アキ・カウリスマキ監督・製作・脚本によるフィンランドのコメディ・ヒューマンドラマ映画。第67回ベルリン国際映画祭で銀熊賞 (監督賞)を受賞した。

 

 

 

 

 

 

       -  TOIVON TUOLLA PUOLEN  -  監督・脚本・製作 アキ・カウリスマキ

 

 出演 シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイヴラ、

                                                                                     ヌップ・コイブ 他

 

こちらは2017年制作の フィンランド映画  です。(98分)

 

 

 

 

  フィンランドの首都ヘルシンキ。 トルコから貨物船に身を隠してやってきたカーリドは、この街に降り立ち難民申請をする。 彼はシリアの故郷アレッポで爆撃によって家族を失い、たったひとり生き残った妹ミリアムと生き別れになっていたのだ。 彼女をフィンランドに呼び、慎ましいながら幸福な暮らしを送らせることがカーリドの願いだった。

 

 

 

 

一方、この街でセールスマン稼業と酒浸りの妻に嫌気がさしていた男、ヴィクストロムはついに妻に別れを告げ、全てを売り払った金をギャンブルにつぎ込んで運良く大金を手にした。 彼はその金で一軒のレストランを買い、新しい人生の糧としようとする。 店と一緒についてきた従業員たちは無愛想でやる気のない連中だったが、ヴィクストロムにはそれなりにいい職場を築けるように思えた。

 

 

 

 

その頃カーリドは、申請空しく入国管理局から強制送還されそうになり、逃走を目論んだあげく出くわしたネオナチの男たちに襲われるが、偶然出会ったヴィクストロムに救われる。 拳を交えながらも彼らは友情を育み、カーリドはレストランの従業員に雇われたばかりか、寝床や身分証までもヴィクストロムに与えられた。 

 

 

 

 

商売繁盛を狙い手を出した寿司屋事業には失敗するものの、いつしか先輩従業員たちまでもカーリドと深い絆で結ばれていった。 そんななか、ミリアムがリトアニアの難民センターで見つかったとの一報が届く、、。

 

 

 

 

以前ご紹介した 「ル・アーヴルの靴みがき」 から6年後に公開されたカウリスマキ監督による本作は、前作同様祖国を追われた難民を主人公にしたストーリーで、内容自体は前作以上にシリアスな問題とテーマを含んだ作品です。 

 

 

 

 

今回ばかりは社会派でメッセージ性の強い作品になるのか?と不安半分で観始めましたが、そこは流石のカウリスマキ監督。 いつもながらの淡々とした寡黙な語り口で、小市民の目線に寄り添った生活の中に、様々な問題と明日への希望が紡がれた作品に昇華させております。

 

 

 

 

凄惨な人生を歩んできた若者の難民カーリドと、退屈な人生を送ってきた老年のヴィクストロムの対比が、生まれて来た国によってこうも違う環境になるものかと考えさせられますし、人生の先を見る視点とパワーの使い方の違いが、ともすれば互いの希望にもなり得るという人生の不思議や偶然、その可笑しさが描かれています。

 

 

 

 

劇中最もユーモラスな場面がヴィクストロムのレストランがすし店に様変わりするシーン わざと勘違いしたような日本と中国のごちゃ混ぜ文化の店内や、シャリを上回るワサビのトッピング地獄、レジ横の電動式招き猫は逆にリアルでしたが、小津映画好きのカウリスマキ監督のユーモアが暴走した場面には笑うしかありませんでした。

 

 

 

 

ほとんどの場面で喜怒哀楽を見せない無表情な人々、余計な装飾を省いた独特な映像と色彩の空間、淡々と進む物語の合間に差し込まれるミュージシャンの演奏は、それまでの寡黙な主人公達の心の声のように映画を彩ります。 カウリスマキ監督はそんな悲惨な現実を、この特殊な北欧の映像空間の中へ導いて、そこから生まれるペーソスとユーモアで希望の光を私達に信じさせてくれるのです。

 

 

 

 

ラストで一人になったカーリドとワンちゃんの野良ツーショットでのエンディング後が気になる所ではありますが、やさしさと希望、そして他者に対する寛容さこそがこの世界の光なのかも?とチラッと考えさせられる不動のカウリスマキ作品。 常連の役者さんも多数出演されておりますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー