マルコ・デネヴィの短編小説を、ジョージ・タボリが脚色、「できごと」のジョセ

 

フ・ロージーの監督によるサスペンス・ドラマ。

 

 

 

 

 

 

       -  SECRET CEREMONY  - 監督  ジョセフ・ロージー

 

  出演 エリザベス・テイラー、ミア・ファロー、ロバート・ミッチャム 他 

 

こちらは1968年制作の イギリス イギリス アメリカ アメリカ の合作映画です。(110分)

 

 

 

 

 

  レオノーラは、中年の娼婦。 自分の不注意から最愛の娘を死なせたショックから立ち直れず、ロンドンの安アパートで、無気力な日々を送っていた。 そんな時、レオノーラは不思議な少女、チェンチに会った。 チェンチは、レオノーラを、“マミー”と呼び、自分の宏壮な邸へと、案内するのだった。 

 

 

 

 

そこでレオノーラは、チェンチの亡き母が、レオノーラにそっくりだったことを知る。 つきまとい甘えるチェンチに、いつしかレオノーラも、彼女に愛情を感じるようになった。 請われるままチェンチと暮らすようになったレオノーラは、チェンチの伯母たち、ヒルダとハンナから、チェンチの義父で、身持ちの悪いアルバートの存在を聞いた。 

 

 

 

 

ある日、レオノーラの留守に邸宅にアルバートが現れ、チェンチに卑猥なことをしゃべり帰っていった。 アルバートが帰った後、チェンチは興奮し、戻って来たレオノーラに、まるで自分が暴行されたかのようにふるまうのだった。 

 

 

 

 

それからしばらくして、レオノーラとチェンチは、休暇を、海岸で過ごすことになった。 そこでも、チェンチは、服の下に人形を入れ、妊娠したようにふるまうのだった。 チェンチの芝居を見破ったレオノーラは、彼女の真意が分からず、不安にかられた。

 

 

 

 

ある夜、レオノーラは、海岸で抱き合う2人連れを見たが、彼女にはそれが、チェンチと、アルバートのように思えるのだった。ロンドンに行ってから、チェンチの態度は変わり、ついにレオノーラを、邸から追い出すのだったが、、。

 

 

 

 

エリザベス・テイラーとミア・ファローの共演によるサスペンスという本作。 T〇UTAYAの発掘良品で見つけて早速レンタルしてみました。 あまり馴染みそうにないこの二人に共演作があった事も驚きでしたが、製作が68年という時代の為、ちょっとなめていた所もあった分、その内容の面白さに良い意味で驚きました。

 

 

 

 

一人暮らしの薄暗いアパート。娼婦のレオノーラが商売道具のブロンドのウィッグを外す場面から始まる本作。 自身の不注意から最愛の娘を死なせてしまい心に大きな傷を負っている彼女は、娘の墓参りに出掛ける為にバスに乗ります。

 

 

 

 

すると同じバスに乗っていたチェンチという女性が彼女に近づき、レオノーラを「マミー」と呼びながら涙を流します。 レオノーラはバスを降り娘の墓へ向かいますが、彼女はレオノーラの後を付いてきます。 チェンチの瞳の中に娘の面影を見た彼女は、誘われるままにチェンチの住む邸宅へと招き入れられます。

 

 

 

 

邸宅の中にある写真を見たレオノーラはそこに自分そっくりの人物を見つけます。それはチェンチの亡くなった母親の姿でした。 「マミー」と呼ぶチェンチの言葉を最初は否定しますが、彼女のレオノーラに対する態度や豪華な屋敷のインテリア、母親が身に着ていたであろう高価なドレスを見るうちにチェンチの母親を演じ始めます。

 

 

 

 

 

最初は面白半分で始めた母親のふりだったものが、演じる快感と二人で居るスリルにいつしか魅せられていくレオノーラ。 娘を亡くした彼女と母親を亡くしたチェンチの互いがその傷を埋め合うような存在になり、「ごっこ」だった関係がいつしか二人だけの奇妙な疑似親子のような関係へと変化していくのです。

 

 

 

 

冒頭ではチェンチという娘の奇妙さに目を引かれますが、徐々に母親を演じ始めるレオノーラの存在にも深い闇を感じてしまいます。 母親の死によって心が病み、精神が幼児化したチェンチとレオノーラの満たされない母性。 この歪みつつも始まった女二人の生活に、突如不気味な義父のアルバートが屋敷に訪れた事で、その歪んだ生活がより加速度を増してねじれ破滅していく事になります。

 

 

 

 

この作品には様々なインモラルなものや言葉が多く登場します。 主人公が娼婦というのは勿論ですが、彼女とチェンチが女性同士でお風呂へ入ってマッサージする姿にはレズビアンを匂わせますし、会話は時折赤裸々な性的内容が語られます。

 

 

 

 

彼女達をかき乱す義父のアルバートはチェンチを狙っている近親相姦上等のロリコンゲス男ですし、叔母の二人はたまに屋敷に訪れては、チェンチの目が離れた隙に物を盗んでいくといういやらしさ。 ここに出てくる人物全てが何処かおかしな部分を持ち合わせている人間ばかりという病映画です。 

 

 

 

 

この二人が暮らす邸宅の豪華でありながら閉塞的な空間が見事で、リビングから書斎、ベッドルームとクラシカルで統一された舞台が二人の女性の異様さをより強調しています。 なかでもチェンチを演じるミア・ファローの幼児的なロリータ演技が凄まじく、誰も居ない部屋で椅子に向かって話しかけている不気味な姿や、靴下を片方だけはいた姿でダンスしながら部屋を散らかす場面等、その狂気っぷりは「ローズマリー」を凌ぐ程です

 

 

 

 

それに負けないエリザベス・テイラーの貫禄っぷりも見事で、チェンチに出された食事を貪るように食べてからのゲップ披露や、年齢的にもぽっちゃりした体型をアルバートに「太ったブタ」と罵られる場面での堂々とした返し等、美人女優からの見事なまでの脱却と母性を感じさせる演技にはただただ魅せられてしまいます。 そんな二人の演技によって、最後まで不気味な緊張感が漂う作品になっています。

 

 

 

 

そして、ラストのある出来事によって二人の関係は破綻するのですが、立場が変化し最後に二人で会話をする場面のスリリングさはたまりません。 背もたれの大きな椅子に座るチェンチの表情と、それに気付かないで喋るレオノーラの対比は、ゾクゾクする程の緊張感が漂いながら、同時にとても切ない気持ちになるという名場面になっていました。

 

 

 

 

映画の内容に反して二人の衣装が素敵なのも本作の見所です。 そろって黒装束の衣装から始まり、エリザベス・テイラーは優美で鮮やかなドレス姿、ミア・ファローは白を基本としたロリータ風な装いと、個性が分かれた衣装の数々は見ているだけで楽しくなる程で、それを身に着けたミアの可愛さは年齢を忘れる程の魅力と痛さに溢れています。 海辺に表れる場面でのロバート・ミッチャムもやたらとカッコよかったですが、、。

 

 


 

かなり変則的な形で、歪んだ家族という存在の意味を描いた作品で、埋められない愛の損失と崩壊によってもろくも崩れる人間の儚さと同時に、人間の醜さや女性の立場から見た性の恐怖が様々なメタファーによって描かれた作品となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー