自動車修理に立ち寄った親子が狂犬病にかかった一匹の犬に襲われるホラー映画。

 

1981年に発表されたスティーヴン・キングの長編小説 「クージョ」 の映画化

 

 

 

 

 

 

    -  CUJO  - 監督 ルイス・ティーグ 原作 スティーヴン・キング

 

 出演 ディー・ウォレス、ダニー・ピンタウロ、ダニエル・ヒュー・ケリー 他

 

こちらは1983年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(93分)

 

 

 

 

 

  メイン州の海辺の町キャッスル・ロック。兎を追いかけていたセントバーナード犬のクジョーが、コオモリにかまれ狂犬病にかかる。 ドナとヴィックのトレントン夫妻の一人息子タッドが夜中に押し入れにモンスターがいるとおびえる。 両親はなだめるが、タッドの恐怖心は解消されなかった。ある日、ヴィックは車が故障したので、妻子をつれてジョーの修理工場へ行く。 ジョーの飼犬が、あのクジョーだった。 

 

 

 

 

ドナは夫と息子が出かけた昼間の空虚な時間に耐えきれず、いつしかスティーヴと浮気を重ねていた。妻の情事を知ったヴィックは、うつろな気持ちで出張に出かけていく。 狂犬病にかかったクジョーはジョーの友人ゲイリーを襲ってかみ殺し、尋ねて来たジョーも同じく惨殺する。 ドナは車がまた故障したのでタッドをつれて、ジョーのところへ向かう

 

 

 

 

途中、何度もエンストを起こした車は、遂にジョーの家の納屋の前で動かなくなってしまった。 車から出ようとしたドナに、クジョーが襲いかかる。 必死でクラクションを鳴らすが、聞こえる距離には誰もいない。 一夜が明け、朝が来た。 強い陽ざしに照らされ、熱せられた車内では、脅えたタッドが脱水症状を起こした。 

 

 

 

 

ボストンから自宅に電話をしたヴィックは応答がない事を不安に思い自宅へと戻るが車がない。もしやジョーのところでは?と考えたヴィックは警察に通報しパトカーが向かった。 何も知らない警官は、クジョーに襲われて死亡する。 残されたドナはタッドを救う為、車のドアを開ける決意をするが、、。

 

 

 

 

以前こちらで紹介した「VS狂犬」にとってもよく似た設定の動物ホラー映画でございます。 実は本作をリアルタイムの劇場で鑑賞した私。 当時は2本立てが主流で、当然こちらはオマケとして上映されていたのですが、メインで観に行った作品が何だったのかはもう忘れてしまい、遥か遠い記憶となっております。

 

 

 

 

自動車修理工の家に飼われていた巨大なセントバーナードのクジョ―がコウモリに噛まれた事で狂犬病を発症し、主人と隣人を噛み殺してしまいます。 そこに車の修理を頼みに訪れた母子がクジョ―に襲われるというある種のソリッドシチュエーションの本作ですが、この原作があのスティーヴン・キングという所が一番興味を惹く所です。

 

 

 

 

この舞台となっているのがメイン州キャッスル・ロック、あの 「スタンド・バイ・ミー」 等、他の物語にも多く登場する町であったりと、キング作品とのリンクも多く感じられ、部屋の押し入れにいる怪物を怖がるタッドや魔除けの呪文等、キングらしさが溢れています

 

 

 

 

母親のドナと息子タッドがドライブ中に車が不調になり、以前訪れた町外れの修理工場へと向かいます。 ガソリンも底を突く寸前でエンジンも止まりそうというギリギリセーフの状態で辿り着いた工場でしたが、車を降りて声を掛けても全く反応がありません。 タッドの様子をみに車へ戻った瞬間、狂犬病に感染したクジョ―が襲ってきます。

 

 

 

 

パニックになりながらもなんとか車のドアを閉めて難を逃れますが、車の窓を執拗に攻撃してくるクジョ―。 この窓に付いた泥やよだれの痕が生々しい怖さを演出しています。攻撃は一旦は落ち着くものの、クジョ―はすぐ傍の庭先でずっと車の様子を伺っています。 その身体は泥で汚れ、顔は目ヤニが溢れて、口からはよだれがしたたっているという状態から、一見して病気である事が分かります。 

 

 

 

 

外には狂犬病にかかった凶暴な犬、車は動かない上に外は炎天下、水筒には僅かな水しか残っておらず、幼い息子はパニックになって熱中症による脱水症状でどんどん衰弱していきます。 夫は出張中で、助けてくれる誰かが奇跡的に訪ねてくるのかも分からないという圧倒的な絶望の数日間の戦いが描かれています。

 

 

 

 

炎天下の車内と、決して広くはない修理工という限定された空間の狭さが緊張感を持続させ、襲ってくるクジョ―の恐怖と車内の息子が上げる本物の金切り声が相乗効果になって、観ているこちらの神経もピリピリさせられてしまいます。

 

 

 

 

ただこの修理工に至るまでのドラマがやや長めで、この妻が不倫しているという件が今一つ後半のホラーに効果的に結びついていないように感じました。 旦那さんも家族思いの良き夫なんですよね。 不倫の代償がクジョ―なのか? 

 

 

 

 

育児放棄してる母親ならまだこの一件で母性が、というなら多少は分かりますし、ラストも冷めた夫婦関係だった旦那に助けられて再び絆を確信するという展開なら理解出来たんですけどね、、。ちょっとクジョ―以外のドラマ部分に謎が残る脚本ではありました。 小説ではあのトラウマ映画の「ミスト」並のエンディングになっているようですが、流石に変更したそうです。(笑)

 

 

 

 

コウモリに噛まれたクジョ―が、まず音に敏感になり徐々に狂犬に変化していく過程はなかなかリアルでした。 これをちゃんと演じているセントバーナードの演技力がお見事で、今作でもほぼ本物のワンコが演じています。 頭部の一部に人形を使っているようですが、ほとんど見分けがつかない仕上がりです。

 

 

 

 

泥でカピカピになった毛並みや、お顔のきちゃなメイクの汚れ具合も巧みで、女優さんのように本番前、メイクさんに鏡の前でメイクされている姿を想像してしまった私。 オーケーが出た後にちゃんとシャンプーしてもらってたんでしょうか? そう思える程しっかりした演技をしていたワンコでしたよ。

 

 

 

 

主人公の母親ドナを演じるディー・ウォレスは前年の 「E・T」 でエリオット少年の母親を演じた女優さんで、今作でも息子を守る強い母親を演じています。 他にも後にキアヌ・リーヴス主演の「スピード」で監督となるヤン・デ・ボンが撮影監督として参加しています。

 

 

 

 

「VS狂犬」とは違いスティーヴン・キング原作ものとして、よりエンターテインメントのホラー映画に振り切った作品になっている為、動物好きな方が観ても痛々しさはさほど感じない演出になっていると思いますし、シチュエーションスリラーものとして楽しめる作品に仕上がっていると思います。

 

 

 

 

 

スティーヴン・キングの映画化作品としては見落とされがちな小品ではありますが、超常現象ではないシンプルでリアルな絶望的な恐怖と、存在感のあるクジョ―の画力のインパクトは他の作品では観れない魅力に溢れていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー