ブライアン・デ・パルマ監督が、フィルム・ノワールの必須要素、ファム・ファタール=宿命の女をタイトルに冠して描くサスペンス映画

 

 

 

 

 

 

        -  FEMME FATALE  -  監督 脚本 ブライアン・デ・パルマ

 

 出演 レベッカ・ローミン、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ 他

 

こちらは2002年制作の アメリカ アメリカ フランス フランス の合作映画です。(115分)

 

 

 

 

  カンヌ国際映画祭の会場で、1000万ドルの宝石が盗まれる。実行犯のロールは仲間を裏切って逃走。その途中で気を失ったロールは、見知らぬ家のベッドで目覚める。彼女は別の女性、リリーに間違えられていたのだ。まもなく帰宅したリリーが、ロールの存在を知らないまま拳銃自殺。ロールはリリーに成り済まして単身アメリカへ飛んだ。

 

 

 

 

7年後、ロールはアメリカ大使夫人としてパリに舞い戻る。決して人前に出ず過去を隠していたが、カメラマンのニコラスにスクープ写真を撮られてしまってから態度を変える。ロールは素性を探ろうと接近してきたニコラスを誘惑。

 

 

 

 

ニコラスは彼女の罠に落ち、ロールは完全勝利を収めたかに見えた。 しかし、その行動は裏切った仲間に押さえられていたのだった。 彼女は捕まるが口を割らない、怒りにまかせた仲間は彼女を気絶させ、復讐の為にロールを橋から川へと突き落とすのだった。 川の中で意識を取り戻したロールは水面へと這い上がるが、、。

 

 

 

 

デ・パルマが通常のサスペンス作品にフィルム・ノワール的要素を織り交ぜて作ったような悪女モノの犯罪映画で、いつもとはちょっと違った趣向の作品になっています。 そんな事もあってか、かなり前に観た時の感想は、デ・パルマ作品としてはあまり良いものではなかったのですが、今回数年ぶりに観返してみると、この特殊なギミックによって構成された物語が、当時と違ってとても面白く感じてしまった私でありました。

 

 

 

 

セレブの集まるカンヌ映画祭の中、モデルが身に着ける1000万ドルのビスチェが3人の盗賊によって盗まれる。 その実行犯の女ロールは仲間を裏切って逃走、それから7年の歳月が流れ、外交官の妻となった彼女の運命が描かれるというお話の本作。

 

 

 

 

ワイルダー監督のフィルム・ノワール作、「深夜の告白」をテレビで観ているロールの姿から始まるという洒落たオープニングから一気にカンヌ映画祭に場所は移り、坂本龍一の手掛けるボレロ風の曲に乗せて、着々と進んでいく一連の犯罪場面が流れるように展開する映像はとってもデ・パルマ風でスリリング。 

 

 

 

 

ここで標的となっているヘビを模倣したビスチェを身に着けたモデルの姿がほぼ裸のようで、大事な所すら隠し切れてないという斬新なデザインなのが驚き。 その後モデルとロールはトイレの中でレズプレイへと発展し、その最中に偽物とすり替えるというトリッキーな手法にこれまた驚き。 その裏で仲間が様々な細工をしている姿はまるでデ・パルマの「ミッション:インポッシブル」を彷彿とさせる仕事ぶりを見せてくれます。 何故か邪魔するネコちゃんが登場してとってもキュート。

 

 

 

 

ここまでの犯罪場面を得意の画面が分割されたスプリット・スクリーンを絡ませながら一気に見せる手腕は流石で、デ・パルマ映画を観ているぞーという気分にさせてくれます。その後からがこの映画の特殊な所で、ビスチェを奪ったロールの逃亡劇が始まるのですが、変装したロールは別人のリリーという女性に間違われる事となり、彼女はそのままリリーという女性になりすまして逃亡する事になるというものです。

 

 

 

 

頭の悪い私はヒント等を観過ごしてしまっていて、その急激な展開に頭が混乱するのですが、ストーリーが進むに連れその謎や伏線が回収されて最後には「ワオ!」と唸ってしまいました。 このラストでもある決定的なシーンが再び繰りかえし演じられ、効果的なスローモーションとスプリット・スクリーン、そしてボレロが流れる中、映像と音楽だけの映画的な快感を体現できる劇的なシーンになっています。

 

 

 

 

この作品ではこれまで以上にスプリット・スクリーンに意味を持たせた内容になっていて鏡やガラスも映画を物語る重要なアイテムになっています。 他にも画面に映る様々な物にも伏線が張られていて、いつも以上に映像の中に情報が詰められています。

 

 

 

 

物語自体はありがちな作品ですが、その見せ方に工夫がされていて楽しく観れる映画になっています。 特に今回はロールという女性が主人公という事もあってか、トイレでのレズシーンから始まって、セクシーな場面がてんこ盛りな作品で、デ・パルマのエロ演出が全開です。 

 

 

 

 

それが画として気持ち悪くならないレベッカ・ローミンの美しさとスタイルの良さったら、そりゃアントニオ・バンデラスでさえ惚れてまうやろーです。彼の中盤でのオカマちゃん演技は素敵でした。 ついアルモドバルを連想してしまった私。

 

 

 

 

そんな訳で、殺人鬼や鮮血も登場しない控えめなデ・パルマ映画ですが、その分物語の構成や見せ方とエロスに凝った作品で、なんといっても音楽を坂本龍一が手掛けている事も私には重要なポイントです。 ただ、今さらボレロ?と思ってしまったのですが、これはデ・パルマからの注文だったと聞き、ホッと胸をなで下ろしました。 まぁある意味映画の内容とボレロが構造的にリンクしているのが大きな理由なのですが。

 

 

 

 

 

女性もタフにならなければ生きていけないと思わせられる本作、デ・パルマのフィルモグラフィーの中では見逃しがちな作品ですが、なかなか面白い映画だと思いますので機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

 

ボレロ風とは別の曲ですが、劇中曲のピアノバージョンを宜しければです。 音譜