日本を代表するSF特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、「シン・ゴジラ」の庵野秀明と樋口真嗣のタッグで新たに映画化。

 

 

 

 

 

 

               - シン・ウルトラマン   -  監督 樋口真嗣  脚本 庵野秀明

 

 出演 斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、山本耕史 他

 

こちらは2022年制作の 日本映画 日本 です。(113分)

 

 

 

 

  次々と巨大不明生物「禍威獣(カイジュウ)」があらわれ、その存在が日常となった日本。通常兵器が全く役に立たず、限界を迎えた日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結し、「禍威獣特設対策室」通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。

 

 

 

 

班長に田村君男、作戦立案担当官・神永新二、非粒子物理学者・滝明久、汎用生物学者・船縁由美がメンバーに選ばれ、任務に当たっていた。

 

 

 

 

禍威獣の危機がせまる中、大気圏外から銀色の巨人が突然現れる。その巨人対策のため、禍特対に分析官・浅見弘子が新たに配属され、神永とバディを組むことになる

 

 

 

 

幼心の誘惑に負けてやっぱり劇場へと足を運んでしまいました(笑)ウルトラQは流石に観てはいないんですが、「ウルトラマン」のシリーズは地方という事もあって夕方の再放送などで一応観ている程度で、どちらかといえば等身大の「仮面ライダー」に夢中でした。

 

 

 

 

で今回、マニア向けの小ネタポイントもあると聞き、毎度のT〇UTAYAに走って数話分レンタルにて予習してからの~いざ本番、劇場へ向かったのでありました。平日という事もあってか席はまばらでそこそこ空いていましたよ。

 

 

 

 

鑑賞しての感想としては、巨大な怪獣(ここでは禍威獣というらしい)が建物を破壊して暴れ回り、正義の味方ウルトラマンと戦うという子供心をくすぐる映像が見れるんですから、そりゃ~もう楽しいにきまってるじゃありませんか。

 

 

 

 

そしてこの映画、ウルトラマンが地球に来てから帰るまでの物語をちゃんと最初から最後までが全部乗せ状態というのにちょっと驚きました。そんな構成ですからウルトラマンを知らない人でも話を理解しながら観る事が出来る優しい作りになっています

 

 

 

 

ウルトラQのオープニングに始まり、唐突な「シン・ゴジラ」の文字を破っての「シン・ウルトラマン」のタイトル。ここであの「シン・ゴジラ」の世界観を引きずってね!という製作者側から観客に向けた暗黙のルールが提示されて本編が始まります。

 

 

 

 

冒頭数分、突如日本に禍威獣が出現した件と政府の対処の映像が字幕を追えない速さでサクサクとダイジェスト紹介されるスピード展開、理屈を考える間もなく新たな禍威獣出現の現場に観客は同行させられる羽目になるという処理の仕方はナイスです。

 

 

 

 

で、何故か持ち場を離れて子供を助けに一人向かう禍特対の神永。そこに銀色に輝くウルトラマンが登場しスペシウム光線で禍威獣を退治して空へと去っていきます。その後から子供を抱いて戻ってくる神永というお約束な展開から、謎の銀色の巨人と禍威獣そして人間の科学空想ドラマが進んでいく事になります。

 

 

 

 

面白い事にこの映画は、ほぼテレビシリーズの5話分程のエピソードを驚く程忠実に繋げただけのリメイク作品だという事。脚本を書いた庵野秀明の思い入れのあるエピソードを現在の技術で再現した、ある意味個人的な意欲作と呼べる作品です。

 

 

 

 

その数話分のエピソードを消化する為、人間ドラマはとっても希薄でセリフはほとんど早口の上に状況説明に徹しているだけなのがちょっと残念。そんな事もあって何故ウルトラマンが人間を好きになったのかの理由が謎でした。

 

 

 

 

船縁の巨大化や偽ウルトラマンをやりたいというのは分かるのですが、過去の作品に対してのリスペクトが強すぎて、ウルトラマンはこうでなきゃいけないという製作者側が自分で作った枷によって、少し息苦しさを感じてしまう部分も多々ありました。

 

 

 

 

映画化にあたりウルトラマンの姿をメタリックで細目にしてカラータイマーを無くすという工夫や、声を発しない、身体の色が変化するという新たなアレンジをしつつ、飛んだ瞬間プラスチックになる過去の事情をあえて今作でCGを使って再現し、それをクルクル回して攻撃するというクレイジーさにどっちにしたいのか困惑しました。

 

 

 

 

そんな事もありつつ今作で一番記憶に残るのが「私の好きな言葉です」が口癖の割り勘メフィラス星人とのやり取り、人類や地球を宇宙的な俯瞰から捕えた知的な会話はちょっと哲学的でもあり納得してしまう所もありました。ただその前に登場したザラブ星人と見た目は違えど被るインテリキャラというのもちょっと混同しちゃいます。

 

 

 

 

過去作品を現代風にリメイクした事によって、昔のつじつまを補正する必要があったのか、「シン・ゴジラ」同様日本政府の描写も度々登場します。この場面のやりとりが現在の日本という国の立場を皮肉ったように描かれているのも特徴的ですが、ウルトラマンという世界観にはややノイズになり、リアルと空想のバランスの難しさを感じます。

 

 

 

 

こんな5人だけで禍威獣の対策をやってるの?とも思いますが、俳優陣は概ね好演されていて、ウルトラマン役の斎藤工は良い意味で浮世離れした雰囲気が宇宙人ぽくてはまっております。船縁役の長澤まさみはほぼ主役という位置で、ある種彼女を愛でるような巨大化と謎の尻問題のフェティッシュ映像に溢れています。

 

 

 

 

ゾフィーでなくゾーフィであったり、ネロンガとガボラの同種問題やM87星雲からゼットン問題まで数々のオタク的精神によって作られた「シン・ウルトラマン」ですが、全ての問題はこの映画に何をこちらが期待するかによって大きく賛否が分かれてしまう所はこの種の作品の宿命でもありますね。勿体つける事なく序盤からウルトラマンが姿を見せてくれますが、もっと禍威獣との泥臭い格闘やプロレス合戦が見たかったと思う私なのでした。

 

 

 

 

個人的には過去作を再現しようとするあまり、最終的にその枠に縛られてしまったような不自由さを感じ、新たな物語や自由な爽快感はほぼ味わえなかったのは残念でしたが、ただ完全に自由な作品を作ってしまうとオールドファンからはボコボコにされるでしょうし、この塩梅がとっても難しいというのがこの手の映画の大きなジレンマでしょうね。

 

 

 

 

今回改めて日本の特撮映画を観て思ったのが、禍威獣や外星人達のデザインの美しさとその多様性です。一番驚いたのがザラブ星人のデザインで、元の奇抜さはもとより映画のアレンジとして身体の表面しかないという斬新さは素敵でした。スマートになったメフィラス星人もエヴァ的で美しかったですよ。アメコミなんかのヒーローの数倍オリジナリティがあってエレガントで、それでいてカワイイっていう造形は流石日本って感じで凄かったです。

 

 

 

 

「シン・ゴジラ」に比べてだいぶ低い予算で製作された本作ですが、「シン・帰ってきたウルトラマン」に「シン・ウルトラセブン」という話も有るとか無いとか、この後に続く「シン・仮面ライダー」含め、寅さん亡き後の正月映画としてシン・ユニバースを次々に製作するなんてのも良いかも知れませんね。「シン・マジンガーZ」や「シン・ゴレンジャー」、そして極めつけの「シン・デビルマン」なんて空想するだけで楽しくなります。

 

 

 

 

そうそうオープニングが良かった分、ラストもウルトラマンのテーマ曲でも流してくれればオールオッケーで劇場を後に出来たのですが、最後の最後でここはオマージュじゃないの~!というあの歌、、。そう彼は悪くないんですが、何かこの映画にモヤモヤが残ったのはそのせいかもと思うと残念でなりませんでした。

 

 

 

 

今のCG技術で昔の特撮を再現している違和感と、こういうのがウルトラマンの世界なんだと信じ込む多少の思い出フィルター補正と、心の忖度を観客が共有する必要はあるものの、それなりにちゃんと楽しませてくれつつ考えさせられる本作。なんだかんだ言いながらもこういった映画を作ってくれたその意気込みだけでも感謝なのであります。

 

 

 

 

ちゃんとタイトルに空想特撮映画と記載されている事を理解した上でご覧になれば全く問題のないワクワク作品ですので、その迫力を体験するには劇場の大きなスクリーンと音響で観るのが一番かと思いますので、サービスデーにでもご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~! パー