いえね、以前ウネジフニでちょこっと書いたなんちゃって小説。続きが読みたいと言われまして、改めてタイトルつけました。
スソンは再会の悲劇的な運命に震えた。
『……』
隣の席に座り様子を見ていた男はスソンの震える指先に気付く。
『うちの副社長と会ったことが?』
『え?』
明らかに動揺するスソンに微笑んだ
『あの従兄様があんなに感情を剥き出してるのを見るのは初めてだ。君はサジャをいじめた事があるとか?』
あの威風堂々と名の通り獅子の王の様な男をいじめた?想像しただけで緊張が解ける。
『イ・チョルセさん?面白い事言うから緊張が解けたわ…ありがとう』
チョルセは一瞬見せたスソンの笑顔に胸打たれた。
『え…っと、いや、そうだ。いじめてないならアレかな言う事聞かなかったのか?』
『……そうかもね。ま、昔の知人というくらいであの人にとっても私にとってもお互いにただすれ違っただけの人よ』
『…へぇ、、って…わ、サジャが睨んでる』
緊張感のない2人の様子を突き刺す様に獅子は睨んでいた。
スソンは迷わず睨み返す
『相変わらず他人には厳しいのね。自分には死ぬ程甘いくせに…お笑いだわ』
『驚いた…サジャにそんな態度ができる女性なんて今までいなかったから』
『あの人に私をどうにかする権利も力もないわ。私はあの人に何の感情もない。』
真っ直ぐと敵意に満ちた視線を獅子に向けたままスソンは呟いた。
サジャの挨拶の後役員達の挨拶とが始まり今後の方針を確認し会は終了した。
『じゃあ。チョルセさん私は行くわね…新しい仕事探さなくちゃ』
スソンは会議室を早々に立ち去る
『あ、ちょっと待って!これ…』
彼女の座っていた場所に古いパスケースが転がっているのを拾い上げる。
『ん?』
『チョルセ、会議は終わったぞ…』
『あぁ、今行くよ…』
チョルセが持つパスケースに気付く
『あの女が落としたのか?ったく何故じーさんもこんな会社を買収したんだ。会長も耄碌したんだろうな。しかしこの会社にスソンがいるとは』
『なんで分かったんだ彼女の落としたものだって。それにお互い憎み合ってるみたいだ』
『…いや、何となく…憎み合ってるって?むしろ無感情だ失礼な発言するなよ』
『そっか。じゃ、俺彼女貰ってもいいよな?』
『!!……あぁ、好きにしろ』
『シングルマザーかな…指輪してなかったし』
『??何でそうなる』
『これ、彼女と彼女の子供でしょ?』
パスケースには子を抱くスソンの写真が入れられていた。
『……』
『でも…なんか見覚えあるよなこの子』
言葉を失うサジャにチョルセの言葉は更に追い討ちをかけるものとなった。とうのチョルセ自身は全くそのつもりはないがただその写真の子供はどこかで見た筈だと記憶を辿った。
『ま、アジアの子供はみんな似てるからな…』
と既視感の記憶を一蹴した。
『じゃあ。これ、返したいから彼女を探すよサジャは先に帰っていいよ』
『いや、私から返そう。彼女には退職を勧告したい。今すぐ荷物を纏めて出て行く様に…』
チョルセが手にしたパスケースを奪うと長い廊下を歩き始めた。
『ちぇ、なんだよ…ま、いいや。ファン・スソンなんて調べれば住まいも何もすぐ分かるからな…でもシングルマザーかぁ、ハードル高いかなぁ』
チョルセはサジャと分かれ、1人会社を後にした。
サジャがスソンの部署に辿り着いた時既にスソンは荷物を纏めていた。
『へぇ、ここが君の個室?随分と偉くなったんだな』
『何?ノックもせずに押し入るなんて…奇襲が好きなの?』
驚きもせずに荷物を纏めるスソン
『ふん。あの頃は必死に縋りついてきたのに…今度は逃亡か?』
『………』
『君がどんな手を使ってこの地位を築いたかは興味ないが…君には早急に退職してもらいたい』
『…ええ、そのつもりよ。あなたの手を煩わせるつもりはないわ…見てわからない?荷物を纏めてるの』
『……これ…落とし物だ』
『あ…』
『まだ持ってたんだなこんな安物。本当は金が大好きなくせに』
『……良いでしょ別に…物には罪はないし、元々物持ちが良いだけよ。それに、時計だって…気に入ってるだけで貴方がくれたからとかじゃないから』
『ふん。何だかんだ言って俺を忘れてなかったとか?』
『馬鹿馬鹿しい』
『で?その子供は誰の子だ?』
『な、中身を見たの?』
『見たよ。あの子供は何才なんだ?』
『何でそんな心配するの?あの子は私だけの子供よ。貴方に関係ないわ』
『別れるとき妊娠したと言った。もし産んでたら今度は子をダシにされてもかなわないからな。念の為の確認だ。もし我が子なら引き取りたい。最もあの頃僕の友人達とも付き合っていた不埒な女だ。誰の子かなんてお前自身確信がないだろ?』
『……っっ。吐き気がするわ…あの子は私だけの子。それにファン・ヘテという立派な名前があるのあの子供なんて呼ばないで』
『…金持ちになりそうな男何人もと寝て、僕がイ家の相続者として今の父母に養子に入った事を見越してターゲットにしたんだろ?聞いてるよ…親切な友人が教えてくれたさ…君のサービスは最高だったとね』
『そう。だったらそれで良いじゃない?これ程侮辱される謂れはないわ…もう一刻も早く貴方の前から消えさせて貰えるかしら』
スソンはサジャの手からパスケースを抜き取ると纏めた荷物を手に部屋から出ようとする。
サジャの傍を通り過ぎるスソンの目からは堪えきれずに溢れた涙の粒が流れ出ていた。
鼻腔に届く彼女の香りに思わず手を伸ばしその腕を掴んだ。
『なっ…』
驚き振り向いた彼女は涙に濡れていた
『やめて…なにす…』
暴れるスソンの両手を押さえて抱き寄せた
『ちょっ…』
抵抗し顔を背ける彼女の唇を無理に塞いだ。
涙は終わりを見せず止めどなく流れ落ちていく。サジャは指の腹でそれを拭うが間に合わぬ程だった。
抵抗する気力も失ったスソンは体を離すと唇を拭った
『何の罰なのこれは…もう…お願いだから消えさせて』
今、正に己の衝動で起きた2人の化学反応に呆然とするサジャを置き去りにスソンは静かに会社を後にした。
秋の空は雲が遠く、涙で濡れた頬に風は冷たく触れる
『しっかり!スソン。私はファン・スソンよ何があっても生きていけるわ』
大きな溜息を区切りに、スソンは歩き始めた。
untitled3へつづく