「カメラを持つ男」の題名で知られている映画で、ソビエト映画界一方の雄たるジガ・ヴェルトフが自己の主張する「キノ・グラアズ」の理論に基づき製作したもの。

 

 

 

 

 

 

     -  CHELOVEK S KINOAPPARATOM  -     監督 脚本 ジガ・ヴェルトフ

 

こちらは1929年制作の ソビエト連邦  映画です。(67分)

 

 

 

 

 

  かなり前からそのタイトル込みで気になっていたこの映画。 公開されたのが1929年ですから今から90年以上も前の作品で、日本では昭和4年という時代になります。

 

 

 

 

 

当時はまだサイレント映画が全盛の頃で、本作自体に音楽は付いていないのですが、オープニングで楽団が映像に合わせて演奏を始めるシーンがあるところを見ると、上映時には生演奏の音楽と共に上映されていたと思われます。

 

 

 

 

 

今回私が観る事が出来たのは、あの映画「ピアノ・レッスン」で有名になった作曲家 マイケル・ナイマンが新たに音楽をつけた2002年版での鑑賞となりました。

 

 

 

 

 

映画は当時のソビエト連邦での人々の生活をただ写したドキュメンタリー映画というだけではなく、映画の新しい技法のモンタージュ、多重露光、クロースアップ、スローモーション、ストップモーションアニメといった斬新で実験的な技法がふんだんに使われたアヴァンギャルドなアートフィルムという側面と、

 

 

 

 

 

カメラを担いだ撮影者自身が映像の中に登場し、様々な被写体を撮影している姿も同時に写されるというある種のメタ構造の形をとった前衛的なつくりになっている作品です

 

 

 

 

 

巨大なカメラの上に登場したカメラマン、映画館は満席になり楽団の演奏と共に映画が上映されます。

 

 

  

 

 

 道端で眠るホームレスの少年、町は静かに眠りからさめようとしています

 

 

  

 

 

 カメラを担いで撮影に出かけていくカメラマン 線路に寝そべって汽車の撮影です

 

 

  

 

 

 ベッドから起き上がる女性 ガーターベルトとブラジャーを身につけて朝が始まりました

 

 

 

 

 

 人の瞬きにブラインドの開閉がシンクロする姿をカメラのレンズが見つめます

 

 

 

 

 

 時には高所へ駆けあがり、飛行機や電車、バスの格納場を撮影

 

 

 

 

 

ベンチで眠る女性を覗き見するカメラのレンズとその奥にあるカメラマンのエッチな視線

 

 

 

 

 

 炭鉱夫と馬 黒い煙を吐き出す工場の煙突 機械の歯車の中で作業する労働者の姿

 

 

 

 

 

 行き交う電車と車と人並み 産業化する町の中にもまだ馬が人と共生している風景

 

 

 

 

 

 ブルジョア家族を並走する車から撮影する危険度マックスなカメラマンの勇姿

 

 

 

 

 

 撮影されたフィルムをハサミでカットして、黙々と映画の編集作業をこなす女性

 

 

 

 

 

 カメラを恥ずかしながら婚姻届を出すカップルと戦争で犠牲になった若者の葬列

 

 

 

 

 

結婚と出産 事故現場で手当てを受ける青年 火災現場へ向かう未来風な消防隊員

 

 

 

 

 

 顔中真っ黒になって働く労働者の女性と、美容室でシャンプーを受けるブルジョア女性

 

 

 

 

 

 タバコを箱に詰める女性の手と、絶え間なく交差する電話交換手の手、手、手

 

 

 

 

 

 狭い空間で働く炭鉱労働者と溶鉱炉が燃え盛る製鉄工場の労働者

 

 

 

 

 

 川の流れを撮影するカメラマンと川の流れのように絶え間なく動き続ける工業機械

 

 

 

 

 

 様々に場所を移動して撮影するカメラマン、そのフィルムをにコラージュした画面

 

 

 

 

 

 休日のビーチへ海水浴に集まる多くの人々、その横で泳ぎ方を習う女性陣

 

 

 

 

 

 様々なスポーツに興じる若者達と、泥パックでお肌のお手入れをする若き女性の姿

 

 

 

 

 

 手品を見てはしゃぐ子供の笑顔と、リボンを着けたちょっとおしゃまな女の子

 

 

 

 

 

 ビールの中に入った小人カメラマンと町に現れた巨人カメラマン

 

 

 

 

 

 バーのスピーカーに映るのは耳と音楽を奏でるピアノの演奏というコラージュ映像

 

 

 

 

 

 画面のカメラはストップモーションアニメで動き出し、多重露光のダンスも映されます

 

 

 

 

 

ラストはこれまでのフィルムがコラージュされた怒涛の映像ラッシュで幕を閉じる本

作。字幕も一切登場せず、映像だけで物語られるという映画本来の凄みを感じます。 

 

 

  

 

 

その当時では斬新だった映画の技法がこれでもかと詰め込まれいる映像作品という側面と同時に、重工業化と農村の集団化という夢の社会主義国家建設のプロパガンダ的な要素も垣間見えてくる

 

 

 

 

 

美しさと不気味さを兼ね備えた映画史に残る映像記録作品となっていますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー