大学病院の医師である久住哲一郎は、停電した深夜の研究室に一人いるところに不気味な足音がひたひたと近づいてくるのを聞きながら、6年前に体験した不思議な出来事の記憶をよみがえらせる。 6年前、久住は結核を患う妻・頼子の転地療養のために、故郷の古民家を改造して移住し、そこに病院を開業した。しかし、その日から謎めいた老婆が頻繁に頼子のもとに現れて、最後には番犬を殺して屋敷に上がり込んで頼子の首をしめてしまう。すんでのところで久住が駆けつけて頼子は一命をとりとめるが、久住はもともと化け物屋敷とも噂されていた自宅とそこに現れる老婆の謎を解き明かそうと決意する、、。
こちらは1958年制作の 日本映画 です。(69分)
以前こちらでもご紹介した 「地獄」 の 中川信夫監督作品で、「地獄」 の2年前に作
られたホラー映画? いえいえ、怪談映画 でございます。
公開当時は2本立て前提として製作された為か、69分 というコンパクトな時間
ですが、その割に凝った作品です。 映画は 現代パー ト と 時代劇パート に別れてい
て、現代パートがモノクロ映像。 時代劇パートがカラーという 「オズの魔法使い」
のような作りになっていて、現代をモノクロにしてある為になんとも言えない廃墟の
空気感や、雰囲気がちゃんと怪談しており、海外のホラーとは違う、現在のジャパニ
ーズホラーにも引き継がれているニュアンスが既に確立されております。
そう考えると、日本のホラーの根源はやはり 怪談なんだな~と、つくづく感じました
時代劇パートは、ほぼセット撮影でございますが、まだ時代劇が多数製作されていた
時代の為か、お屋敷の庭などしっかりとした造りで、屋敷の中は簡素ながらちゃんと
していますし、衣装も豪華です。
大学病院の医師である久住は、結核の妻の療養のために、故郷の古民家を改造して
移住し、そこで病院を開業しますが、妻が度々謎の老婆を見たり、襲われたりした為
に、屋敷の噂を知る和尚を訪ねる事にします。 そこで和尚は その老婆は屋敷に取り
憑いた化け猫の怨霊だと聞かされます。
夫妻の移り住んだ屋敷は、元々大村藩家老の石堂左近将監のものでした。 短気な
性格の将監は、囲碁の勝負がもとで竜胆寺小金吾を殺害して死体を壁に塗りこめて隠
蔽しました。
小金吾が失踪したという知らせを聞いた小金吾の母である 宮路は、小金吾の亡霊を
見ます。 そこで息子が将監に殺されたことを知ります。
宮路は将監に直談判に訪れますが、将監に凌辱されてしまい、家に戻ると自刃し、息
子が可愛がっていた飼い猫に自分の血をすすらせ、将監の家の血筋が絶えるまで呪い
続けるよう言い残し、息絶えます。
宮路の鮮血をすすった猫は怪猫となって将監の屋敷へと向かい将監の老母を殺すと
彼女に化けて屋敷に住む人々を疑心暗鬼に陥れて、遂には将監と将監の息子でまだ結
婚をしていない新之丞を相討ちさせて、将監の血筋を絶やすことに成功します。
しかし、怪猫はまだ本懐を遂げたわけではありませんでした。
将監とともに小金吾の死体を壁に塗りこめた家人の佐平治は怪猫の怨念を免れて子孫
を存続させていたのでした。 その末裔が久住の妻・頼子だと和尚は語ります。 ある嵐
の夜、再び老婆が現われ、頼子を殺そうとします。久住がそこへ駆けつけた瞬間、屋
敷の壁が崩壊して小金吾の白骨死体が現れると久住と頼子はその遺体を弔い、その屋
敷を離れることにします。
この出来事によって大学に戻り、怪猫の祟りは鎮まったかに見えましたが、停電した
深夜の研究室に一人取り残された久住に向かって、不気味な足音が近づき、久住の
いる研究室の前で立ち止まるのでありました、、。
正直、「恐怖」 はあまり私は感じませんでしたが、それは昨今のどぎついサウンドエ
フェクトや、脅かし演出に慣れていたからでしょうね。 それと最も大きかったのが
化けて出る側は誠実な家族、それを将監の機嫌と、不義によって殺された小金吾と母
親の方に感情移入してしまっていた為、亡霊をまるで必殺仕事人のような存在に見て
しまっていた私、、。
その上、ネコの おたま が可愛かったのと、猫耳を付けた老婆も微妙だったので。
光のコントラストや影という演出を最大限に生かした映像は見物ですし、雨の中にた
だただ立ち尽くす老婆の姿は何だかんだ言ってもやはり怖いものであります。
幼い頃に観ていたらトラウマになっていたかも知れなかったと思うと、この歳で観れ
た事が幸運でした。
懐かしさとゾクゾク感 を同時に感じられる作品です。 もし気になった方がおられたら
ご覧になってみて下さいませです。 そして作品を100%楽しみたい方は是非、夜
中に鑑賞するとより楽しめると思いますのでお試し下さいませませです
では、また次回ですよ~!