フランスを代表する監督のひとり、ベルトラン・ブリエが、ジェラール・ドパルデューほか豪華キャストを配して映画化した荒唐無稽なインモラル・青春ムービー

 

 

 

 

 

 

               -  LES VALSEUSES  - 監督・脚本:ベルトラン・ブリエ

 

出演 ジェラール・ドパルデュー、パトリック・ドヴェール、ミウ=ミウ、

                                                                                ジャンヌ・モロー 他

 

こちらは1974年制作の フランス映画  フランス です。{119分}

 

 

 

 

  ジャン・クロードとピエロは、職につかずぶらぶらと遊び廻って、コソ泥とスケコマシにあけくれている二十歳の不良青年。 今日も主婦にちょっかいを出してはハンドバッグを強奪した二人。 ある日、ドライブしたくなった二人は、マンションの駐車場から一台の車を拝借します。 数時間後、ドライブを楽しんだ二人が車を返しに駐車場に行くと、持主がピストルを構えて待ち伏せしていました。 二人は必死に逃げましたが、運悪く、弾丸がピエロの股間をつらぬきます。 

 

 

 

 

二人は砂丘の近くにあった無人の家に忍び込み、しばらく身体を休めると、再び団地に戻って美容院につとめるマリー・アンジュを連れて旅に出ます。 おかしな二人三脚の旅の始まり。 二人はピエロの股間を撃った男に復讐するつもりでしが、マリーは日常から外れたこの旅が楽しくて仕方がないふうでした。 しかし彼女は性的に不感症で、二人がテクニックを駆使して責めてもうつろな眼で天井をみつめているだけです。

 

 

 

 

二人は、“この女は最底だ"とサジを投げ、彼女を置き去りにしてしまいます。 出会いと冒険にみちた二人の旅にとって最も素晴らしい出来事は、ジャンヌとの出会いでした。 彼女は四十歳、女囚の生活を終えて出所してきたばかりの身でした。 ジャン・クロードは彼女の女らしい心にうたれ叫びます。「彼女こそ理想の女性だ!」 その夜、ジャン・クロードとピエロはジャンヌとのセ〇クスに酔いしれ、幸福感に充たされました。

 

 

 

 

しかし、世の中に絶望していたジャンヌは、セ〇クスが終わると二人が寝てる間にピストル自殺で生命を断ってしまいました。 二人は激しい罪悪感と悔恨の情に苛まれ、マリー・アンジュの元へ向かいます。そこでジャンヌが残したスーツケースの中にあった手紙から、彼女にはジャックという一人息子がいて、彼もまた服役中であることを知ります。出所してくる彼になんらかの援助をすることによって、ジャンヌに対する罪ほろぼしをしたいと思った二人は、ジャックが出所してくると手厚くもてなします。 しかし、金がなくなってきた事をきっかけにジャックが盗みをはたらく事を計画。 ジャックをリーダーとして4人が強盗に向かった先はとある住宅でした。 そこを選んだジャックには別の目的があったのでした、、。

 

 

 

 

本作のタイトルはフランス語のスラングで睾丸という意味があるそうで、確かにポスターを見るとそのように見えます?ね。 それを比喩したようなニコイチの二人、ジャン・クロードとピエロの働きたくない男二人が、盗みやナンパをくり返しながら空虚な日々を送る日常が描かれています。 根無し草の二人はとにかく劇中で走る走る、まるで「トレインスポッティング」のように悪さをしては逃げるの繰り返し。 走っては車を盗み、走ってはバスや列車、バイクに自転車を乗りついで、あてもない旅をつづけていきます。 

 

 

 

 

映画中盤までこの下品な二人の悪行を見せられて、疲れはじめた頃に登場するのがジャンヌ・モロー演じるそのままジャンヌという女性との出会い。 ここから急に映画がビシっと締まり、訳あり女性とのひとときを過ごした事で人生の限りと刹那を感じさせるのでありました。 ジャンヌ・モローの存在感、流石です。

 

 

 

 

かと言って急に変化が起こる訳でもなく、マリーを伴って旅をつづける二人。 その先で出会た少女を女性にして、再び三人で車に乗り込み、あてもない旅へと出発します。ただ、最後に映る三人の表情は決して明るいものではなく、じきに終わりが来る事を悟っているような、なんともいえない表情で、トンネルに入りフェードアウトします。

 

 

 

 

特にメッセージがある訳でもなく、心を入れ替える訳でもない若者の数日を綴った作品なのですが、観終わった後に何か切なさのような不思議な甘酸っぱさが残る映画です。それは否が応にも時間は進み、大人になって歳を取る事を誰しも知っているからなのかも知れません。 この作品に映る映像が美しいだけに、余計その刹那を強烈に実感させられてしまうのでした。

 

 

 

 

主人公を演じるジェラール・ドパルデューとパトリック・ドヴェールの二人がそれを体現して怪しい魅力を放っています。多くの場面でペアルックになっているのも可愛いかったりします。  映画のアクセントにもなっているミウ=ミウの天使感も素敵ですし、今では大女優となったイザベル・ユペールも強い印象を残す少女の役で登場していたりするのも見所の一つです。 睾丸の向くまま行動するどこか憎めない若者と、時折異様に美しい映像のアンバランスが独特な世界観を生んでいる映画となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー