デンマークの農村を舞台に、体の不自由な叔父と一緒に家畜の世話をして生きてきた女性に訪れる人生の転機を、時にユーモアを交えながら美しい映像で描いたヒューマンドラマ

 

 

 

 

 

 

            -  ONKEL  -  監督 脚本 フラレ・ピーダセン 

 

 出演 イェデ・スナゴー 、ペーダ・ハンセン・テューセン 、

                         オーレ・キャスパセン 他

 

こちらは2019年制作の デンマーク映画  です。(106分)

 

 

 

 

 

  幼い頃に家族を亡くしたクリスは、デンマーク・ユトランド半島の静かで美しい農村で叔父と暮らしてきた。27歳となった今では、早朝に起床し、足の不自由な叔父さんの世話と家業の酪農の仕事をして、夕食後にコーヒーを淹れてくつろぎ、週に一度買い物に出かける日々を過ごしていた。

 

 

 

 

そんな決まりきった毎日を送る中、クリスはある出来事をきっかけに、かつて抱いていた獣医になる夢を思い出す。さらに教会で出会った青年マイクからデートに誘われ次々と変化が訪れ、戸惑いながらも胸がときめいていく。姪が将来の夢や恋に葛藤していることに気付いた叔父は、彼女の背中をそっと押すが、、

 

 

 

 

第32回東京国際映画祭で東京グランプリを受賞!と、DVDのジャケットにありましたがそれが果たして栄誉なもので作品のプラスの材料になるのか疑問ではありますが過去の受賞作を見たら意外に私の好きな作品も何本か受賞していたのにビックリ。 知名度はいまひとつですが、一応良識のある賞のようでございます。

 

 

 

 

物語はデンマークのユトランド半島の静かな農村で体の不自由な叔父の面倒を診ながら農業を営むクリスの生活が淡々と描かれ行きます。 映画が始まって10分程は微かな生活音が聞こえるだけのほぼ無音状態。 27歳の主人公クリスがベッドから起き上がり簡単な身支度を済ませ、まだ寝ている叔父の部屋のカーテンを開ける。 

 

 

 

 

叔父の着替えを手伝い、二人で質素な朝食を食事をとる。 牛舎で牛の世話をして昼食、叔父を休ませている間にもクリスはトラクターで牛舎の整備。 仕事が片付くと二人で車に乗ってスーパーへ買い出しに出かける。 夜にはコーヒーを飲みながらボードゲームでくつろぎの時間を過ごす。 

 

 

 

 

この間二人に会話はほとんどありませんが、おそらくこの二人が長い時間を過ごして来た中で出来た無駄のないルーティンのような生活なのでしょう。 変化のない日々の中にも互いに見える小さな気遣い。

 

 

 

 

そんなある日、逆子の牛の出産で獣医を呼んだ事からクリスの生活に変化が訪れます家庭の事情で獣医になる事を諦めていた夢、墓参りの教会で出会った聖歌隊のマイクとの淡い恋。 徐々に開けていくクリスの世界。 叔父はそんな彼女を後押ししようとしますが、クリスは叔父との静かな生活から踏み出す事を恐れているかのようです。

 

 

 

 

その原因は彼女の過去にありました。 弟と共に父親に引き取られたクリスでしたが弟は自殺、後を追うように父親も自殺してしまい、身寄りのない彼女を引き取ったのが叔父だったのです。 それから12年の間叔父との生活を続けて来たクリスには唯一の肉親である叔父だけが心の拠り所であり、これ以上失いたくない大切な存在になっていたのです。

 

 

 

 

全ては好転していくように思えましたが、クリスは自分なりの決断をして映画は終わりを迎えます。 観ている方は明るい上辺だけのハッピーエンドを期待しますが、クリスの立場になった時にはこれがハッピーエンドの決断なのかも知れません。

 

 

 

 

物語だけを見ると暗そうに思えますが、かなりユーモラスなシーンも多い作品です。 クリスに彼氏が出来たと思った叔父が、気を利かせてショッピングセンターでヘアアイロンを必需品だと言って買う場面や、初デートにちゃっかり付いていきマイクを慌てさせる場面、その3人が並んでで映画を観ている場面等、クスっと笑える瞬間がいくつもあります。

 

 

 

 

長い事使っていなかったマスカラを水で溶いて使ったり、叔父に注文しながら髪を切ってもらう場面、クリスが気づかないように焦げたパンをこっそり食べる場面といった細かな日常の積み重ねの描写が映画にリアリティを生み出しています。 この主人公を演じている二人が実の叔父と娘というのも驚きで、農場も実際の叔父のものだとか、、。

 

 

 

 

二人で食事をする場面では常にテレビが点けられ、北朝鮮のミサイルや地中海の難民といった世界の情勢を伝えるニュースが流れています。 関わっていないようで関わっている外の世界。 それがより二人だけの孤立した小さな世界を強調します。 

 

 

 

 

しかし映画のラストでは遂にそのテレビが故障して、二人の会話の間を埋めていた存在が消えてしまいます。 そこで初めてクリスは叔父に何かを話しかけようとしますが、このタイミングでエンドクレジットが表示され、その後の会話の行方は観客それぞれに委ねられます。

 

 

 

 

静かな視点と少ないセリフで淡々とした日常が描かれている作品ですが、細かな仕草や微かな視線の動きでこちらに訴えかけてくる映画です。 大きな自然の中で暮らす日々の積み重ねの大事さと人間の絆の重さ、夢と介護、他人では測れない大切なものの意味をじっくりと考えさせられるような映画でした。 

 

 

 

 

決してエンターテインメントな映画ではありませんが、ちょっと足を止めて少し自分の事を考えてみる機会になるようなそんな作品ですので、興味がある方はごらんになってみてはいかがでしょうか、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー