恋という名の…7 | **arcano**・・・秘密ブログ

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韓流、華流ドラマその後二次小説、日本人が書く韓流ドラマ風小説など。オリジナルも少々。
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美しき日々って言うものなのか毎日はキラキラしていた。朝、時間を合わせて駅まで歩く、その道程も色鮮やかだし、学校帰りも駅。バイトがある日の帰りは近くの公園で私を待ってくれる。

『何で笑ってんの?』

要が私を覗き込む。

『嬉しいなって…思って。いつも一緒だし、こうやって…帰れるし』

『………そっか。俺も嬉しいし、このまま送るだけじゃなくてできればうちに連れて帰りたいけど?』

私の言葉に一瞬曇った表情を見せたのを私は見逃さなかった。私の想いがもしかして重たいかなと思って見上げると直ぐ隣であるく要は『ん?』と笑った。
その表情からは何も読み取れなかった。私の心には初めて不安が1つ生まれた。それは半紙に落ちた一滴の墨汁の様にじわりと黒点が滲んでいた。
それを打ち払うように努めて

『うん、私も。要の家に行きたい。』

『来ても良いけどさ、覚悟しろよ』

不敵に笑うけど、どうせ何もない。

『うん…私は…いいよ』

言うのに彼は笑わなかった。
何故だろう。何故彼は私を…奪ってくれないのだろう。。

『あのさ、前はよくお父さんと買い物行ったり、サラが買い物袋下げて帰ってたけど、あれって夕飯はサラが?』

『え?うんそうだよ。お母さんのね、レシピが家にあるの。私のバイブル。大事な物で、お父さんの好みとか書いてるの。それを見て私が作ってたよ…今はもう…作ってないけど』

『じゃあさ、時々、作ってくれない?』

『夕飯?でもお手伝いの人が…』

『いや、高校生になってまでいらないし…誰かがいると毎日帰らないとならないから断ったんだ。』

『ふぅん…作って良いけど…味の保証はないかも』
私を必要としてくれていると、そう思えた。
それからの日々、帰りは一緒に買い物をして、要の家に向かうようになった。
初めて作ったのはリクエストの唐揚げだった。
一度食べて見たかったと感動していたけど…唐揚げをあまり口にした事がないって?と生活レベルが違いすぎていちいち落ち込んだ。
でも、味噌汁が大好きだったり、ポテトサラダが大好きだったりカレーは甘口だったり子供みたいな部分に母性本能が無闇に擽られてしまう毎日が嫌じゃなかったし、むしろより一層愛しいばかりだったし、何だろうごっこかもしれないけど1つの家庭を持った夫婦をしているようで楽しかった。ただ1つ。キス以上一切手を出さない…

『私って…結構アバズレなのかな…』

『は?なんつった?今サラっぺ』

バイト中、気付いたらレジカウンターを整理しながら呟いていた。
袋詰め要員にフォロー入ってる松田龍太が驚いてレジ袋を飛ばし慌てて取りに行く。
『いや、、ほら…なんかちょっと欲求不満かも…私…』

『な、ななな?なんだそれ。お前どした?』

『だってさ…好きなら普通色々…相手に触れたくならない?』

『…ちょっと待て、、お客さんきた!後から休憩の時に話聞くからさ…』

『…うん』

それから休憩時間にお悩み相談タイム
異性の友達はいないし、松田龍太は親友和希の幼馴染みで、他の男子と違って何となく敷居は低い。敷居が低いって言い方は失礼だけど。親しみやすいってほどではない感じ。
和希と私と松田龍太の3人でいる内に私の家のごたごたを知って、なかなか足が家に向かずにいる私に家に帰るのが嫌ならうちでバイトしろと誘ってくれた。奇しくも彼の家のスーパーまつやはまだ父と2人暮らしの頃毎日買い物に来ていたスーパーで、レジ長は小さな頃からスーパーまつやのドンらしく逆らう人はいない。優しい肝っ玉母ちゃんの木村さん。
家庭環境が目まぐるしく変化する中で、何も変わらない場所にどうしようもない安堵があった。

夕方バイト生は本当は貰えないけどまつやのドンがいる時は少しばかりの休憩は必要だと10分休憩をくれる。
その10分で手短にフードコートにしては小さなイートインスペースに腰かけた。当然従業員エプロンは外して。

『で?結局どういう事?触りたいとか触りたくないとか…』

『うん…だからさ、、好きな人がいて…すぐ傍にいて。。私は触れたい。なのにいつも冷静なんだよ…男子って触りたくならないの?』

『……なるに決まってるだろ、、ってか…何それ誰?最近迎えに来るあいつ?』

『え?……うん…え??知ってたんだ』

『まぁ、、見てるからな……あいつ付き合ってる奴?』

『…うん…釣り合わない?』

『釣り合わないっていうか…あの制服さ…立志だろ?超セレブだし…スーパーまつやにそぐわねえから目立ってさ…で、思ったんだけど。俺らの年頃で好きな相手に手が出せないなんてあり得ない。けど、、場合による』

『場合って?』

『めちゃくちゃ大事にしたいとか、実は時間潰しだったとか』

『……え…時間…潰し?』

『だってさ、普通ありえなくね?お前の話を聞く限り家の前で落ちてんの拾った女と付き合うって…もし時間潰しのそれじゃなかったら前者だな。大事な子だから手出しできない。温度差っていうか進むスピード感が違うって…かなり焦るし不安だろうけど、相手に直接聞くか聞けないならもう信じて待つしかないんじゃないか?』

『待つって…2人がどうなるかを?』

『そ。続くか終わるか。ま、不安だから直接は聞けないだろうけどさ』

『な、なんで分かるの?』

『俺は経験者だからな。和希も心配してたぞ…』

松田龍太が急に大人びて見える。

『うん…心配…かけてるね』

『けど、何にしろそいつの気持ちはそいつしか分からないからなちゃんと話して聞いてみろよ』

『えー、、何で手出してこないか?そんなの聞いてアバズレだって思われないかな…』

『あのさ、、そのアバズレって何?意味わかって言ってんの?』

『え?分かってるって?家の人に言われたからそうなのかなって思ってるだけだけど?意味までは…』

『それ言ったの母親?』

首を振る

『あー、、姉ちゃんか……ま、気にするな?お前はちょっとズレてるけど、純粋すぎるだけだ。絶対アバズレなんかじゃないからな。間違っても自分の事そんな風に口にするなよ。なんかあったら話聞くし、わ!休憩終わってる!木村さんに殺されるよ。やべー』

立ち上がると頭をポンと撫でて、持ち場に立ち去った。

『うん………ありがと』

慌てふためき売り場に戻る姿を見送りながら呟いた。

『要。時間…潰しだったら…どうしよ』

やだな。。泣きそうになった。
たまたま拾った隣の家の私。エリートの要からしたらそんな魅力のある箇所が見当たらない。

益々自信を無くしていく。
ふとイートインスペースのガラスの向こうに要の姿が見えた。
真っ直ぐとこちらを見ているようだった。

手を振ると一瞬目を逸らした。確かにこちらを見ていたように見えたのに…

『え…気付かなかったのかな』

わざとじゃないよね。バイトが終わるのが少し怖かった。

バイトが終わり、要がいつも待つまつやの隣の三角公園に急いだ。
遊具はパンダの揺れるやつと滑り台とブランコ。
要はいつもブランコの囲いに腰掛けて待っている。

『ごめん。バイト長引いて』

背中は思い切り拒絶していて、声を掛けるのに勇気を振り絞る。

『ん…』

無言に近い要の無愛想な返事に、不安は堰を切ったように溢れた。

『あの…ごめ…ごめんなさい…』

『サラ?』

『何か…もう待つの嫌なら待たなくて良いから…要の時間無駄に…してるなら…良いから』

『え?ちょ…どうした?』

不安が蓄積されると涙腺は壊れるみたいだ。

『何で泣いて…待つの嫌じゃないし、時間の無駄じゃないし…』

『じゃあさ、、わたしと付き合うのって…時間潰し?』

『は?何それ…何かあったのか?』

『さっき…手振ったのに…無視した…』

『いや、、それはっ…』

要は困った表情をした

『無視したっつうか…じゃあさ、聞くけど…アイツ誰?』

『アイツ?』

『椅子に座って向かい合って喋ってた奴』

『……あ、松田龍太?』

『仲良さげだったからムカついた』

『え?』

『だから!仲良さげに話してたからムカついたの。俺以外の男と喋るな』

『!!』

『とか言いたいくらいだけど言えないだろ。ムカつくから無視したっつうか……』

こちらに向き直ると優しく抱き寄せた 

『ごめん…な』

『………っっう、、』

『泣くなよ、、なんだよ…嫉妬だろ…』

『嫉妬なの?』

『うん…かっこわりーけど。。あーもー、今日ご飯何?』

『…今日?……TKGだよ』

『何それ洒落てるな』

『たまごかけご飯の略TKG』

『は!!何それ』

『いじめるからよ』

『楽しみ〜TKG』

『楽しみなんだ』

『ご飯にかけるのか?』

『……なんか馬鹿らしくなってきた』

無邪気にTKGを楽しみにする要は力強く私の手を掴むと強引に引く。

『さ、はやく帰るぞTKG!』

なんだか煙に巻かれた気もするけど。バイト疲れで悩む力もなかった。