パリで暮らす31歳の女性ポーラは、10年付き合った恋人に捨てられてしまう。 お金も家も仕事もない彼女は途方に暮れ、恋人の飼い猫ムチャチャを盗み出す。 猫を連れてきたことで居候先の友人宅からも安宿からも追い出され、実家に戻ろうとしても母親から拒絶されてしまうポーラ。 やがて住み込みのベビーシッターのバイトを見つけるが、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2017年制作の フランス映画 フランス です。 (97分)

 

フランスの女性監督 レアノール・セライユ による本作は、現在のパリで孤独に生きる

 

事になったポーラのシニカルでコミカルな生活を綴ったドラマです。

 

  予告を観て気になったのでレンタルしてみた本作ですが、オープニングから私の

 

抱いていたイメージとはかなりの温度差のある始まりでした。

 

「開けて!」とドアを叩きながら叫ぶ女性。 その女性ポーラがおでこに大きな絆創膏

 

を貼って自分を捨てた恋人への恨みを画面越しのこちらにまくし立てます。「パリも

 

フランスも大嫌い!」そう言い放つポーラの姿は、やや病み気味のヒステリー状態で

 

す。どうやら彼女は10年付き合った彼氏に部屋を追い出されたようです。 彼氏のネ

 

コをダンボールに入れてパリを彷徨うポーラ。 友人の家に泊めてもらおうとするも、

 

妊娠中でネコが一緒という理由で断られ、安ホテルへ逃げ込みます。 手元の物をリサ

 

イクルショップに売り、行くあても仕事も無いポーラはとりあえずのバイトを探す事

 

にします。  札束

 

 

 

 

そんな時、偶然町で疎遠の母親に出会いますが、勝手に家を飛び出した彼女は冷たく

 

あしらわれてしまいます。 そんな中、なんとか住み込みのベビーシッターと、下着

 

売り場のバイトを見つけて、寝床は確保したポーラでありますが、、というドラマで

 

す。今まで当たり前にあったものが、ある日突然なくなり、一気に世界がひっくり返

 

ったように自分が自分でなくなったような感覚。 どこへ行けばいいのかも、何をすれ

 

ばいいのかも分からない浮遊感と孤独感。 でも時間は止まってはくれない現実。 生き

 

ていく為には何か行動をしないと、、。 でも、こんな時に頼れるはずの家族とも絶縁

 

状態、そして気付けば31歳という微妙なお年頃。 この現実に、ついつい苛立ちや虚

 

しさが増していく。

 

 

 

 

夢見る年齢でない事ぐらい、重々承知しているのだけれど、、というポーラの気持ち

 

は病み系女子には痛い程分かるかもしれません。 ただこのポーラ、なかなかパワフル

 

な生命力の持ち主。 止まる事なく突き進むのです。 そんな行動力がちょっとうらやま

 

しかったりもしてしまうヒロインです。 その反面で時折、妙に遠くを見つめるような

 

淋し気な表情を浮かべたりするのは、女性特有のノスタルジーを見ているからなのか

 

本作の原題のままのタイトル「若い女」は、ポーラの実年齢とのギャップを皮肉って

 

いるようにも思えます。 それは劇中の彼女の映し方にも表れています。 もう少し綺麗

 

に撮ろうと思えば撮れるでしょうに、多くの場面でノーメイク。 それもかなりアップ

 

で撮られています。 同じように年齢相応で絶妙なボディラインがかなり強調されてい

 

ます。 この圧倒的な年齢を感じさせる身体の存在感が、嫌でも現実世界とポーラの距

 

離を見せつけます。 それが時折美しく見えたりもするのですがね。  キラキラ

 

 


 

劇中、心配する女医に、「話す人はいる?」と聞かれたポーラは、「いる 話す人なら

 

たくさんいる。今もこうやって話してる。このまま続ければあなたの話も聞けるは

 

ず」 と答える場面が印象に残りました。 こんなポジティブに生きれたらどんなに良

 

いか、、。拒絶された母親の家に侵入して、無理矢理関係を修復しようとする場面。

 

 階段の手すりにしがみつくポーラの姿が可笑しくもあり、切なくもあり、人生の機微

 

を象徴しているようなシーンでした。見方によってはコメディで、見方によってはシ

 

リアスにも観れるポーラの人生。微妙な年齢に差し掛かった一人のこじらせ女性が、

 

「生きる理由」を探して漂うお話です独特な美しさのある映像と街並み、良いアクセ

 

ントのネコちゃんも見物です。 オッドアイ猫

 

サラッと観るも良し、人生を考えるヒントにするにも良し、観るタイミングによって

 

様々に感じられる映画だと思いますので (特に同性の女性には) 機会があれば一度ご

 

覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー