パソコン画面上でドラマが展開するという新機軸で注目を集めたサスペンススリラー「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー。

 

 

 

 

 

 

           -  Run   -  監督  アニーシュ・チャガンティ 

 

 出演  サラ・ポールソン、キーラ・アレン、パット・ヒーリー、サラ・ソーン 他

 

こちらは2020年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(90分)

 

 

 

 

 

 

  ワシントン州パスコ。ダイアン・シャーマンは一人娘のクロエの面倒を熱心に見ていた。低体重児で出生したこともあって、クロエは複数の病気(糖尿病、不整脈、鉄過剰症など)を抱えており、足の麻痺のために車椅子での生活を余儀なくされていた。そんな状況下でも、クロエはワシントン大学への進学と自立を目指して必死に勉学に励んでいた。

 

 

 

 

 

 

そんなある日、クロエはスーパーの紙袋に入っているクスリが母の名前で処方されていることを知った。クロエは腑に落ちず、クロエはこのトリゴクシンというクスリについてネットで調べようとしたが、ネットとつながらない。ますます不審に思ったクロエは適当に電話をかけ、出た相手にトリゴクシンについて調べてもらった。

 

 

 

 

 

 

親切な人の協力の結果、クロエはトリゴクシンが心臓病の治療薬であり、赤色のカプセル薬だと知った。しかし、ダイアンが飲ませるのは緑色のカプセル薬だった。 ここに至り、クロエは「ママは自分に何かを隠している」と確信し、緑色のカプセル薬が何か突き止めるべく薬局へと向かったが、そこで明らかになったのは恐ろしい真実であった、、。

 

 

 

 

 

 

ストーリーの全てがパソコンの画面上で展開されるという斬新さが話題になった映画 「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督の2作目となる本作ですから 嫌でも期待してしまいます。お話自体は前作と打って変わって結構王道な内容ですが、今回もその手腕によってゾクゾクさせてくれるスリラー映画に仕上がっておりました。

 

 

 

 

 

 

未熟児を産んだダイアンの出産場面から始まり、不整脈、血色粗鬆、喘息、糖尿病、麻痺という複数の病気を抱えてしまった車椅子生活のクロエ。 彼女の困難な日常と大量の薬を飲むルーティーンの日々を短い映像だけで説明して見せるオープニングは流石です。

 

 

 

 

 

 

クロエの身体の為に食事や血糖値と様々な管理をするダイアン、病気に向き合う親子の信頼関係が描かれます。 そんな中でもクロエは理系の大学を受験し、大学からの通知が来るのを日々待つ彼女。 郵便配達が来るたび受け取りに出ようとしますが、毎回受け取るのはダイアンで、時には玄関に車を乗り捨ててまで受け取る母親の姿にこちらは違和感を覚え始めます

 

 

 

 

 

 

その違和感が疑念に代わるのがスーパーの買い物袋をクロエが覗いた瞬間です。 彼女が飲まされていた緑の薬がダイアンの名前で処方された薬である事を見てしまうのです。 いったいこの薬は何なのか? スマホを持たされていない彼女は母親のパソコンで調べようとしますがネットに繋がらず、今度は電話で調べますが、緑の錠剤の正体は分からずじまいです。

 

 

 

 

 

 

遂には映画を観たいという口実を作って母親と町へ出ます。 上映中トイレに行くふりをして劇場を出て近所の薬局へ向かうクロエ。 何かと理由をつけて調べてもらった緑の錠剤の正体に驚愕するその瞬間が個人的にはピークでありましたが、 そこからは何故そんな事をしたのかという母親の狂気と、それに抵抗するクロエとの攻防戦が繰り広げられていきます。

 

 

 

 

 

 

謎の薬を見つけた瞬間のザワザワに始まり、パソコンが繋がっていない不安感、母親が庭仕事をしている隙に見つからないように電話をかけるドキドキ感、疑念から徐々に確信へと恐怖が増幅していくスリルはなかなかの快感があります。  善意の塊である郵便配達のトムの安否が最後まで気になる所ではありますが、、。

 

 

 

 

 

 

そしてクロエが自分の置かれた状況を理解してからの行動力もなかなか見事で、遂に部屋に閉じ込められた彼女が車椅子に頼らず身体一つで脱出を試みる場面には、こちらにも力が入ってしまう程のドキドキアクションでした。 理系という設定もちゃんと生きてましたね。 車椅子で自由が利かない身体と、家という閉鎖された空間を生かした中盤まではワクワクしました。

 

 

 

 

 

 

ただ家を出てしまった後半からは普通のスリラー映画っぽくなってしまったのがちょっと残念。 せっかくシチュエーションスリラー的な母親との駆け引きの密室劇に、警官や拳銃という直接的な武器による解決は頂けません。 最後ライトを照らしたパトカーが家を囲み、救出された主人公が毛布を羽織った姿でエンド、という散々観せられたエンディングになるのか、、。

 

 

 

 

 

 

と思ったらここで驚愕の不気味なエンディングが待ち受けていました。 劇中、母親のダイアンも虐待にあっていたような描写もあり、家族への愛情の渇望ゆえに歪んでしまった子供への愛。 その犠牲者が犠牲者を生み、ついにはクロエまでもが、、という因果応報のループが繰り返される恐ろしいエンディングでありました。

 

 

 

 

 

 

このクロエを演じているキーラ・アレンは実生活でも車椅子生活を送っているそうで、その演技力には驚きます。 そのクロエの母親サラ・ポールソン演じるダイアンですが、実は映画の最初からあまりキャラクターが変化していないのがちょっと残念で、前半では明るく優しい甘甘な母親だったら落差があって狂気が引き立ったように感じてしまいました。 何かずっとお顔も雰囲気も怖かったんですよね、、。

 

 

 

 

 

 

ちょっと「ミザリー」を彷彿とさせる設定ですが、クロエが訪れた薬局で彼女の対応をする薬剤師の女性の名前がキャシー・ベイツというのも監督の遊び心とリスペクトを感じます。

 

 

 

 

 

 

愛情にしがみつきたい母親と、そんな状況と自身のハンデすらからも自立、RUN したい娘が織りなすサイコ親子バトル映画です。 不気味なエンディングですが、ある意味生きる為にお互いに依存しているようにもとれる狂気性がゾクゾクする作品ですので、機会がありましたらご覧になってみて下さい、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー