまいます。

 

そこで、ふと思いました。

プロ野球って、1試合で一体何個のボールを使っているんだろう?

 

そして、

交換された大量のボールは、その後どうなっているんだろう?

気になったので調べてみました。

1試合で100球以上!?

調べてみると、プロ野球では1試合で120球程度が使われるという目安がよく紹介されています。

10ダースです。

もちろん試合展開によって変わります。

 

ファウルの多い試合もあれば、ホームランが何本も出る試合もあります。

延長戦になれば、さらに必要になります。

 

それでも「1試合100球を超える」というのは、なかなかの数です。

 

NPBでは現在、12球団がそれぞれ年間143試合を戦います。

ということは、レギュラーシーズン全体では、

 

143試合 × 12球団 ÷ 2 = 858試合

あります。

仮に1試合120球使うとすると、

858試合 × 120球 = 102,960球

 

なんと一軍のレギュラーシーズンだけで、単純計算では年間10万球以上になります。

もちろんこれは「1試合120球」と仮定した概算ですが、とんでもない数です。

しかも公式球って結構高い

さらに驚いたのがボールの価格です。

ミズノの公式オンラインショップでは、NPB12球団統一試合球の

オーセンティックボールが、現在**1球3,100円(税込)**で販売されています。

もちろん、これは一般販売価格なので、実際に球団が仕入れる価格とは別物でしょう。

 

それでも参考として3,100円で計算すると、

120球 × 3,100円 = 37万2,000円

1試合だけで37万円相当。

年間102,960球なら、

3,100円 × 102,960球 = 約3億1,900万円!

 

「野球のボール代だけで!?」と思ってしまいます。

※あくまで一般販売価格を使った単純計算です。

どうしてちょっと汚れただけで交換するの?

ここで最初の疑問に戻ります。

ファウルやホームランなら仕方ありません。

でも、地面にワンバウンドしたくらいなら、まだ使えそうです。

 

ところがプロ野球の場合、

「まだ投げられるか」ではなく、「公式戦で同じ条件を維持できるか」

が重要なんですね。

 

硬式球の表面に傷や汚れが付くと、空気抵抗や回転への影響が出る可能性があります。

特にピッチャーにとっては、ボール表面の状態は非常に重要です。

 

実際、野球では昔からボールの表面を意図的に傷つけ、通常とは違う

変化をさせる不正投球が問題になってきました。

だったら、

「この程度の傷ならOK」

「これはダメ」

と細かく判断するより、

少しでも怪しかったら交換する。

 

その方が公平です。

 

だから「まだ使えるじゃん!」というボールでも、

「ボールとしての寿命が終わった」のではなく、「一軍公式戦の試合球としての役割が終わった」

ということなんです。

 

この違いが大事でした。

もう一つの理由は「打者からちゃんと見えること」

そしてボール交換には、安全面での非常に重要な意味もあります。

今から100年以上前の野球では、現在のように次々と新しいボールに交換していませんでした。

 

一つのボールを長く使うため、試合が進むにつれて土や草などでどんどん汚れていきます。

さらに当時は、投手が唾液などを付けて変化させる「スピットボール」も珍しくありませんでした。

 

当然、白かったボールは次第に黒ずんできます。

 

そんな時代の1920年8月16日。

メジャーリーグのクリーブランド・インディアンスに所属していた

レイ・チャップマンという選手が、ニューヨーク・ヤンキースの

カール・メイズ投手の投球を頭部に受けました。

 

チャップマンは翌日、亡くなりました。

 

現在までMLBの試合中のプレーが直接原因となって死亡した唯一の選手とされています。

事故当時は夕方で視界が悪く、さらに使い込まれて汚れたボールだったため、

チャップマンが投球を十分に認識できなかった可能性も指摘されています。

 

この事故だけが唯一の理由という単純な話ではありませんが、1920年前後を境に、

メジャーリーグでは汚れたり傷ついたりしたボールを積極的に交換する方向へと変わっていきました。

 

今では当たり前の、「汚れたら新しいボールに交換する」という光景。

 

そこには選手の安全を守るために積み重ねられてきた100年以上の歴史もあったのです。

ところが「新品そのまま」でもダメらしい

ここまで調べて、

「だったら真っ白な新品をどんどん使えばいいじゃん」

と思ったのですが、話はそんなに単純ではありません。

 

新品の硬式球は表面が滑りやすく、そのままでは投手が握りにくいのです。

つまり、汚れすぎたボールはダメ。ツルツルの新品もダメ。

なんとも面倒くさい(笑)。

 

そのため、試合で使用する前にボールの表面を適度な状態に整える作業が行われます。

メジャーリーグでは有名な「Baseball Rubbing Mud」と呼ばれる特殊な泥が長年使われています。

 

箱から出したボールをそのまま審判のポケットに入れているわけではなかったんですね。

あの何気なく投手へ渡される一球にも、事前準備がされているわけです。

じゃあ交換されたボールは全部捨てるの?

そして私が一番気になったのがこれでした。

仮に年間10万球以上使うとして、

ちょっと土が付いただけのボールを全部捨てていたら、あまりにももったいない。

 

でも、そこは安心しました。

 

一軍公式戦では使えなくなっても、ボールそのものが使えなくなったわけではありません。

状態の良いものは練習などで再利用されます。

 

さらに驚いたことに、プロ野球で使われたボールは高校野球にも大量に寄贈されていました。

日本高等学校野球連盟によると、この取り組みは2006年から始まっています。

 

プロ野球の公式戦やキャンプなどで使用済みになったボールの一部を、

全国の高校野球部へ配布しています。

 

そして2026年4月までの20年間で高校野球へ渡ったボールは、

112万6,860球。

112万球です!

 

これは想像以上でした。

 

しかも寄贈されるのは、革が破れたり縫い糸が切れたりしているようなボールではありません。

土が付いていたり、球団のロゴが擦れていたりする程度で、高校生が練習で使うには問題のないものです。

 

一軍公式戦では「もう使えません」と判断されたボールが、

今度は高校球児のノックやバッティング練習に使われている。

 

なんだか良い話です。

一球のボールにも「第二の人生」がある

最初は本当に単純な疑問でした。

テレビでプロ野球を見ながら、

「またボール替えたよ。もったいなくない?」

と思っただけです。

 

でも調べてみると、

新品のボール
 ↓
プロ野球の公式戦
 ↓
ファウルやホームランならファンの手元へ
 ↓
公式戦では使えなくても練習球として再利用
 ↓
さらに一部は高校野球などへ寄贈

 

というように、

一球のボールにもいろいろな行き先がありました。

 

もちろん、本当に傷んでしまえば最後には役目を終えます。

でも、一度ワンバウンドしたら即ゴミ箱行きというわけではありませんでした。

何気ない「ボール交換」に100年以上の歴史があった

こうして調べてみると、テレビ中継で何気なく見ていたボール交換が、少し違って見えてきます。

キャッチャーが審判にボールを渡す。

審判が新しいボールを取り出す。

ピッチャーが受け取って投球を始める。

ほんの数秒の出来事です。

 

でもそこには、

試合を公平にすること。
投手が安全にボールを握れること。
打者がボールをしっかり視認できること。
そして選手の命を守ること。

 

100年以上の野球の歴史の中で積み重ねられてきた理由がありました。

そして役目を終えたボールも、練習球になったり、高校球児の手に渡ったりして、

また別の場所で野球を支えています。

 

最初は、

「プロ野球ってボール替えすぎじゃない?」だったのに、

最後には、

「ちゃんと理由があったんだな」になりました。

 

普段当たり前のように見ている光景でも、

「なんで?」と思って調べてみると、意外な歴史が隠れているものですね。

 

次に野球を見るとき、審判が何気なく新しいボールを投手に渡したら、

「そのボールも、いつか高校球児が使うのかな?」

なんて考えてしまいそうです。