「先生を流産させる会」の内藤瑛亮監督が、実際に起きた複数の少年事件をモチーフに、構想に8年の歳月をかけて自主制作映画として完成させたドラマ。

 

 

 

 

 

 

   -  許された子どもたち  -  監督 内藤瑛亮   脚本 内藤瑛亮 山形哲生

 

 出演  上村侑、黒岩よし、名倉雪乃、三原哲郎、大嶋康太、茂木拓也、住川龍珠 他

 

こちらは2020年制作の 日本映画 日本 です。(131分)

 

 

 

 

  神奈川県日野市に住む中学1年生・市川絆星(キラ)は、同級生の小嶋匠音、松本香弥憂井上緑夢とともに日常的にいじめていた倉持樹を豊川の河川敷で殺害してしまう。絆星ら4人の少年は警察に犯行を自供するが、絆星の母・真理は息子を説得してアリバイを主張させた。 家庭裁判所の審判員は少年たちに「不処分」の判決を下す。

 

 

 

 

樹の父・武彦と母・絵梨夏は、少年たちの責任を問うべく民事訴訟に踏み切ろうとする。一方、事件は「豊川河川敷中一殺害事件」としてセンセーショナルな注目を集め贖罪の機会を失った市川親子は壮絶なバッシングと私刑を受ける。 報道陣から逃れるために一家はアパートの一室へ退避し、自宅の建物は落書きと貼り紙に覆われ、「キャロル」を名乗る動画配信者らによってその模様が拡散された。

 

 

 

 

半年後、千葉県児玉市の中学校に転校して偽名を名乗る絆星は、陰湿ないじめを受けるクラスメイト・櫻井桃子と出会い、割り箸ボーガン作りで交流を深める。 翌日、道徳の授業中に生徒の蓮見春人と宮台莉子によって絆星の正体が明かされ、クラスは騒然となる。 桃子の妨害むなしく春人の手元のスマホから絆星の現住所がネット上に公開され、倉持夫婦が訴状のコピーを市川家に持参する。 夫が夜逃げし、スーパー勤めも解雇された真理は、雑誌に手記の連載を開始するも支持を得られなかった。

 

 

 

 

ある深夜、絆星は真理の目を盗んで家を出ると、桃子とともに鉄道で日野市に戻り、倉持家を訪ねて樹の遺影に線香をあげ、合掌する。 倉持家を辞した後、豊川の河川敷で緑夢と邂逅すると、偽善者として罵り、彼が持参した供花を何度も投げ棄てる。その後、匠音と香弥憂が再び同級生にボーガン絡みのいじめを加えているところを発見すると、桃子の制止を振り切って暴行し、そのまま走り去った。その晩、真理は自宅に入ろうとしたところでキャロルに殴打されて重傷を負い、キャロルは逮捕されるが、。

 

 

 

 

「先生を流産させる会」 の内藤瑛亮監督が、1993年の山形マット死事件、2011年の大津市中2いじめ自殺事件、2015年の川崎市中1男子生徒殺害事件、2016年の東松山都幾川河川敷少年殺害事件等から着想、構想に8年間を費やして自主制作した作品です

 

 

 

 

中学1年生の絆星はグループの弱者だった樹をこれといった理由もないまま殺してしまいます。 その犯罪は直ぐにばれ自供しますが、息子の無罪を信じる母親の説得で否認に転じ、少年審判は無罪に相当する不処分を決定を下します。

 

 

 

 

この不処分の決定が彼等の運命を大きく変える事になり、絆星は法的に罪を償い反省する機会を失い、その家族はネットに晒されどこまでも追い込まれていく羽目になります引っ越しを繰り返しても住所を特定され仕事をクビになる両親。 名前を変えて転校した先の学校でも陰湿なイジメは日常化され、同級生に身元を晒されてしまう絆星。

 

 

 

 

加害者がいつの間にか被害者になっていく展開の恐ろしさや、正義の名のもとに殺人を犯した人間には何をやっても構わないという赤の他人の思考と行動の狂気。

 

 

 

 

絆星が起こした罪を盲目的に否定する愛に満ちた母親、弁護という仕事がら友人を脅して絆星を無罪に導いた弁護士、被害者の意見陳述を無感情でスルーする裁判長、判決に納得がいかないネット民の書き込みやマスコミ、家に凸する迷惑ユーチューバー 転校先のイジメ女子グループと誤った正義の旗を振りかざす優等生など等、、。

 

 

 

 

とにかく映画に登場する多くの人間に共感できる人物がほぼ皆無な作品で、この手の作品に期待する加害者の改心や心の浄化といったお約束は完全に無視された内容になっています。 一応加害者の絆星目線で描かれていますが、彼やその家族が窮地に陥っても全く同情する気持ちにならない、させない突き放した演出がリアルです。

 

 

 

 

現実に起きた未成年による事件の多くはこのようにかなりグレーで曖昧に終息したものがあり、少年法という壁の高さと罪と罰、更生という名の霧の奥深さや、被害者遺族の意思を無視した法律の矛盾等を痛烈に感じさせられます。 

 

 

 

 

映画の最初から最後まで徹底的に不快な気持ちがつづく作品ですが、これが法的にも日常生活に於いても現実である事が一番胸糞な気持ちにさせる意義のある映画である事は間違いない作品です。

 

 

 

 

そんな中でも主人公の絆星を演じる上村侑の存在感と目力は「誰も知らない」の柳楽優弥を彷彿とさせる凄さがあって、加害者ながら魅力的でした。 他の多くの素人出演者も役柄に見事にはまっていて、妙なリアリティを映画に生んでいます。

 

 

 

 

白でも黒でもない 「これが現実」と、突き放されたような気持ちになる本作。 とても気分が悪くなる作品ですが、一切飽きる事なくドキドキ、イライラ、ザワザワしながらも一気に観れてしまう魅力と工夫、メッセージが詰まった作品です。

 

 

 

 

「あなたの子どもが人を殺したらどうしますか?」 の一つの問についての映画になっており、個人的にはとても考えさせられ、同時に映画として楽しめた作品でしたので、機会がありましたら一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー