悪魔の子ダミアンが周囲にもたらす恐ろしい現象を描いた「オーメン」「オーメン2 ダミアン」に続くシリーズ3作目にして完結編

 

 

 

 

 

 

           -  THE FINAL CONFLICT  -  監督 グレアム・ベイカー

 

 出演 サム・ニール、ロッサノ・ブラッツィ、リサ・ハロー、ドン・ゴードン 他

 

こちらは1981年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(108分)

 

 

 

 

  “悪魔の子”ダミアン・ソーンは、32歳という若さで養父から引き継いだ総合商社ソーン・コーポレーションの社長となり、且つアメリカ合衆国大統領の顧問も務めていたダミアンはイギリスの何処かで誕生しようとしている“救世主”の存在を知った彼は、イギリスの駐英大使を悪魔の力で自殺に追い込み、自身が大使に就任する。 自らの拠点をイギリスに置き、気たるべき“救世主”の抹殺を目論んでいたのだった。

 

 

 

 

一方、イタリアの修道院のデ・カーロ神父は、救世主の誕生とダミアンが悪魔の子である事を知り、7人の修道士にメギドの短剣を授けダミアンの殺害を命じるが、ことごとく失敗に終わる。 そんな時、神が復活したとされる3月24日、ダミアンの秘書ディーンに子供が誕生した。

 

 

 

 

救世主が生まれてから自分の力が弱まっていくことに気付いたダミアンは、3月24日に生まれた全ての子供の殺害を手下に命じる。 その結果7日間に17人もの赤ん坊がイギリス国内で亡くなるが、全て事故や病気によるものと処理される。

 

 

 

 

その頃、テレビ・キャスターのケイトは取材でダミアンと知り合い、やがて深い関係になっていく。 彼女の13歳になる息子ピーターも彼になついていた。 関係が深まったある日、ケイトの下へ訪れたデ・カーロ神父からダミアンの正体を聞くが、それを信じる事は出来なかった。 しかし、神父に聞いた悪魔の印が666の数字はダミアンの頭部に刻まれている事を見つけた彼女は驚愕する。 そして彼女もまた悪魔と神との最後の闘争に巻き込まれていく、、。

 

 

 

 

ついにシリーズ3部作の完結編にして最終章となる本作。 前作ではイケメンの13歳に成長したダミアンの青春物語でしたが、この作品では完全に悪魔の子として覚醒している彼も、32歳という人間としても、悪魔としても、バリバリの働き盛りの年齢での登場。

 

 

 

 

前作で殺害した叔父の会社を継いで、世界的企業ソーン・コーポレーションの社長を務める一方、アメリカ合衆国大統領の顧問も務め、遂にはイギリス大使館の大使というポジションをゲット。 最終目標のアメリカ大統領の座を虎視眈々と狙っているのでした。

 

 

 

 

ある意味リアルで実直なサクセスストーリーではありますが、「オーメン」のダミアンってそんなお話?って位に人間的な生真面目さが目立つダミアン。 悪魔だったら悪魔らしく、様々な力を使い邪魔な人間を消して、世界を支配しそうなイメージなのですが、意外にもコツコツタイプの悪魔の子で現実主義者なのに驚きます。

 

 

 

 

静かに水面下で権力と勢力を固めている間に、1作目で登場した悪魔を殺せるというメギドの短剣がダミアンの正体を知る神父の手に渡り、命を狙われる羽目になってしまうダミアンであります! が、この正義の味方の7人の修道士が練ったダミアン暗殺計画がことごとく遠回りな作戦ばかりで次々に返り討ちにあってしまうという散々な結果に。

 

 

 

 

ナザレの復活といった聖書に基づくエピソードが絡められ、3作の中では一番キリスト教的な雰囲気があるのですが、オカルト的な恐怖はかなり薄味になってしまっている本作 3月24日に産まれた赤ちゃんを皆殺し、というショッキングな面もありますが、本作に期待するパンチの効いた殺人シーンはかなり地味な印象になり、その多くは彼を殺そうとする修道士に向けられるものがほとんどで、悪魔的な恐ろしさよりも実務的で残念です

 

 

 

 

2から3へと大人に変化したダミアンの容姿をサム・ニールが受け継ぎ、画としてかなり不気味でサイコな雰囲気はありますが、大人になった分、内容が現実の世界へとかなり寄せられた事で、どこか政治ドラマのような面が強調されてしまい、宗教的テーマに反してオカルトホラーの持つおどろおどろしい恐怖を感じない作品になってしまっています。

 

 

 

 

原点回帰的に聖書をモチーフにしている分、ちょっと理解しずらい面が多いのですがどうせならダミアン暗殺を狙う修道士側の視点で描いた方が、悪魔やダミアンの存在がいかに恐ろしいものなのかや、その恐怖感がより感じられたように思えます。 どうしてもダミアン側から描くと何を望み、何をするのかが事前に理解出来てしまいますからね。ただ今回はダミアンに変わり、黒ワンコが使徒として大活躍して怖がらせてくれてます。

 

 

 

 

本作の一番の問題は3部作の完結であり、赤ちゃんの頃から見て来たダミアンの有終の美を飾る事が出来ずに終わってしまった事でしょうか? いわばこのシリーズのハイライトとなるダミアンの最後が映像的な派手さもスリルもない、あまりにもあっけない形で幕引きとなってしまっているのです。

 

 

 

 

このダミアンという人類の脅威であるはずの悪魔の子が、凄い小物に見えてしまい、「オーメン」というシリーズ全体すらもこの程度のものだったのかと錯覚してしまいます。 エンディングにはヨハネの黙示録の一節が映され、それなりの説得力を持っての終焉となりますが、映画ならせめてそれを映像として見せて欲しかったと悔やまれるスッキリしない終わり方でした。 そのくせイギリスの田舎で行なわれるキツネ狩りのシーン等は多数の馬を走らせ、本当に丁寧で美しい映像美を見せてくれます。

 

 

 

 

大人になったダミアンの政治的側面からの世界征服ドラマはそこそこ楽しめましたが現実的なお話になった分、不気味さと神秘性が薄れ、「観たかったのはこれじゃない」という期待とのギャップに悩まされた、正に悪魔の政治ドラマな本作。 出来ればシリーズを通してご覧頂き、ややこしくなった人間社会に失脚させられる悪魔の子の細腕一代記をハンカチ片手に鑑賞してみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~! パー