中国ドラマ 春花秋月その後物語 7 | **arcano**・・・秘密ブログ

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韓流、華流ドラマその後二次小説、日本人が書く韓流ドラマ風小説など。オリジナルも少々。
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1ヶ月後、千月洞元洞主上官秋月の娘と鳳鳴山荘の荘主の婚約が各掌門、江湖の里と言う里、町という町に知らされた。千月洞現洞主の葉顔は謀反を企てる星主、星僕、千月洞の月僕を付き止め壊滅させた。
あの夜の言葉通りに清流は蕭白に雪蘭の護衛の職を申し出た。志願にあたり秦流風、冷凝は猛反対であった。

『お前はまだ子供だ。鍛錬が必要な未だ未熟な分際で未来の盟主夫人を護衛するのは無理だ』

冷凝は言い聞かせた。
しかし未熟さ故のその熱意を荘主である白が汲み護衛の職を与えた。
力の制御が課題の雪蘭と共に武芸に励むよう命じた。

『これまでとあまり変わらない生活じゃないか!いつも清流は姉上と鍛錬に励んでいたんだし、住む場所が違うだけじゃないか?』
と雪蘭の弟炎輝は護衛の職の為に稽古の相手も少なくなり遊べなくなった清流に言った。

『すまぬな炎輝。雪蘭を1人には出来ない。それにいつまでも子供ではいられないんだ。俺はもう大人だ。だが安心しろ稽古はつけてやるからな。』

炎輝は納得しない風に乱暴に木刀を持ち出て行った。

『雪蘭雪蘭…って姉上ばっかりだ清流は』

だがその嫌味も清流の耳には届かなかった。

それからの清流は凄まじい集中力で武芸に励んだ。雪蘭を守りたいただその心1つで自らの能力を最大限に引き上げていた。
夜になればあの月に雪蘭を重ね昨日より今日今日より明日が強くなると信じて毎日鍛錬を積む。

雪蘭は花嫁修行と称した緑袖の手伝いや鳳鳴山荘のしきたりを叩き込まれる。

武芸の手合わせの時に初めて清流と顔を合わせた。
武芸場での2人は以前のそれとは違い会話もない。雪蘭は清流を見ていたが清流は目を合わす事はなかった。

未来の盟主夫人。

その雪蘭とスッパリと線を引いたのだ。
無言の2人はただ対峙するだけでその場を2人の空間にしてしまう。
余りに美しくあまりに悲しい時間だった。
ある時、山荘の裏にある竹林で隠れて鍛錬に励む清流を時折蕭白が見守っていた。

時は過ぎゆく、息づく人々が移り変わりながら春に花が咲き乱れ、秋の名月には終わりはない。
娘の身を案じながら春花は懐かしい鳳鳴山荘を思っていた。


伝奇谷の花畑は傅楼、游絲夫妻を思わせ懐かしさに拍車がかかる。

『春花殿…お久しぶりでございます』

前触れもなく現れた葉顔。


『葉顔さん!お久しぶり。今日はどうしたの?』

『あ、いえ…ちょっと千月洞の用向きがあり参りました…あと…桃雨様に…』

『桃雨に会いに来たの?』

『……』

疲れ切った葉顔を癒しているのは専ら炎輝の後秋月と春花に生まれた桃雨の相手をする事だった。

『して、春花殿…今日は秋月様は…』
振る舞われた茶と月餅に葉顔の疲れも幾分ましになった。
葉顔は千月洞で咲く蓮の実を調薬の為に持ってきたと言って広げれば桃雨の遊び道具に埋もれている。それを見て吹き出した春花。

『今日は鳳鳴山荘へ…白に呼ばれたといっていたけど雪蘭が心配なのね』

『確かそろそろ約束の歳になるのでは?』

『そうね、あの時生まれた桃雨がもう4つだもの…』

『という事は結婚の儀についての話かもしれません』

『葉顔さん、貴方は洞主としての人生で良かったの?貴方が千月洞を守ってくれたのは…兄上の為でしょう?』

『!!』

『知っていたと言うより、分かってしまったのよ。』

『貴女には敵いませんね…確かに師としての尊敬以上の情はありました。しかしそれも昔の事。想いを口にする事すら許して貰えなかった…』

『……』

『雪蘭様はどうしていますか?お父上に似て何処か孤独で…秋月様は星主や月僕の誰も信じる事はしなかった。春花殿だけなのです。秋月様を笑顔にさせられたのは…雪蘭様にとって蕭白荘主はその様な相手なので?』 

『……元気にはしているけれど…力も制御できるようになったと…ただ何度か酷く暴走して炎輝や冷凝さんまで大きな怪我をしたそうよ…特に清流が…』

『清流?秦流風の息子の清流が?』

『秦流風とあなたは従妹だと聞いたけど、親しかったの?』

『父同士が兄弟でしたので昔はよく稽古も手習いも共にしていましたが…両親が死に、死に損なった私が秋月様に救われてからは全く…けれど流風は気にかけてくれた様で』

『清流と雪蘭もそのようなものかも知れないわ。物心がついてから兄妹の様に育ったから…昔は清流と一緒にお風呂に入る。床に入ると泣いて困った事もあるの…秋月が怒って無理やり連れ帰ったりしたけど。無邪気だったあの子がいつの間にか負の因縁を背負ってしまった』

『潜在的な能力は蕭白や秋月様以上かも知れません…』

『清流の大怪我の後雪蘭は全く誰とも会おうとしなくて…結局、清流が説得したそうだけど、部屋から出てきた雪蘭はやつれていたと蕭白から文が届いて…何かあったのかしら』

『……それは…』

『雪蘭は…きっともう見つけたのかもしれないわね』

『?』

春花の言葉の真意を掴めない葉顔は首を傾げた。

春花にその知らせが届く前、鳳鳴山荘では事件が起きていた。
雪蘭が何度目かの暴走で弟の炎輝のみならず師である冷凝にまで怪我を負わせた。
その時ばかりは身体を張って力を抑え込む清流が雪蘭の力に堪えられず至る箇所から流血しながらも雪蘭を止めた。
炎輝、冷凝、清流の怪我はすぐ様現れた雪蘭の父秋月が内力で治癒した。
冷凝は己の怪我よりも秋月の力が戻ってきている事の方を問題視しやたらと秋月に質問を投げかけていたがしかして秋月は聞き流すばかり。
全員の治療後も雪蘭の心は晴れなかった。
そんな折、蕭白は江湖の長達を集めた会談に清流を共として出発した。
出発の朝、蕭白荘主に並び立つ秦流風の息子に人々は驚きの声を上げていた。

『秦掌門のご長男清流殿は誠に精悍な顔付きで…今や各掌門の子息達の中でも群を抜いて優秀だそうだ…荘主の許嫁雪蘭様の護衛だけでなく今日は荘主の護衛だそうだ。近頃盗賊が出没すると聞いていたがお二人なら心配もいらぬ。』

人々に紛れて雪蘭は見送りに出ていた。盗賊の噂話に不安になった雪蘭は思わず人垣を掻き分けて前へ出た。

『清流!』

『雪蘭!?どうした?』

人波に押し出された雪蘭に気付き駆け寄ると押し出された雪蘭を抱き留める清流。
ほんの僅か前に見せていた少年の面影はなく雪蘭は狼狽る。

『あ、雪蘭様だ…お見送りか?…にしても…』

『ああ、こう言ってはなんだが雪蘭様には清流殿が…』

『あ、いや年齢的にな…』

『それにしても共に成長しただけあって、同じ様な空気感をもっておるなあの2人は』

周りで見ていた大人達も又2人の寄せ付けぬ世界に固唾を呑んだ。

『雪蘭?白様の見送りに来たのか?それならそんな所にいず荘主を呼べば良い』

『あ…いえ…気をつけて…蕭白荘主を守って下さい』

『分かっている』

雪蘭に向けるいつもと変わりない笑顔を見せた。

『雪蘭、見送りに来てくれたか?』

『あ、はい。蕭白荘主…いってらっしゃいませ。ご無事でお帰り下さい』

『行ってくるよ』

その後ろ姿を見たのを最後に彼らが行方を絶った事を知ったのは帰る予定の日を数日過ぎてからだった。

雪蘭は消息を絶った清流を案じ生きた心地がしなかった。
いくら緑袖に聞いても山荘の者達に問うても分からぬと言う。
その不安を払拭する為に、鍛錬すべく冷凝の道場を訪れた。
『雪蘭、今日はどうした?稽古の日ではないが…炎輝は帰り支度をしていたぞ?』

『はい…冷先生。稽古の相手をお願いしたいのですが。清流と白荘主が消息を絶って…居ても立っても居られないのです。一刻も早くこの力を抑え込み、2人を探しに行くつもりです』

『…雪蘭』

冷凝は言葉が出なかった。いくら武芸の達人であっても一度味わった畏怖。あの漠然とした恐怖に一人で対処できるかと思案した。

『ならば私が相手になろう』

現れたのは秋月だった。

『ち、父上!』

『上官秋月?!』

『雪蘭、お前が未だ力を制御出来ないのは己に甘えがあるからだ。』

『そなたやはり力が?』


『ふん。そんなものとっくの昔に戻っておる。何年経つと思うのだ?だが春花との人生に必要がないだけだ』

『だが…』

冷凝の言葉を掻き消す様に秋月は雪蘭に攻撃を始めた。
雪蘭も父に対して臆する事なく向かって行く。
力と力がぶつかりせめぎ渦を巻き暗黒の雲を呼ぶ。
天の怒号か地の悲鳴かこの鳳鳴山荘の上空の天は荒れ、地響きが冷凝に恐怖を与える。
父娘でありながら本気で戦っている。
娘の刀は雷光に反射し父の姿を映す。父のその表情には余裕の笑みが浮かんだ。

『凄い…なんだこれは本当に功力をうしなっていたのか?』

『冷先生…大変です!鳳鳴山荘の周りだけが嵐に巻き込まれ…え??ちょ、あれは父上!姉上!』

『炎輝、お前は道場に戻れ、巻き込まれるぞ』

『だったら冷先生も!』

秋月は息子炎輝を見つけるや氷蚕糸を伸ばした。そして暴走を始める雪蘭を更に煽るように炎輝を強く縛る

『うぅっち、父上…』

苦痛に歪む弟の姿に雪蘭の身体から黒く氷の如く冷えた冷気が溢れ出る。

『……あ、父上…』

『雪蘭!お前が力を制御出来ねば炎輝は助からぬ』

雪蘭の間近に炎輝を近付ける。暴走が始まれば炎輝は間違いなく被害を受ける。

『な、父上…』

『お前がなぜ暴走するか…この父には分かっている』

必死に抑え込む雪蘭。しかし一度始まったものは簡単には止まらなかった。

『お前に足りないのは何だ』

『………』

更に雪蘭に攻撃していく秋月

『ち、父上…ああっ…』

『雪蘭、お前が本当に守りたい者を浮かべよ。そして目を逸らすな。自信を持ってその力を吐き出せ』

『……』

目を閉じ己の心の内を開き見る。
守りたい者が姿を見せていく。炎輝、桃雨、母と順に現れる。父や蕭白、鳳鳴山荘の皆が次々と雪蘭の中で浮かび、最後に出立の朝清流が見せたあの笑顔が浮かんだ。そしてその腕が雪蘭を抱き留めると、清流から流れ込む気に包まれた。
雪蘭の持つ冷気、波動を柔らかで温かい清流の気が飲み込む。

『清…』

雪蘭の暴走は徐々に弱まりやがて完全に停止した。
『雪蘭、どうだ?』

『ち、父上…私…』
息が上がる雪蘭は強大な力を制した余韻で体の震えが止まらなかった。

『分かったか?お前は自信がなさすぎたのだ…己の力の解放を恐れるな。人に生まれ持って与えられる力は本人が制御できる力だと言う事だからな。清流が留守で不安だったか?結局お前は…奴が見えぬと不安なのだ昔から』

『上官秋月!どう言う事だ説明しろ!』

冷凝は道場を破壊した秋月を睨んでいた

『お前達の冷先生が怒っておる。まあそう怒るな。あの白荘主に頼めば修理などすぐであろう?』

『そう言う問題ではない。お前功力が完全に戻っておるではないか?これは報告させて貰うぞ?それに雪蘭の暴走…どうして止まったのだ』

『秦掌門夫人、娘は力を持て余していた。仲間を守りたい気持ちの強さ、しかし己のせいで傷付ける後ろめたさ。何より大切な者達を傷つける事を恐れていた。
雪蘭の中で傷付けたくないその最たる者が清流だ。しかし結局はいつも清流に怪我を負わせる。
初めての暴走も恐らく清流が抑えたのであろう。清流の持つ気が雪蘭を落ち着かせるなくてはならないものとなったのだ。
雪蘭にとっての安息は清流だったと言う事だ。暴走は家族や仲間が傷付けられた時起きる。その時いつも清流が居たはずだが』

『父上早く下ろしてよ。何で俺縛るんだ!』

縛られて吊るされた炎輝が足をばたつかせていた。

『で、娘よ。どうやって暴走を止めるか分かったか?』

『……はい…いえ、もう暴走は起きません』

『そうだな。自信を持てば不安もなくなる。全ては己の中に巣食う鬼により生じた暴走。つまりは疑心暗鬼だったという事だ』

『はい。』

『では、これからどうする?』

『清流と荘主を探しに出ます』

『探すとは…少し勇ましすぎないか?このままいくとお前が冷先生の様にならぬか心配だ』

『な!どう言う意味だ上官秋月』

冷凝の叫びに秋月は笑った。

『もう1人の冷凝か…私は嬉しいが白荘主は大変だろうな』

現れた流風は破壊された道場を見てはわざとらしく嘆いて見せた。

『流風!!何をしていたんだ。今、雪蘭が力を制御し、秋月の奴が功力を…こやつめ、力が戻っていた事を黙っておったぞ!』

『あー、分かった分かったから落ち着け』

流風は扇子を開くと冷凝に向かって煽いだ

『暑くない!興奮もしておらん!流風、その様子…知っておったな!!』

扇子を奪うと憤慨し冷凝は道場から出て行った。

『ああ、彩彩殿の所に言ったな。女子は大変だ。
あ、そうだ。雪蘭、荘主が戻った』

『え!』

『やはり盗賊が出没したらしい。その掃討で手間がかかったそうだ』

『清流は?』

『……ああ、戻った。』

『何ですか?その含んだ言い方は…清流に何か…白荘主に何かあったのですか?』

『……少し怪我をしておる』

『ど、どのような怪我で…』

『大した事はないが…暫くは邸で休ませる』

『そんな…』

『白荘主は無事だから早く顔を見せてあげなさい』

『……清流には…』

『雪蘭。女子には分からぬだろうが…敵にやられた不名誉な傷を見られたくないのが男心だ…特に…そなたには見られたくないと思う。察してくれ』

『……』

『白荘主は何やら話がある様だ…力を制御できるようになったのならいよいよ結婚の話かも知れぬ』


秦流風の言葉に運命の日が近い事を察知した。

その後8へつづく




はい!ざっと書いてあげたのでまた夜にでも修正しますねー。