1927年。 プロペラ機でニューヨーク→パリ間の大西洋横断飛行を初めて成し遂げた、チャールズ・リンドバーグが1954年にピューリッツァー賞を受賞した著書「The Spirit of St. Louis」 を映画化した作品。

 

 

 

 

 

 

-The Spirit of St. Louis - 監督 ビリー・ワイルダー 原作 チャールズ・リンドバーグ

 

 出演 ジェームズ・スチュアート、バーレット・ロビンソン、アーサー・スペース 

 

こちらは1957年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(138分)

 

 

 

 

  1926年、ニューヨーク~パリ無着陸飛行の最初の成功者に与える2万5千ドルのオーテエイグ賞の設定が発表される。若きリンドバーグはそれを目指し、セントルイス飛行クラブ会長ナイト氏とともに、町の実業家を訪ねて資金の寄付をあおぐ。銀行の頭取など町の有力者たちは経済上の支援者となり、飛行機の名は郷土の名をとって「セントルイス魂号」と名づけられた。が、肝心の飛行機は、これから買わなければない。

 

 

 

 

まず見つけたニューヨーク、コロンビア航空会社のベランカ機は、操縦者のリンドバーグが無名だという理由で、買取を拒絶される。失意のリンドバーグは次に後援者の紹介で、カリフォルニア州サン・ディエゴの小工場ライアン航空会社を訪れる。工場長マホニーと設計主任ホールは、幸い彼の申し出を快諾する。時に1927年3月、ラジオは、バード中佐ら数名のアメリカ側、ナンジェッセとコリーラのフランス側の飛行家たちが、多発機で横断飛行準備中と伝えていた。ぐずぐずしていれば、誰かに先を越される。

 

 

 

 

リンドバーグの頼みで、マホニーらは大急ぎで飛行機を完成させる。それに乗ったリンドバーグは直ちにセントルイスへ戻る。が折も折、パリを発ったナンジェッセとコリーが、大洋上で行方不明となる。この不祥事に後援者たちはリンドバーグの身を心配し、横断飛行を中止しようとする。しかし固い決意のリンドバーグは、発進地ニューヨークのルーズヴェルト飛行場に向かう。5月19日、その日は天候が乱れていたいよいよ20日、午前7時52分、雨で荒れた飛行場から多くの人の声援に送られ、リンドバーグは3600万マイル彼方のパリを目指して飛び立った、、、  というお話です。

 

 

 

 

巨大旅客機で世界を旅出来るようになる以前、アメリカのニューヨークからフランスのパリまで、プロペラ機に乗って無着陸の大西洋横断飛行という偉業を成し遂げたチャールズ・リンドバーグの自伝を、友人でもあったビリー・ワイルダー監督と、自身がその役柄を熱望していたジェームズ・スチュアートによって映画化されたものが本作になります。前から見逃していたワイルダー作品。 リンドバーグという名前は聞いた事があるけれど、詳しくは知らないという勉強も兼ねてレンタルした発掘良品。

 

 

 

 

まずは日本語オリジナルのタイトルが時代を感じてロマンチック。 てっきり自分が乗り込んだ飛行機を擬人化して友情バディムービー的な展開でもあるのかと思いましたが、そういった事もないタイトルのつけかたのセンスが妙でござります。

 

 

 

 

映画は大まかに二部的な構成になっていて、前半ではリンドバーグ自身がこのチャレンジを決意し、飛行機会社やスポンサーを探す苦労が描かれ、大手の会社には断られた彼が、町工場のような小さな飛行機の製造会社へと辿り着き、そこでリンドバーグの計画の為のオリジナルの飛行機を製造する行程がテンポよく描かれていきます。

 

 

 

 

後半はいよいよスピリット・オブ・セントルイスと名付けられたプロペラ機に乗り込み、大西洋横断飛行を成し遂げるまでの孤独な戦いと苦悩がたった一人の操縦席の中で描写されます。 前半の計画が具体化していくさまや、工場でいかに軽量化した機体を作るかといった製造工程や様々なアイディアによって機体が作り上げられていく姿には「タッカー」や「紅の豚」「フェラーリVSフォード」を彷彿とさせるワクワク感がありました。

 

 

 

 

後半はある種メインでありながら画的には変わり映えのしないコックピットの映像になりますが、そこは流石のワイルダー。 飛行士になろうと決めたリンドバーグの回想によって、航空機の学校や飛行機のサーカス、神父とのエピソード等を挟みつつ、空中での睡魔や氷との戦い、墜落の危機というエピソードで全く飽きさせないエンターテインメント映画に仕上げています。 

 

 

 

 

実際の年齢としてはやや無理のあるジェームズ・スチュアートですが、知識のない私には全く無理なく観れ、ほぼ出ずっぱりながらもリンドバーグという人物を魅力的に演じていました。 そして何より監督のビリー・ワイルダーの見事な手腕が本作でも見事に発揮されています。 伝記物はその結末がおのずと分かってしまっている不利さはありますが、巧みな脚本の構成と演技によって最後まで楽しく観れるように工夫されています。

 

 

 

 

今作でも様々な小道具や人物が物語のアクセントとして登場していて、孤独なコックピットの中に同乗した一匹のハエや、工場の犬の肉球スタンプ、女性の手鏡やサスペンダーのセールスマン、神父のペンダントやサンドイッチのカレイ等、洒落た小物の使い方には毎回驚かされるばかりなのでした。

 

 

 

 

実際のプロペラ機の飛行場面の素晴らしさや曲芸のアクションの凄さ等、今では貴重ともいえる映像のインパクトは映画というもののダイナミズムを感じさせてくれます。この単独飛行の一番の難関が睡魔だったというのには驚きでしたよ。

 

 

 

 

ラスト、33時間半かけパリに無事に到着したリンドバーグを待っていた20万人の群衆凱旋帰国した際には400万人が詰めかけたというパレードの映像には、いかに彼が成し遂げた事が偉大なものだったのかという事実と人類の歴史を痛感させられます。 

 

 

 

       (実際のリンドバーグとスピリット・オブ・セントルイス機)

 

ワイルダー監督の洒落たセンスとユーモアで味付けされた、一人の人間の強い意志と小さな町工場の底力が世界を変えた物語の本作。 機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー