「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」のロベール・ブレッソン監督作。フランスの第一回“新しい批評賞”で最優秀フランス映画賞を受賞。

 

 

 

 

 

 

           -  Pickpocket  -  監督 脚本 ロベール・ブレッソン

 

 出演 マルタン・ラサール、マリカ・グリーン、ピエール・レーマリ、ペルグリ 

 

こちらは1959年制作の フランス映画 フランス です。(76分)

 

 

 

 

  青年のミシェルは彼は母親から離れ、安アパートで暮していた。 ある日、競馬場で、ミシェルは前の女のバッグから金をスリ取った。 しかしミシェルはたちまち捕まってしまうが、証拠がなくすぐ釈放された。  母にその金を届けた時、隣室の娘ジャンヌと言葉を交わした。 ミシェルは仕事へ行く地下鉄で、スリの犯行を目撃し、ひきつけられた。練習ののち、最初の犯行は成功した。それ以降毎日スリをつづけた。

 

 

 

 

時には失敗したが捕まる事はなかった。 ジャックと喫茶店にいる時、じん問された警部にあった。 彼はミシェルになぜか目をつけているらしかった。 ある日本物のスリが彼をアパートの出口で待っていた。 見込まれた彼は様々なスリの手口を教えられた。 銀行の前で、初めて共同の仕事をした。 駅では、三人で組んで稼いだ。 

 

 

 

 

そんな中、部屋にジャンヌから置手紙がきていた。 母が危篤だという知らせだった。 久しぶりに母と会話を交わしたが、数日後母は亡くなってしまった。  母と親しくしていたジャンヌは不幸な娘だった。妻に去られた父と妹たちの面倒を一人でみていた。 ある日ミシェルのアパートに警部が訪ねて来た。 彼の留守中に家宅捜査をしたらしかったが盗品は発見されていなかった。 

 

 

 

 

そんな時、以前仕事をした二人のスリ仲間が捕まった。 以前の事件もあり、警察は彼に目をつけていたのだ。 それを知ったミシェルは突然思い立ったように列車に乗ってイタリアへ発った。 それから二年間、スリをして生活をつづけた彼は再び故郷へ舞い戻って来る。 例のアパートの室へ立ち寄ると、ジャンヌが子供とそこで暮らしていた。 友人のジャックに捨てられたのだ。 彼は更生を誓い、しばらくは真面目に働きジャンヌを助けていたのだが、、。

 

 

 

 

以前こちらで紹介した「抵抗(レジスタンス)」のロベール・ブレッソン監督作品で、今作でも出演者のほとんどに素人を起用し、主人公ミシェルの空虚感、とジャンヌの無垢な美しさが特に目を惹き、その独特な存在感が不思議なリアリティを醸し出しています。

 

 

 

 

印象的なモノクロで撮られた本作は、本編前のこのような文章から始まります。「本作は刑事ものではない 映像と音である青年の悪夢の表現を試みている 彼は自分の弱さに負けスリという冒険を行う この冒険が奇妙な道筋を経て結び付ける二つの魂は この冒険なくして出会う事はなかった」 

 

 

 

 

スリという犯罪はあくまで主人公ミシェルの内面の葛藤を描くメタファーのようなもので、犯罪という冒険と抵抗、その誘惑と罪を抜けた後に訪れる、成長と愛についてのシンプルな物語である事が分かります。

 

 

 

 

社会や貧しさに不満を持つ青年ミシェル。母親とも疎遠で生きがいも出口も見いだせなかった彼が、金持ちの懐からお金を抜き取るスリという犯罪に惹かれていく心理が無駄を省いた一人称で語られ、行き場のない一人の青年が持つ苦悩と憂鬱が伝わります。

 

 

 

 

反面、本作の魅力の多くはスリをするシーンなのは間違いなく、ミシェルが部屋で淡々とスリの練習をする場面や、スリを実行する瞬間の手の動き、仲間と様々なシチュエーションで財布を次々と抜き取っていく犯罪映画あるあるのチームプレイといったスリル溢れる場面には、嫌でもドキドキハラハラでテンションが上がるのでありました。

 

 

 

 

画面に映る見事なスリという行為は、ミシェルの心理を可視化したようにも見え、それを行っている彼の表情は、手先の器用さとは逆に空虚で無表情です。その目に映る憂鬱な日常生活とジャンヌの環境。 

 

 

 

 

そうした漠然とした怒りの矛先が財布を抜き取るという犯罪行為を正当化し、社会に一矢報いようとする彼の歪んだ倫理観と、聖母のように全てを受け入れるジャンヌとの間で産まれる不思議な愛の物語。

 

 

 

 

無駄な説明セリフやシーンを極力省いた作品のため、正直ミシェルやジャンヌの心理を感じ切れていない所もありますが、私はこの作品を「魂の救済映画」のように感じました ちょっとクリストファー・ノーランの「フォロウィング」も連想させる所もあったりして、様々な見方の出来る映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー