先日、ある物件の紹介動画を見る機会がありました。
聞けば、プロに依頼して撮影・制作してもらった動画とのこと。
実際に現地でカメラを回し、外観から室内へ入り、各部屋や水回りなどを
撮影していく、いわゆる物件紹介動画です。
ところが、せっかくプロに撮影してもらった動画なのに、
少し気になるところがありました。
室内がかなり暗い。
また、カットが切り替わるたびに明るさが変わる場面もあり、
「せっかくの物件なのにもったいないな」と感じました。
そこでChatGPTに、
「この動画、もう少し明るくできない?」
と相談したのが今回の話の始まりです。
AIと一緒に物件動画を修正してみた
実際に動画を読み込ませ、暗い部分を確認しながら調整していきました。
「ここから暗くなる」
「このカットはもう少し明るく」
「ここは急に明るさが落ちている」
と細かく確認しながら何度か修正。
さらに、
物件の特徴を伝えるキャプション(テロップ)も入れてみよう
ということになり、映像に合わせて文字も追加しました。
結果として、元の映像素材を活かしながら、
かなり見やすい物件PVに仕上げることができました。
そこでふと思ったのです。
「これ、そもそも現地で動画を撮影しなくても作れるようになるんじゃない?」
最近の動画生成AIがものすごい
調べてみると、現在は動画生成AIがものすごい勢いで進化しています。
代表的なものだけでも、
Google Flow(Veo)
Runway
Grok Imagine
DomoAI
など、いくつものサービスがあります。
特に興味を持ったのがGoogleのFlowです。
以前の動画生成AIというと、
「夕暮れの東京を走るスポーツカー」
などと文章を入力すると、存在しない映像をAIがゼロから作る
「テキスト→動画」というイメージが強くありました。
ところが今は、それだけではありません。
自分で撮影した写真をAIに渡して、その写真を動画として動かすことができる。
ここが不動産との相性が非常に良さそうなのです。
例えば、普通の和室写真を動画にする
例えば、和室からバルコニーを撮影した普通の写真があるとします。
窓は閉まっています。
この写真をFlowに読み込ませて、
「右側の窓をゆっくり開けてください」と指示する。
するとAIが、静止画だった写真から「窓がゆっくり開いていく映像」を
生成してくれます。
さらに、
「窓が開いたら、カメラがバルコニーへ向かってゆっくり進んでください」
といったカメラワークまで指定できます。
これだけでも、単なる物件写真が一気に「内見動画」のようになります。
「窓を閉じた写真」と「開けた写真」の2枚を使う方法も
さらに面白いのが、現在のFlowでは開始フレームと終了フレームを指定する方法も使えることです。
つまり、
① 窓を閉じた状態の写真 と ② 実際に窓を開けた状態の写真 を用意して、
「この2枚の間で、窓が自然にゆっくり開く映像を作って」
とAIにお願いすることができます。
不動産広告では、これはかなり重要だと思います。
AIにすべてを想像させてしまうと、窓の形が変わったり、外の建物が変わったり、
実際の物件とは違うものが生成される可能性があります。
しかし、実際の「閉じた状態」と「開いた状態」の写真を両方与えておけば、
AIの想像に任せる部分を減らせます。
バルコニーまで歩いていく映像も作れる?
ここからさらに想像が膨らみます。
例えば、
和室の窓がゆっくり開く
↓
カメラがバルコニーへ向かって進む
↓
シーンが切り替わる
↓
実際のバルコニー写真へ
↓
カメラがゆっくり右へパンして眺望を見せる
こんな映像です。
これが自然につながれば、見ている人はまるで実際に室内を歩いて
バルコニーへ出たような感覚になります。
しかも元になっているのは、基本的には物件写真です。
これは面白い。
全部の写真を動画にする必要はない
とはいえ、ここで別の問題にも気付きました。
不動産の販売・募集用写真は、とにかく枚数が多い。
外観、エントランス、玄関、廊下、LDK、キッチン、洋室、
和室、洗面所、浴室、トイレ、収納、バルコニー、眺望……。
全部を動画化していたらキリがありません。
そして全部を入れたら、今度はPVではなく、
「物件写真全部入りスライドショー」
になってしまいます。
そこで、45~60秒程度の物件PVなら、写真を10~15枚程度に絞り、
その中でもAIで本格的に動かす写真は5~8枚程度で十分なのではないかと思いました。
例えば、
外観 → 植栽がわずかに揺れる
LDK → カメラがゆっくり室内へ入る
和室 → 窓がゆっくり開く
バルコニー → カメラが眺望をパンする
こうした「見せ場」だけAIで動かす。
浴室やトイレなどは、普通の写真に軽いズームを付ける程度でも十分です。
この方がテンポも良くなります。
写真選びまでAIに任せられる
しかし、ここでまた問題が。
「その10~15枚を選ぶのが大変じゃないか!」
不動産業者なら分かると思いますが、似たようなLDK写真が何枚もあったり、
「こっちの角度の方が広く見えるかな?」
「でも窓が綺麗に見えるのはこちらだな」
などと選んでいると、意外と時間が掛かります。
ところが、この作業もAIに手伝ってもらえます。
例えば物件写真をまとめてChatGPTに見せ、
「この中から45秒の物件PVに適した写真を12枚選んで」
と依頼する。
さらに、
「この写真はAI動画化」
「これは静止画+ズーム」
「これは使わない」
「この順番で構成」
といった編集設計までAIに考えてもらうこともできます。
ここまで来ると、人間が一から全部考えて動画を作るのとはかなり違ってきます。
では、物件PVはいくらで作れるのか?
ここで仕事柄、どうしても考えてしまいました。
「これ、商売になるんじゃない?」
今回のような物件動画をプロに撮影から依頼すると、
内容にもよりますが数万円程度掛かるケースがあります。
もちろんプロのカメラマンが現地へ行き、機材を持ち込んで撮影するのですから当然です。
一方、AIを使った制作なら、
依頼者から写真を送ってもらう
↓
AIで使用写真を選別
↓
必要な写真だけ動画化
↓
明るさ・色調を調整
↓
キャプションを入れる
↓
BGMを付ける
↓
45~60秒程度のPVとして完成
という作業が、現地へ行かずにできます。
例えば、
「物件紹介ショートPV 1本10,000円」
写真10~15枚程度、AIモーション、色調補正、キャプション、BGM、修正1回まで。
このくらいの商品なら、案外需要があるのではないでしょうか。
「5万円払ってカメラマンを呼ぶほどではない。
でもSUUMOやInstagram、ホームページにちょっと格好いい動画を載せたい」
という物件は結構あると思います。
AI代も「趣味」ではなく「原価」と考える
Flowを本格的に利用するならGoogle AI Proという選択肢があります。
月額料金だけを見ると、
「またAIに毎月お金を払うのか……」
と思ってしまいます。
しかし、もし物件PVを1本1万円で受注できるなら話が変わります。
AI利用料は「遊びのお金」ではなく、制作原価になります。
1本受注すれば月額料金を回収でき、その月に何本か作れば利益が残る。
しかも必要な月だけ契約し、使わない月は解約するという運用も考えられます。
そう考えると、動画生成AIの見え方が少し変わってきます。
1年前のAI解説動画がもう古い
今回Flowについて調べていて、もう一つ驚いたことがあります。
YouTubeでFlowの解説動画を見ていると、
「Flowは日本語に対応していないので英語でプロンプトを入力します」
と説明している動画がありました。
ところが現在はFlow自体が日本語に対応しています。
Googleの公式ヘルプにも日本語が対応言語として掲載されています。
さらに現在は、写真から動画を作ったり、開始・終了フレームを指定したりと、
以前より機能が増えています。
つまり、わずか1年前のAI解説動画ですら、すでに情報が古くなっている。
AIの進歩の速さを改めて感じました。
動画生成AIはたくさんある。でも全部覚える必要はない
調べ始めると、Flow、Veo、Runway、Grok Imagine、DomoAI……。
とにかくたくさん出てきます。
最初は、
「こんなの全部覚えられないよ!」
と思います。
でも考えてみれば、全部使える必要はありません。
不動産なら、
「実際の物件写真をできるだけ改変せず、自然な動画にできるAIはどれか?」
それだけを基準に選べばいい。
そしてAIそのものも、また数か月後には変わっている可能性があります。
一つのAIを完璧に覚えるより、
「今やりたい仕事に一番向いているAIを、その都度選ぶ」
という使い方の方が、これからは重要になるのかもしれません。
不動産広告も変わっていくのかもしれない
少し前まで、物件動画を作ろうと思えば、
現地へ行く
→ 動画を撮影する
→ 編集する
→ テロップを入れる
→ BGMを付ける
という作業が必要でした。
もちろん、本当に質の高い映像を作るなら、
これからもプロの撮影には大きな価値があります。
しかし、
「写真しかないけれど、ちょっと格好いい物件PVを作りたい」
という需要については、AIがかなりの部分を担える時代になりそうです。
写真を10枚ほど送る。
AIがその中から使う写真を選ぶ。
一部の写真を動画にする。
それを編集して、キャプションとBGMを付ける。
そして1本の物件PVが完成する。
今回いろいろ調べてみて、
「これ、実際に一度作ってみたいな」
と思いました。
まずは自社物件で実験です。
果たして普通の物件写真だけから、どこまで「本当に現地で撮影したようなPV」が作れるのか。
これはちょっと楽しみです。
