「007/ジェームズ・ボンド」シリーズの第25作目。主演のダニエル・クレイグが架空の英国MI6諜報員であるジェームズ・ボンドを演じるのは5回目であり、本作がクレイグの演じる最後のボンド映画になると語っている

 

 

 

 

 

 

    -  NO TIME TO DIE  -  監督 キャリー・ジョージ・フクナガ  

 

 出演 ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、ラシャーナ・リンチ 

 

 こちらは2021年制作の アメリカ アメリカ イギリス イギリス の合作映画です(163分)

 

 

 

 

  子供時代のマドレーヌ・スワンは、「スペクター」傘下のミスター・ホワイトにより、家族を殺害されたリュートシファー・サフィンによる母親の殺害の瞬間を目撃する。その後スワンと銃撃戦となりサフィンは階段から落下し気絶する。彼女は家から彼を引きずり出すも途中で目を覚ましてしまい凍った湖の方向に逃走するが落下してしまう。そしてサフィンは彼女を救ったのだった。

 

 

 

 

スペクターとの戦いのその後。現役を退いたボンドとスワンはイタリア・マテーラにて幸せに静かな生活を送っていた。スワンは後に自らの過去を明かそうとし、ボンドはかつて愛したヴェスパー・リンドの墓を訪れるもスペクターの紋章が描かれた一枚の紙を見つけるがその直後に墓が爆発する。

 

 

 

 

ボンドはスペクターの傭兵のプリモからの攻撃から逃れ、スワンを問い詰めながら二人で車で逃走しスペクターからの追跡者たちを打ち負かす。その後ボンドは彼女が裏切ったと思いスワンと決別する。

 

 

 

 

5年後。ボンドはジャマイカで穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、彼のもとに旧友でもあるCIAエージェントのフェリックス・ライターがやって来て、誘拐されたロシアの細菌学者ヴァルド・オブルチェフを救い出してほしいと依頼する。 現役復帰したボンドは、危険な生物兵器を操る正体不明の敵との想像を超える過酷な闘いに身を投じる事となる、、。

 

 

 

 

最後に映画館で映画を観たのはいつだったか?なんて思う程、劇場へ訪れたのは久しぶりな感じ。といっても映画館のスクリーンで観たい!と思える作品もなかったんですが遂にそう思える作品が公開されました。 1年以上に渡る延期の末にやっと劇場公開(ネット配信にならなくて良かった)のスクリーンに帰ってきました、007の25作目となる作品「ノー・タイム・トゥ・ダイ」でございます。

 

 

 

 

 

ダニエル・クレイグがボンドを演じて15年、本作で5本目になるこの作品でボンドを演じるのはこれで最後と公言している最終章。 ダニエルボンド好きとしては前作のある意味ハッピーエンドのまま終わってくれても良かった気持ちもありましたが、やはり皮肉な運命を背負ったボンドには幸せな暮らしは許されない事のようです。

 

 

 

 

事前に上映時間だけは調べてみて驚き、2時間43分(シリーズ最長)という長尺はファンとしては嬉しい反面、間延びしないか?という一抹の不安が過ぎりました。 そんな不安と期待を胸に幕を開けた「ノー・タイム・トゥ・ダイ」。 お馴染みのタイトル曲が流れ照準器にバーン!のオープ二ング(007ではお馴染みですがダニエル版では初では?)を見た時点で、これがダニエルボンドの見納めかと思うと感銘深い気持ちになりました

 

 

 

 

オープニングはまるでホラー映画を思わせるマドレーヌの悲しい過去のトラウマ事件に始まり、一転現在の二人がラブラブな幸せな生活をおくっている日常へと移ります。マドレーヌと幸せそうに暮らすボンドの姿に、よしよし別れなかったのね~と親戚のおばさんのように見守っていたのもつかの間、ドカーンという爆発と共にブランクを感じさせないスパイ生活へ引き戻される可哀そうなボンド。 

 

 

 

 

派手なライブアクションとカーチェイスでこれぞ007映画という見せ場の連続。 からのマドレーヌとの哀愁漂う大人の別れ、、 このたたみかけるような展開が終わり、ここまでおよそ30分程経ってからやっとオープニングタイトルトが始まるというボリュームで、制作陣がこの作品に賭ける意気込みが伝わってくる凄さです。

 

 

 

 

これも007の名物となっているオープニングタイトルですが、今作では若きビリーアイリッシュが担当しております。 シャーリ―・バッシ―やアデルのようなパンチ力はないものの、作品の内容に見合った名曲で一気に007の世界観に引き込んでくれます。 それをバックに映される映像ですが、なんと今回その出だしに第一作の「Drノー」のタイトルがオマージュされていたり、他にもそう思える映像があったりして、マニアの方なら気付く過去作のタイトルもさりげなく挿入されていたのかも知れません。

 

 

 

 

そんな怒涛のオープニングを経てボンドは再びMI6のスパイとしてカムバックする事になり、宿敵スペクターとその背後にうごめくなぞの組織を追うという展開になります。 引退したMI6には新たな007がいて、これが黒人の女性という設定というのも時代を感じさせます。 彼女が度々ボンドをライバル視してライセンス番号にこだわったりするという所が今の会社組織を象徴しているようで皮肉っぽくて笑えます。

 

 

 

 

お馴染みのMとのやりとりやQ等の同僚との絡みがほっこりさせてくれますが、何といっても今回ボンドガールとして初登場しているCIAエージェントのパロマがとってもキュート 訓練を積んで3週間と緊張しているにも関わらず、いざ銃撃戦になった途端にバリバリのアクションでバッタバッタと敵をやっつけていく姿のギャップには萌えてしまいました。これを演じているアナ・デ・アルマスは「ナイブス・アウト」で主人公を演じていて、ダニエルとは2回目の共演となります。 かなりのイメチェン姿には流石に驚きました。

 

 

 

 

余談ですが、本編が始まる前の上映予定の作品の予告が何本が流れたのですが、その中に「キングスマン」の新作「キングスマン:ファースト・エージェン」の予告編がありました。 主演は本作でMを演じているレイフ・ファインズという事で、こんな昔からイギリスの為に活躍してたんだと妄想していたらちょっと面白くなってしまいましたよ。

 

 

 

 

本作ではこれまでボンドの添え物扱いが多かったボンドガールですが、今回はマドレーヌの存在がキーポイントになっていて、ボンド同様一人の人間として描いている所も興味深い作品です。 このように今までボンド映画としてはタブーとされてきた事柄をあえて描いてきたダニエル版ボンド映画ですが、最後という事もあってかオープニングクレジットも含めてこれまでの007シリーズのオマージュと敬意が様々な場面に感じられる集大成のような作りが映画の中で見受けられる面白さもあります。

 

 

 

 

その分ややアクションに斬新さが見られなかったり、敵のインパクトが弱かったり、監督が日系だからかオリエンタルな視点からのジャポニズムの違和感が露骨にあったりと多少のマイナスな部分も感じられましたが、それも含めての007映画として楽しむのが正解なのかも知れません。 ボンドが土下座って、、謎でした。

 

 

 

 

これまでの007映画のほとんどは一話完結のものでしたが、ダニエル・クレイグに代わってからはリアルな人間としてのボンドが描かれるようになり、彼の人間性や過去といった内面的な部分も物語に反映されるようになった事で、ストーリーに関連性が生まれるようになりました。 今作ではダニエル・クレイグ版ボンドの物語が最後という事もあってか、それまでのボンドの物語に決着をつけるストーリー展開になっています。

 

 

 

 

その為、今作を100%理解するためには前作の「スペクター」を観ておいた方がより楽しめますし、「カジノロワイヤル」も併せて観ておくのがよりベストかも知れません。 とはいえ単体として観ても勿論楽しめる映画ではありますが。 「女王陛下の007」「007は二度死ぬ」にもかなりリンクした内容でもありました。

 

 

 

 

60年前に始まったアクションエンターテインメントの007シリーズが時の流れと共に、リアル志向になった現代の今という時代にどう存在できるのか?という課題に答えを出したような本作。 これまでの007にはない驚きに満ちた作品である事は間違いなく、ジェームズ・ボンドというキャラクターを一人の人間として、守るものが出来た男として描き、愛と責任と過去、そして家族についてが描かれた物語になっています。 

 

 

 

 

物語だけでなくダニエル・クレイグ以前の007ではオープニングタイトルの多くは女性の身体やシルエットを映したものがほとんどで、大人の雰囲気を強調したデザインが007の特徴でした。 ボンドガールもその多くは途中で殺されたりする事が多く、ボンドの引き立て役やアクセントだったものがいつの間にかそれが時代にそぐわないとされるようになってしまって、昔から観ていたファンとしては、らしさが浄化される淋しさも感じます。

 

 

 


そして自分自身一番驚いたのが、まさかこの007という映画を観て泣きそうになるとは夢にも思いませんでした。 これで見納めのダニエル最後のボンドという思い入れもありましたが、それだけではない切なさがこみ上げる作品で、ラストでウサギのぬいぐるみを拾って、腰にかけたボンドの姿が忘れらない私でありました。 

 

 

 

 

007映画のお約束としてエンドロールの最後に次回作のタイトルが表示されていた時期

がありましたが、今回は 「JAMES BOND WILL RETERN」 という文字が最後に表示されました。 過去にも同じ表示はありましたが、今作でこのー文の登場には様々な想いが交錯して切ない余韻が残りました。

 

 

 

 

テレビでショーン・コネリーのジェームズ・ボンドを初めて観てからビデオ、劇場、DVDとほとんどの007映画を観てきましたが、(ティモシー・ダルトン版は1作のみ)昔からのファンもまだ未見の方も、どちらも同じように楽しめる作品になっていると思いますので、他のアクション映画にはない男の色気とダンディズムが香るジェームズ・ボンド映画、特に今作は「ボンドの愛」を描いたラブストーリー作品になっていますので、女性の方も是非劇場でご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

ビリー・アイリッシュが歌う本作のテーマ曲です。 訳詞付きを宜しければです。 音譜