雪蘭は部屋で眠れぬ夜を過ごす。
『娘よ…悩み事か?』
『父上!?』
何処からともなく現れた秋月
『眠れぬ夜を過ごしておるか…』
『はい…でも何故それを?』
『……周囲に起きている事は全て把握するのが家族の安全を守る事だからな父は何でも知っている』
『ま、まさかさっきの…あの…』
父に清流との事を見られたのではないかと雪蘭は動揺した。
『…父は何も見ておらぬ。婚約者がいる身でありながら別の男を愛する…良くある話だお前どうしたい?』
『……わ、私は白荘主の考えを聞いて…』
『己の人生を蕭白に決めて貰うのか…我が娘ながら何と情けない。お前の人生はお前のものだ誰と生きるかどう生きるかは己で決めよ。
お前達には私のせいで辛い思いをさせたようだが父としては何かに縛られずに生きて欲しい。千月洞の前身、星月教は本来そういう教えだ』
『父上、知って…』
『お前の力を受けて暫く休んでいたからな暫く見ていた。秦掌門の老ぼれが言う事もな。炎輝が珍しく怒っていた』
『あの父上…母上には』
『言わぬ。傷付くであろう…春花の傷付くのは見たくない。何より私以外が傷つけるのは許さない』
『!!それ、さっき清流も……では父上なら母上を傷付けても良いと言う事ですか?』
『傷は付けたくない。が他人につけられるのはもっと許せぬ。私以外に春花を泣かせるなどあってはならん…同じような事をあの小僧にでも言われたか?』
『………はい』
『あやつの怪我はもう良いのか?大怪我をしていたぞ』
『え?』
『ま、まさか盗賊を差し向けたのは父上ですか?』
『まさか、そんな事まではせぬよ。春花が怒るからな。しかし雪蘭、お前は誰に似たのか考え過ぎだ』
『……』
秋月は雪蘭を引き寄せ抱きしめると昔のように宥めるように背を叩く
『こうやって昔は良く寝かせたものだ。お前はなかなか眠らなくて…母様は隣で起きもしなかったからな。お前を抱いて眠るまで……娘が離れるのはこんなに…悲しいのだな。父は知らなかった』
『父上』
『だが知らなかった感情を知るのは悪くない。それが例え痛みであろうと、その原因が愛する者なら、甘んじて受ける気になろう?』
『……』
『何をおいても優先してしきたりや礼儀などよりも体が動いてしまうのは誰の為かをよく考えれば答えは出よう』
『……』
『蕭白は悪い男ではない。だが数年前にした約束で互いの人生を縛る事が必ずしも大事だとは思わぬ。所詮16の小娘が考えた浅い策だからな』
『!!』
『4年も経てば考えも変わって当然だ』
『でも、もう江湖中の者が知っています。鳳鳴山荘の蕭白荘主と千月洞の前洞主上官秋月の娘が結婚すると…今更白紙にする事は白荘主の顔に泥を塗る』
『よい。あやつの顔には泥くらい何ともない』
『え?』
『冗談だ。あやつはそんな事を気にする男ではない。昔はそうだったが、人は愛を知れば心が広く深くなる…気にせず思う事を伝えよ』
『…はい…あの…母上がこちらに住んでいた頃も父上は…』
『ああ、よく部屋を訪ねたよ。いちいち怒ったり焦る春花が面白くてな…』
『婚約者が…蕭白様がいたのにですか?』
『私の方が先に出会った。春花は最初から私のものだ…』
『最初から?』
『ああ、春花という名を付けた時からな』
『???』
『春花秋月いつ終わらん……意味がわからずとも良い。さて、お前はもう眠りなさい。白からの手紙など私は読まぬから、母に良く相談する事だ。恐らく私に黙って近々此処に来るだろうから』
『何故読まぬのですか?』
『あやつの字は読みにくい。堅苦しくてな』
『ふふ』
父と娘は笑った。
秋月は雪蘭が眠るのを見届け春花の元へ戻った。
帰り着いた途端春花の香りに包まれ幸福感。邸に入れば我が子を愛しげに抱く妻の姿に目を細める秋月。暫くその光景を見つめる。
『あら?今日は遅かったのね』
『……』
『私達の娘は元気でしたか?』
『!?』
『やっぱり…時々千月洞とは逆から帰ってくるから…見に行ってるんでしょ?雪蘭。それに最近炎輝も様子が変だから…』
『いや、別の娘かも知れぬぞ?』
『え?浮気って事?』
『だったらどうする?』
『私も同じ事をするわ。丁度この前、この一帯を警備してくれてる千月洞の星僕さんに声をかけられてね。私が春花とは知らなかったみたい。其処は千月洞の大切な方の住まう敷地なので行く所がないなら私のとこへ来ないか?ですって。どうする?』
春花の話の途中から表情がみるみる変化する秋月
『何処の星僕だ!?』
『だから良いわあなたはその女子の所に行って』
『ならぬ!お前は一生傍にいると言ったであろう?』
春花を捕まえると頬に触れた
『つまらない嘘をつくからよ』
『何処の星僕だ?星主を呼び出し厳しく…』
『あなたが私の傍にいれば良い事じゃない?他所から声をかけられるくらいに隙を作ったのは私じゃなくて兄様よ?』
憎まれ口は春花の得意技である。
秋月は吸い込まれるように口付けた。
『……よし、ならば隙を作らぬ様に今から大胆な事を…この前は上手く逃げられたからな』
腰紐をゆっくりと解く仕草に春花を壁に追い遣り逃げ場を取り上げていく。
『な、、何?逃げられたって結局あの後…ちょっ…また!!』
『またとは心外な…兄は毎日でも良いぞ?ん?』
『んんっっもーっ!だから今はダメだってば!』
『【今は】?確かに聞いたぞ春花。今宵も戯れるという約束だな?』
満足な答えを引き出せた秋月。
『ほんっとうにそんな事ばっかり言って!顔が近い近いっ』
『近付けているから当然だ』
『兄上!』
『ただいま戻りました。ん?またくっついてなにやってんの?』
最高に最悪な登場をする炎輝に春花は救われ、秋月から逃れた。
『炎輝!おかえりなさい』
『………』
秋月は邪魔され不機嫌になる。
『蕭白からの手紙は読まぬからな!母上に読んでもらえ』
『え?父上何故それを?まだ言ってないよね?』
『ふん。』
秋月は春花を睨んだ。やはり鳳鳴山荘に行っていたのだと春花は笑った
葉顔に鳳鳴山荘に送ってもらった春花。
『葉顔さん、これ…顧晩のお墓に…』
傅楼の花畑で摘んだ花束を渡した
『え?…謀反人になど墓なぞありません』
『…じゃあ、蓮池の所にでも』
『…確かに時々思い出す事があります。あれが懐かしむという事でしょうか』
『そうよ。死を悼んでいるのよ』
『死を悼む…そうですか。何故こんな風に思い出すのか理解できませんでした…』
『葉顔さんの中で…憎めない人なのね。今此処にいたらどうするだろう?って思うでしょ?』
『はい。何故かは分かりませんでしたが確かに…憎めぬ者でした。花をありがとうございます』
『所で、秋月に変な女子なんて居ないわよね?』
『秋月様に?』
『ええ、この前そんな事言ってたから』
『ありえません。心配なさらずとも良いかと』
『そうかしら?』
『秋月様は奥様に振り回されてそれどころじゃないと噂があります』
『そう?ならよかった。。え?私に?振り回される?失礼な噂ね!』
葉顔は真実だと思いながら春花と別れた
『春花殿!』
楼門をくぐり邸に入った春花は遠くから蕭白に呼ばれた。
『蕭白!』
思わず昔の様に呼んでしまう。
『手紙を読んでくれたか?良く来てくれたな…』
『ええ、久しぶりに来たけど…会えなくて寂しかったわ』
『え?…』
『え?娘に4年もろくに会えなくて寂しかったって…顔は見に来れてもゆっくりはできなかったし…ん?どうしたの?』
『あ、ああ。そうであろう…では早速雪蘭の部屋へ…話しが終わったら後ほど私の部屋へ2人で来てくれぬか?皆も集めて考えを伝える』
『ねえ、白?あなた少し痩せたんじゃない?大丈夫?』
『ああ、些か多忙でね。所で秋月殿は?』
『娘の結婚話はまだ聞きたくないみたい』
『はは。あやつも普通の父親か…』
あのまま結婚していれば白との間に子をもうけ、家族を与えられたかも知れなかった。
『…白…』
『あ、いや…では後ほど』
春花は複雑になりながら娘を訪ねた
戸を開いた先に見た娘のなんとか細い姿かと驚く。
『まあ、雪蘭…こんなに痩せて』
『母上!』
春花の顔を見るなり抱きつく娘。
『どうしたの?雪蘭、力を制御できる様になったんですって?』
『はい…』
『それはおめでとう。中に入って話しましょう?』
『はい。母上…あの…母上1人ですか?』
『ええ、そうよどうして?さ、そこに座って?私がお茶を淹れるから』
『昨夜父上が言った通りです』
『え?やっぱり来たの?ここへ…他人の邸も関係なく勝手に入るんだから…』
茶器を使う母の白い手を見つめた。
雪蘭はこの白くて柔らかくて温かい手が大好きだったと思い出した。
『母上……雪蘭は母上と約束した人を見つけました…いえ…ずっと傍にいて気付かなかった。でも、気付いてしまった』
『あら…そう誰なの?』
『母上は知っているのではないですか?』
『でもあなたの口から聞きたいわ』
『……秦清流です…』
『そう…何をおいても大事なの?』
『はい。大怪我をしたと聞いていても立ってもおられなかった。裸足で駆け出して炎輝に咎められました。それに……見合いをしたと聞いたけど信じたくなかった。違うと言う清流の言葉を信じたいと思ったんです』
『……で、どうしたいの?』
『母上ならどうしますか?』
『私はあなたじゃないから私の意見を聞いても参考にならないけど…私は自分の気持ちを選択したから鳳鳴山荘に居ないのよ。お父様の隣で生きていきたかったから…あなたは?』
『……私は…』
戸の向こうから声がかかる
『雪蘭!雪蘭…』
『清流ね?私が開けるからあなたは中にいなさい』
春花が戸を開くと清流は驚いている
『び、びっくりした…雪蘭の母上。失礼しました』
『いいのよ、中に入って…私もびっくりした。冷凝さんが立ってるかと思って…』
清流は中にいる雪蘭を目にするや駆け寄る
『朝げは食べたのか?昨夜は眠れたのか?』
心配する清流を見て春花は微笑む
『清流、あなたも座ってお茶を…どうぞ』
『あ、頂きます…あの…雪蘭のお父上はどちらに?』
『何故ですか』
『……雪蘭との結婚を許して貰いたく』
『それは順序が違うわ。先ずは白に話をして許してもらわないと…婚約者なんだから。それからお父様に話をしなさい。
で、雪蘭は?さっきの話の答えを聞いていなかったわ…あなたは誰の隣で生きたいの?』
『私は………清流です…私の人生にいつもいた清流しか…考えられない』
雪蘭は初めて胸の内を吐露し俯いた。
『清流は雪蘭をどれくらい愛してるの?』
『私は雪蘭を物心ついた頃から愛してました。それが愛とは知らなかった。けれど彼女が泣く時、悲しむ時、笑う時…何故か我が事の様に悲しくなり、楽しくなり、泣きたくなる…誰かに泣かされたら怒りで我を忘れます。誰が私の雪蘭を泣かせたかと…泣かせて良いのは私だけです。それ程想える相手には出会えない。盗賊に襲われて倒した時、私は己の正義を貫いた。しかし、奴らも生きる為の正義があった…きっと愛する家族がいるのだろうと胸が痛みました。雪蘭を守る為なら盗賊に身を落とす事はしませんが命を賭す事はすると…』
『清流…分かりました…何だか誰かよく似た人を知ってる気がするけど…誰かしら』
『母上…あの…』
春花は立ち上がり戸の傍まで来ると振り返る
『何をしているの?2人とも…話が決まったなら早く白に話に行きましょう?彼も待っているから』
母春花はかつて此処で暮らしていた頃と同じ様に白の部屋を目指した。
部屋に着くと既に秦流風、冷凝、風彩彩に夫の李漁が集まっていた。
『春花殿!清流まで…どうして?』
『冷さん、彩彩さんお久しぶり。
皆さんおはようございます。今日は白荘主に呼ばれて参りました。娘の雪蘭が無事に力の制御ができる様になり、結婚をどうするかという話をしに参りました』
『で、今日は秋月殿は…』
『…多分その辺にいるかと…』
『はぁぁあ、面白くない。バレておったか?』
不機嫌に部屋に足を踏み入れる秋月
『珠が光ってるからね…』
右手の氷蚕珠を見せた。
秋月が持つもう一つの氷蚕珠と呼応し光る珠である。
『珠?』
『ああ、こちらの話』
『で、白荘主。雪蘭との結婚は…』
『……雪蘭。私はそなたが可愛い。幼き頃より見てきた。そなたが結婚したいと申した時は戸惑いもあったが嬉しかったよ』
『……はい』
『それで、私は考えた。そなたは両親の良い部分を受け継ぎ聡明で、行動力もあり何より明るく優しい。この鳳鳴山荘荘主の妻にこれ程相応しい者はおらぬと…』
『……あの…』
雪蘭が何かを言いかけようとするが白は無視し言葉を続けた
『よって、鳳鳴山荘荘主と雪蘭は約束通りに結婚の儀を執り行う。準備期間は話し合って決める』
『え?』
『待ってください!雪蘭は私と結婚します』
黙っている事ができずに清流が物申した。
『清流?何を言い出すのだ』
『私と雪蘭は愛し合っています。雪蘭は荘主とは結婚できません…わ、私と雪蘭は。荘主としない事…夫婦がする事ももう雪蘭と…』
突拍子もない言葉に大人達はどよめいた
『なっ…せ、清流?お前っ』
冷凝は怒りに肩を震わせる。
『……私だって無理矢理にはしない。雪蘭が同じ気持ちだと確かめた』
『雪蘭、本当か?』
『はい…白荘主。ごめんなさい。私は…秦清流を愛して…しまいました。いえずっと前から多分』
『……それは誠か?』
『はい』
『雪蘭…』
雪蘭の言葉に清流は胸を熱くした。
『清流と共に生きたいか?』
『……はい』
『あーしかし約束を反故にはできぬな?白荘主。どうすべきかな?』
秋月はこれまでにないほど白に向かって不敵に笑った。白もまた頷く
『初めて皆に話すが私は以前より、体を壊し秋月殿に薬を頼んでいる。私の父もそうであったが鳳鳴刀の力は並ではない故こちらの体も命を削る。李漁殿には心配をかける故言えなかったのでな。荘主として鳳鳴山荘を率いるにも力が必要だ。しかし私には生憎育てる息子がいない。』
『……』
『白荘主?』
『秦清流…私の後継として荘主になれ。』
『え?ど、どう言う…』
『盗賊を倒した後、暫く稽古をしたな?』
『清流?誠か?荘主と稽古したのか?』
冷凝は問う
『はい…盗賊ごときにいちいち情をかけては雪蘭を守れぬと…稽古をつけて下さいました』
『刀が次の主を選ぶのを私は手伝ったのだ』
清流はふと盗賊を掃討した時の事を思い出した。
盗賊に襲われながら情をかけ背後からの攻撃をかわせなかった。瞬時に白に助けられたが一太刀遅ければ反対に切られていたかも知れなかった。
それから、白との旅の道中、立ち寄る宿の近くで人知れず練習に励む日々となった。それは雨の日も風の日も。
木々を断ち切る刀が折れ刃が地面に突き刺さる。
『もうダメになった…』
折れた刃を拾い上げると清流は溜息を吐く。
『励んでいるな』
『め、盟主…』
『昔ここに良く似た竹林で武芸に励んだ』
『……あの…』
『何だ?』
『雪蘭を…幸せにしてください。私は全力で命をかけて守ります。盗賊に情けをかけるなど…あってはならなかった。もっと強くなりますので白盟主はどうか雪蘭を…』
『その折れた刀でか?』
『いえ、これは…』
蕭白は笑った
『これを使ってみよ』
白は脇に差した鳳鳴刀を差し出した
『え?これは…鳳鳴刀では?滅相もありません…こんな大事な刀、手にするのも憚られます』
『盟主夫人を守るのに鳳鳴刀は相応しくないか?』
『え…いえ、そう言う意味ではなく…盟主?どうされたんですか?』
『いや…刀の音を久しく聞いてなくてな』
『それは…鞘から抜いていないという事ですよね?長い間平和を守って下さったお陰です…』
『盟主は代々名を継いで来た。私は蕭原よりこの血と名を継いだのだ』
『…?』
『だが、長い間に血が絶えた事もある。その時どうしたか分かるか?』
『いえ…』
『各掌門から選出し養子にした…純然たるは血ではなく正道の精神だと言う事だ』
『はぁ…それが何か意味が?』
『まぁ良い。とにかくこの刀を鞘から抜いて貰えないか?』
清流の手に半ば無理やり鳳鳴刀を渡した。
『……凄い…刀が…』
『はは、分かるか?抜いてみよ』
静かに鞘から刀を抜いた。刀は震え微かに心地よい音がする鞘を取り払った刀は美しく輝いたのを清流は思い出した。
『……あ、もしかして…あの話は…』
清流は白との鍛錬で鳳鳴刀を手にした。
『思い出したか?清流。鳳鳴刀は次の盟主を選んだ。そう言う事だ…故に鳳鳴山荘荘主は約束を違えず雪蘭と結婚する。』
『え?それはでも4年前に書いた婚約の証書が…』
白は紙を広げた
『確かに書いてあるが鳳鳴山荘荘主との婚約となっておる。蕭白とは書いておらぬよ』
『ほお、白荘主、石頭だったお前もなかなか成長したようだな』
秋月は呟き春花に睨まれた
『……だが、その代わり秦の名を捨てて蕭家の養子となって貰う。流風殿とよく話し合い決めなさい』
『…父上…母上…あの…』
『清流、お前が傷だらけで戻った日、白荘主に呼ばれて話があった。鳳鳴刀をお前に託すために鍛錬したせいで帰りの予定が遅れお前は負傷したとな…その話が漏れでもしたら大変だから父には祝いだと言ったんだ…』
『だからつまらぬ嘘をつくなと言ったんだ私は!お義父様はすぐに吹聴するが妄語もひどいからな』
冷凝は義父に苦言した。
『確かに…今回よくわかった。雪蘭や炎輝を傷つけたな。それで、私達夫婦も話し合ったが…』
『はい…』
『もう1人息子を作るので、大丈夫だ』
『は?!』
冷凝は流風の脛を蹴った。
『嘘を申すな!流風!こんな時に…。清流、父と母が話したのはな…お前が生きたいように生きよ。私だって【冷】の名は実際には無いのだ。お前が蕭家の養子に行っても息子である事には変わりない』
『母上…』
これにより数日のうちには清流が白の養子となり若盟主として刀を継承した。あまりの事に人々は驚いたが、しかしてこれまでの功績がある。それも納得できる物だと認められた。
抜けるような青空が広がるある日、鳳鳴山荘荘主清流と、千月洞前洞主秋月の娘雪蘭の結婚の儀が執り行われた。
空の青に対比するように朱赤と緋赤とに染められた清流と雪蘭は列を従え並んで歩いている。
互いに微笑み合いながらゆっくりと前に進んでいく。
『……妹よ…』
『何?兄上』
『堪えられぬ…』
秋月は雪蘭の姿を見つめ激しい胸の痛みを感じていた。
『寂しい?』
『これが寂しさなのか?……私の宝はなぜこうも鳳鳴山荘の男に奪われるのだ…』
『娘がいなくなるわけじゃ無いわ息子が増えたのよ……でも結局…あなたのお母様の夢が叶ったのね』
『ふん…なんという執念の強さだ』
『これも運命だわ…』
『……あの母の痛みも少しは和らいだか』
『では父の罪も少しは軽くなったか?』
共に並んでいた白も又感慨深く行列を見つめた。
『思えば私達の結婚式は…散々だった…長生果の為に人を集めたために結局そなたが盗まれた』
『白…』
『春花殿を責めている訳じゃない。あの日美しかったそなたに雪蘭はよく似ていて…ただそれを…思い出しただけだ』
『未練がましい…花小蕾は許嫁だったかも知れぬが春花は私のものだ最初からな』
『はは…秋月殿は変わらぬな』
『白!あなたこれからどうするの?身体は?大丈夫なの?』
白を心配する春花を良く思えず眉間に皺を寄せ苛立つ秋月。
『まあ。清流はまだまだ盟主としては未熟だからな隠居しながら彼らを助けるよ。しかし、考えたが雪蘭に子が生まれたら私の孫になる。春花殿と私の孫だな』
『おい何を言うか、私の孫だぞ!言い方に気をつけろ』
秋月が割って入る
『2人ともやめて!ばかみたいな話しないで!』
『だとするとうちの孫にもなる』
流風が扇子で手を打つ
『ややこしくなるから黙っておれ』
冷凝は夫を叱った。
『だが孫も何もあの2人は…あの様子では…契ってはおらぬようだな。』
『ええっ??だって…』
『なんと?夫婦がする事をしたと…申したではないか』
春花と冷凝は顔を見合わせ驚いた。内心、母同士で思う所があった。
『秦掌門夫人。息子殿はあの秦流風の子息であろう?成る程あの場で誰もが納得してしまうほど弁が立つ。私は少々感心した』
『だから貴方何も言わなかったのね?どうりで怒りもしなかった訳だわ』
『娘が結婚前に傷など付けられたらかなわぬからな』
『じゃあ…』
『残念だが孫はまだだ』
秋月は皆の落胆した様な表情に笑った。
『あ、春花さん、ではうちは炎輝を婿に貰うわね』
『彩彩?』
『あの子の真っ直ぐした性格。それに毎日強くなる姿を見ると頼もしくて…』
『申し訳ございません炎輝様は我が千月洞にいただきますので…』
音もなくいつの間にか背後にいた葉顔は彩彩に告げた
『おお、葉顔、従妹殿!』
流風は久々の親戚に喜んだが冷凝は一瞥した。
『あら、千月洞の…炎輝は我々の元で武芸を極めておるのでそちらには行かぬよ』
『いえ、私の薬の力、毒の知識…術の使い方は秋月様より受け継がれたものがあります故…鳳鳴山荘ではそれらは不必要では?』
『み、みんなで仲良くすれば良いじゃないか!』
己の取り合いで謎の小競り合いに困惑する炎輝。
祭壇の最前列、揉めている参列の親達を清流と雪蘭は呆れ見つめ合い、そして笑った。
時を超え呼び合い出会った春花と秋月
春花秋月いつ終わらん
春に咲く美しき花、秋の闇夜に浮かぶ明月。
遥幾千年経とうとも変わらぬ愛の物語。
秋月の汚名はほぼ、息子炎輝に果たさせましたが、白は…どうなんだろ。
初めは白と雪蘭をと思ってたんですが…でも、白は愛した人を愛し抜く人だなと思ったのでこうなりましたね。
結局、秋月と蕭白は互いによくわかり合った存在だし。
秦流風と冷凝の息子清流が出てきてから先に竹林で白盟主との鳳鳴刀のやりとりができたのでこういう風に出来上がりました。雪蘭には幼き頃から仲良しの筒井筒の清流が合ってると思いまして…
ザックリ終わらせたのでまた後からきっちり書いて加筆しますね。ただいまは疲れてるので春花秋月見せて下さい。
あ、そう言えば次ドラマの李宏毅くん。白岳役。かっこいいけどちょっと秋月っぽい。
青襄傅の李宏毅くんは素敵だったー!現代劇でてくれ!
趙露思ちゃんもまぁ愛らしくてさ。
時代劇ばっかやん。
ハッピーキャンプで踊りまくる趙露思ちゃん愛らしかった。
オープニングセレモニーで挨拶した李宏毅君は…暗かった!毎回なんであんな後ろにいくん?とおもったくらい。人見知りっ子かもね。