「パラダイス」3部作などで知られるオーストリアの鬼才ウルリッヒ・ザイドル監督による、野生動物を狩猟するトロフィー・ハンティングに密着したドキュメンタリー

 

 

 

 

 

 

                       -  SAFARI  -  監督 製作 ウルリッヒ・ザイドル

 

 出演 ジェラルディン・アイヒンガー、エバ・ホフマン、マニュエル・アイヒンガー 

 

こちらは2016年制作の オーストリア  映画です。(90分)

 

 

 

 

  野生動物の楽園、アフリカで、ハンターは茂みに身を隠し、息を潜める。風下にいることを確認しながら獲物との距離を詰め、スコープを覗き込み、息を殺す。高鳴る鼓動を感じ、数秒後、乾いた草原に発砲音が鳴り響く。

 

 

 

 

大きな動物が倒れこむ音が聞こえ、仕留めたばかりのキリンが力なく横たわり、ゆっくりと首を振る。その横で歓喜に溢れるハンターたち……。2015年、SNSに投稿された、アメリカ人歯科医師と殺されたばかりのライオンを写した写真が世界を怒り狂わせた。現在アフリカ諸国では獲物の毛皮や頭だけを目的に動物を狩猟するレジャー“トロフィー・ハンティング”が一大観光資源となり、野生動物が合法的に殺されている。

 

 

 

 

ナミビアでハンティングをするドイツとオーストリアからのハンターたちは悪びれることなくハンティングへの情熱を語り、ハンティング・ロッジを経営するオーナーは地域への貢献とビジネスの正当性を主張する。そして、サファリをガイドする原住民たちは黙々と毛皮を剥ぎ、肉を解体する。アフリカの草原で群れをなすインパラ、シマウマ、ヌー、キリンなどの野生動物たち。そうした動物を嬉々として撃ち、狩猟するハンターたち。

 

 

 

 

値段が付けられた野生動物を殺すことを趣味や娯楽とするオーストリア人とドイツ人のグループ、彼らを草原へと案内するナミビアのリゾートホテルのスタッフ、そして彼らが狩猟した動物の毛皮を剥ぎ、余った肉を食べる現地人。そんな人間たちの姿をカメラが肉薄していく。

 

 

 

 

ここに掲載された写真にはトロフィー・ハンティングをより理解していただく為に、実際の映画に使用された画像以外の写真も収められています事をご了承下さい。

 

 

 

 

何かとっても嫌なものを観てしまった気分になるこの映画。 現在のアフリカで行われているトロフィー・ハンティングにスポットを当てたドキュメンタリー映画です。 一切のナレーションも説明もなく、現地でハンティングを行う白人の姿とインタビューが収められています。

 

 

 

 

日本人の私達には聞きなれないトロフィー・ハンティングというもの、これはアフリカや北米で娯楽として行われているハンティングで、広大な私有地の中でお金を払ったハンターが野生動物を狩猟し、仕留めた動物を剥製などの記念品(トロフィー)にして楽しむという遊興狩猟の事をいいます。

 

 

 

 

映画ではハンティングに訪れた家族の狩りの様子や、彼らをサポートするアフリカ人ガイドの様子、今まさに狙いを定めて野生動物を撃つ瞬間の衝撃や、撃たれた動物が息絶えるまでの待ち時間、仕留めた感動に酔うハンター親子の姿、殺した動物の前で抱き合いキスする夫婦、写真映えするように仕留めた動物を見栄えよくセッティングをし、誇らしげに銃を構えた姿でスマホで記念写真を取る姿等が淡々と映されています。

 

 

 

 

その合間にハンティングに訪れた人達へのインタビューが挟まれますが、その彼等達なりのロジック印象的でした。 「管理された中での狩猟は合法的で有益だ、特に発展途上国では人々の収入源になる」「狩猟とは動物を無差別に撃つ訳ではない、年老いた動物には救済でさえある。 繁殖の手助けにさえなる。」 「殺すではなく仕留めると言いたい、殺すは食肉工場がやることよ。殺すと言われることは心外だわ。」 

 

 

 

 

他にも自分の娘に 「今回はヌーを仕留めてもらいたい、それで自信を取り戻して欲しいわ」 と、部活の話をしているかのように願う母親の言葉や、ウィンドショッピングするように、「次はシマウマを狙いたい、毛皮が綺麗だから」「 ヒョウは撃ちたくない綺麗過ぎるから、ライオンは沢山いるから」「好きな銃はマグナムで、憧れの銃は何々でいつか撃ってみたいわ」など、彼等特有の世界観での会話が交わされます。

 

 

 

 

一番ショッキングだったのがキリンまでもその対象になっていた事で、あの巨大で美しい身体が地面に倒れ、娯楽の銃撃によって息絶えていく姿には怒りを越えた憤りを覚えました。 その息絶えた巨体をトラックで運び、見事な手さばきで皮をはぎ、首を折り、内臓を取り出し、肉となってていく姿。 

 

 

 

 

その一連の作業を行うアフリカの地元民とそれをただ眺めている白人の姿。 命を奪った外国人ハンターはそこから綺麗な剥製になったトロフィーだけを受け取り、その肉を口にする事はありません。 ハンターの必要ない動物の肉は、解体をした貧しい地元民が食べることになります。

 

 

 

 

トロフィー・ハンティングという娯楽を通して今の社会構造が描かれている本作ですが、それぞれの文化や考え方に大きな隔たりを感じる作品でもあります。 搾取する側される側、この姿も経済として恩恵に預っている人もいるという現実。 

 

 

 

 

そういう私もお肉を美味しいといって食べている一人ですし、同じ命を家畜と野生動物に線引き出来るかと言われれば何も言えませんが、それでも何かおかしいよねと思ったり理屈抜きにこの映像に嫌悪感を感じてしまうというのも事実で、でもやっぱり、、。

 

 

 

 

最後にここを経営している人物が語る 「闇雲に動物愛護を訴えるがそれは意味がない根本的な問題は人間が多すぎることだ。 我々人間がピラミッドの頂点にいることが間違っている。 何の役にもたっていない、人類が消えたらもっと良い世界になっているだろうね。」 という言葉にある意味同意してしまいましたが、それでも何かやれるはずと、少しの希望を抱いてしまう夢想家の私なのでした。

 

 

 


人間のエゴと残酷さをまざまざと見せつけられる作品で、人によってはかなり精神的にダメージを伴いますが、現実の一部を体験していい意味でも悪い意味でも色々と考えるきっかけになる映画だと思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー