第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞の2部門を受賞した人間ドラマ。

 

 

 

 

 

 

           -  SOUND OF METAL  - 監督 ダリウス・マーダー

 

 出演 リズ・アーメッド、オリヴィア・クック、ポール・レイシー、

                                                                         マチュー・アマルリック

 

こちらは2020年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(120分)

 

 

  ドラマーのルーベン・ストーンは恋人のルーと一緒にバンドを組んで活動していました。 そんなある日、ルーベンは耳が聞こえにくくなっていることに気づきます。 念のため専門医を受診したところ、ルーベンはいつ聴力を失ってもおかしくない状態にあり、回復の見込みはないと告げられてしまうのでした。 

 

 

 

 

ルーベンはすぐに治療を開始しますが、病状は急速に悪化していきます。 絶望のあまり自暴自棄になるルーベンでしたが、そんな彼を見かねた知人が聴覚障害者の自助グループの存在を彼に紹介します。 そこはかつてドラッグ依存症の人々が共に助け合うろう者向けのコミュニティーでした。 ルーベンもかつてドラック中毒だったため、悲観した彼が再びドラックに走らないようにとルーはこの支援グループを勧めたのでした。

 

 

 

 

しかし参加するには外部との接触を禁じる必要がありました。 ルーベンは断固として拒否しますが、ルーは半ば強引に彼をグループに送り、自分は実家に帰ってしまいます。こうしてろう者達との慣れない共同生活を始めたルーベンは、その中での生活に苦しみながら、自身の聴覚障害としての現実を受け入れるために少しずつ順応しようとする。​​​​​​のでしたが、、。 というお話です。

 

 

 

 

今年のアカデミー賞に複数ノミネートされた作品が、普通にAmazonのPrime videoにあって驚きました。 しかも定額見放題という事で、早速視聴してみました!

 

 

 

 

本作はドラマーである主人公のルーベンが、前触れもなくいきなり聴覚を失ってしまった事から起きるドラマが描かれた作品で、これまでにもこちらで紹介した「ザ・トライブ」 や「ワンダーストラック」、「トガニ 幼き瞳の告発」 といった聴覚障害を扱った作品がいくつかありましたが、その中でもリアルに聴覚障害というものがどのようなものなのかを音によって実体験させられる見事な作品です。

 

 

 

 

オープニングのノイジーなドラム演奏からの突然の難聴の世界。 小さくモゴモゴとしか聞こえなくなった人の声の違和感や焦りと、ルーベンが実際に体験している異世界が音によってこちらにも共感するように表現されていて、その没入感は類を見ない作品です 音だけでなく、それによって生じる孤独感や絶望感を主演のリズ・アーメッドは見事に表現しています。 

 

 

 

 

初めてろう者のコミュニティーに入った瞬間、彼等が手話で会話をしているのをただ見ているだけの仲間でありながら理解出来ていない自分がどこにも属していないと思ってしまう疎外感や孤独感は誰しも少なからず経験しているもので、ルーベンの痛みをまざまざと体験させられる場面でした。 ピアノの音色を手に伝わる振動で聴くというシーンも印象的でした。

 

 

 

 

余計なサブストーリーもなく、過剰に盛り上げる音楽もなく、ただただルーベンの動向に寄り添った無駄のない演出と感動させようという意図のなさが逆に素敵でした。

 

 

 

 

後半でのインプラント手術の現実や弊害も真摯に描かれ、それを受け止めた後のルーベンの悟りなのか、諦めなのか、安堵なのか、希望なのか、その表情が胸に焼き付くエンディングでありました。 せっかく安住の場所を手にしたと思ったのに、夢ある男って奴はチャレンジしてしまうものなのですかね、、。 

 

 

 

 

と、そんな訳でタイトルからしてハードロック映画だと思って観たら、あたりまえの日常というものがいかに恵まれたものなのかを深く考えさせられるような作品でした。 映画だからこそ表現出来る体験だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

こちらは色弱の方の動画です。様々な方々が暮らしている事を知る必要がありますね。