光クラブによる実際の事件をベースとした高木彬光の小説を、村川透が映画化。戦後の混乱期に法の死角を突き完全犯罪を目論む男たちを描く。

 

 

 

 

 

 

         -  白昼の死角  -  監督 村川透  原作 高木彬光

 

 出演 夏木勲、島田陽子、中尾彬、竜崎勝、岸田森、千葉真一、天知茂、長門勇 他

 

こちらは1979年制作の 日本映画 日本 です。(154分)

 

 

  昭和二十三年、東大法学部はじまって以来の秀才と言われた隅田光一が、同級生の鶴岡七郎、九鬼善司、木島良助らと設立した金融会社「太陽クラプ」は世相に巧みに乗じて急成長をとげたが、一年後、隅田が闇金融容疑で検挙されたことから崩壊の道をたどり、隅田は焼身自殺した。

 

 

 

 

隅田を焼きつくす炎を見ていた鶴岡は犯罪者として生まれ変わる決意を胸に秘め、手形金融業「六甲商事」を開き、法の死角と盲点を突いた完全経済犯罪をもくろむ。 一億円の融資を求めている新陽汽船に目をつけた彼は、「日本造船・重役」なるこセ者を仕立てあげ、徹底した演技指導を行う。

 

 

 

 

知りあいのヤクザ太田洋助の輩下30名が税務所員に扮して日本橋のとある会社を訪れ、脱税容疑捜索と称して全員を応接室に閉じこめた。 室内は一瞬にして「日本造船・東京支店」に変わり、そこへ木島が新陽汽船の専務を連れてきて、ニセ木下重役が応接する、、。 鶴岡の綿密な脚本と演出の勝利だった。

 

 

 

 

参考人として、鶴岡は警察に出頭を求められるが、犯人はニセ木下であり、彼は善意の第三者にすぎない。 大手を振って署を出る鶴岡。しかし、東京地検の福永検事は鶴岡にただならぬ犯罪の匂いを感じとるのだった。 次に鶴岡は、大和皮革専務上松に、やはり綿密な脚本と演出で罠を仕掛けた。

 

 

 

 

鮮やかに上松から五千万円を騙し取った鶴岡の次のターゲットは川前工業。しがし、鶴岡のトリックを見破った福永検事は彼を詐欺罪で拘留する。 状況証拠のみで、自分の自白がないかぎり、つかまらないことを知っている鶴岡は福永に不敵な笑いを浮かべるのだったが、、。

 

 

 

 

「狼は生きろ、豚は死ね」のキャッチコピーで散々宣伝された大好きな本作をてっきり角川映画だと思っていた私。 実は角川映画ではなく東映作品で、本作の他 「悪魔が来りて笛を吹く」「魔界転生」の3本は角川春樹が個人で東映の中で製作のみを担当した立派な東映映画という作品です。 宣伝方法が角川映画そのものだったのも一因ですね。

 

 

 

 

東京大学の学生による実際の「光クラブ事件」を発端にした小説を映画化した本作は戦後が色濃く残る昭和の時代に、法の死角、盲点を突いて手形詐欺を繰り返す鶴岡とその仲間の手口と詐欺にあう被害者、事件を追う国家権力の警察、検事の攻防がスリリングに描かれていきます。

 

 

 

 

闇金の太陽クラプが検挙され、首謀者だった隅田は自殺。 残された鶴岡達3人は戦後の国を憂い犯罪として生きる事を誓い、企業相手に巨額の手形詐欺を企てます。

 

 

 

 

まずは小さな金融会社を構え表向きの事務所を設立し獲物を探します。 最初の標的になったのは一億円の融資を求める新陽汽船という会社。 これを騙す為にドサ回りの座長・藤岡琢也を架空会社の重役に仕立て上げるスパルタの演技指導が見ものです。

 

 

 

 

新たな事業開設で知り合った裏社会の太田・千葉真一が、危険でコミカルな演技を見せてくれます。 詐欺会社用エキストラの面接場面には原作者の高木彬光をはじめ、ガッツ石松、佐藤蛾次郎や夏樹陽子など、様々なお顔がのぞけます。

 

 

 

 

本番当日は土曜日を狙い、留守をする社員に国税局の調査と偽って個室に閉じ込めてしまいます。 その隙に社名の看板を変え社員エキストラで架空の会社になりすまします。

 

 

 

 

ここで留守を預かる社員役で西田敏行が登場し、愉快な演技で強い印象を残します。

 

 

 

 

騙される新洋汽船専務で登場するのが、我らが日和警部こと長門勇。 鶴岡の演技指導のかいあって見事に引っ掛かり一億円の手形詐欺にあってしまうのでした。

 

 

 

 

ことが済んだらすぐ撤収、子分の中にも見かけた若かりしお顔が覗きました。

 

 

 

 

約束の3日後、受け取りに来た時には会社は別名で社長はGメン丹波哲郎という悲劇。

 

 

 

 

警察に任意同行を求められ取り調べされますが、巧妙な手口で逃げ切ってしまいます

 

 

 

 

しかし、誰かに雇われた裏の人間に手形を奪われそうになる鶴岡。 その危機を救う千葉真一と、奥に映るビビったチョイ役ヒットマンの正体は若かりし頃の柴田恭兵でした。

 

 

 

 

次に目を付けたのは大和皮革の専務上松。 やはり綿密な脚本と演出で罠を仕掛け、鮮やかに上松から五千万円の手形を騙し取ってしまいます。色仕掛けに弱い佐藤慶。

 

 

 

 

責任を感じた上松は切腹、佐藤慶の自決場面はあの「本陣殺人事件」を連想させます

 

 

 

 

上松の死を知らせに鶴岡の事務所を訪れる大和皮革の社長。なんと角川春樹でした。

 

 

 

 

鶴岡の子供を身ごもったたか子と結婚。 普通に生きる道を諭されますが、自分はこういう犯罪での生き方しか興味がない事を告げられてしまいます。

 

 

 

 

次のターゲットは川前工業。しがし、鶴岡の手形偽造がばれて福永検事は彼を詐欺罪で拘留するのでありました。

 

 

 

 

留置場を訪れた妻たか子と情婦の綾香が鉢合わせ、鶴岡を巡って女同士の熱いバトル

が勃発。 身ごもった子供を流産したたか子は失意から自殺してしまいます。

 

 

 

 

釈放された鶴岡は新たな大仕事に取り掛かります。エルバドル共和国公使館の公使秘書、ゴンザレスを仲間に引き入れ、治外法権の公使館を舞台にした詐欺でした。

 

 

 

 

この打ち合わせのBARではダウン・タウン・ブギウギ・バンドが演奏していましたよ

 

 

 

 

言葉の壁と通訳、公使館というロケーションを利用して計画は無事成功します。

 

 

 

 

しかし、仲間の九鬼が独断で行った詐欺によって鶴岡にも捜査の手が伸びてきます。

 

 

 

 

自身が結核にかかり先のない事を悟った綾香は、九鬼を道連れにガス自殺を図ります

 

 

 

 

検事達の捜査が迫る中、失意と孤独に打ちひしがれた鶴岡は太田の協力のもとで最後の仕事へと取り掛かるのでした、、。

 

 

 

 

ラストではこれまで怖いもの知らずだった鶴岡の悲壮感と良心の呵責が悪夢のように押し寄せる場面が印象的でした。

 

 

 

 

彼に関わった為に消えていった友人や犠牲者の幻影はまるで青沼菊乃を襲撃する犬神姉妹のような白塗り姿でかなりのインパクトがあります。 Gパン金田一までも、、。

 

 

 

 

シリアスな内容ながら時折挟まれるユーモラスな場面、犯罪ではあるのですが人を騙す手口や理屈、法律の抜け道といったロジックの面白さ、「オーシャンシリーズ」を観た時に感じた既視感はこの作品だったんだと改めて実感させられました。

 

 

 

 

中学生頃から何度も観ている作品なのにまた観たくなるのは、そのストーリーの面白さや展開のスピード感、演者の豪華さとその演技と色々ありますが、とにかく主人公鶴岡を演じている夏木勲(夏八木勲)のカッコ良さが最大の魅力という所でしょうか

 

 

 

 

「横溝正史」の金田一と「仁義なき戦い」が交錯する終戦後すぐの混沌とした昭和の独特の世界が隅々まで画面から溢れている、権力に逆らった男と女の怒涛の犯罪ドラマとなっていますので、この機会にでも是非ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

 

予告を再編集してテーマ曲「欲望の街」を乗せてみました。この曲好きなんですよね~ ラブラブ