イギリス郊外のカントリーハウス「ゴスフォード・パーク」を舞台に、貴族たちとその従者たちの複雑な人間関係を描いたロバート・アルトマン監督のミステリー作品。

 

 

 

 

 

 

                 -  GOSFORD PARK  - 監督 ロバート・アルトマン

 

 出演 マギー・スミス、マイケル・ガンボン、クリスティン・スコット・トーマス 

 

こちらは2001年制作の イギリス映画 イギリス です。(137分)

 

 

 

 

  1932年秋のイギリス。  数百年にも渡って続いてきた貴族社会は、時代と共に変わり始めていました。 郊外に建つカントリー・ハウス、ゴスフォード・パークにはその日次々と付き人を伴ったゲストが集まって来ます。 屋敷の主であるマッコードル卿とシルヴィア夫人の招待によるパーティーが催されるためでした。 お客は、俳優、映画プロデューサー、伯爵夫人ら貴族連など、ものものしい人々。 屋敷の階下では召使たちが入り乱れ、客をもてなす為に活気あふれて働いていました。 そんな中でも、隙あらば階上の人々のゴシップに花を咲かせる使用人たち。 実のところ今回の賓客たちは、貴人といっても台所事情の苦しい者ばかりで、その殆どがマッコードル家のお金と援助を求めてやって来ていたのでした。 

 

 

 

 

階上の貴人たちは表面ではそんな素振りを見せないまでも、優雅なパーティーの裏ではそれぞれがそれぞれの思惑を胸に秘め、互いの懐を探り合っていました。こうした中行われた、パーティーのメインイベントのキジ狩りでしたが、そこで主人のマッコードル卿の体を銃弾が掠めるという、不穏な騒動が起きます。 当初は単なる事故かと思われましたが、この一件は、次なる事件への幕開けに過ぎなかったのです、、。

 

 

 

 

なんとその夜、マッコードル卿は何者かによって殺害されてしまったのです。 そして、奇しくもそれは、ゲストの一人であるアメリカ人の映画制作者・ワイズマンが、次回作の構想として似たような殺人事件の話を語った直後の出来事でした。 連絡を受けて警察がやって来ました。 そしてマッコードル卿の殺害を企てた容疑者は、パークに居た人間すべて。 なぜなら卿は、ほとんどすべての人間とつながりを持っていたのでした。 2階の来賓と1階の使用人、それぞれに警察の聞き込みが始まるのですが、、。 というお話です。

 

 

 

 

本作はアカデミー脚本賞、そして ゴールデングローブ賞監督賞等、いくつかの賞を受賞しているアルトマン監督が得意とする群像劇仕立てのミステリー映画です。とにかく初見の人は物語どうこうよりも、その登場人物の多さで頭がパニックになってしまうかも知れない群像劇です。 ゴスフォード・パークに招かれたゲストが貴族という事もあって、この当時はそれぞれ身の回りのお世話をする付き人を従えて訪れるものですからその人数は単純に2倍、それを向かい入れるお屋敷には食事や部屋の支度をする役目の使用人がまた居ますからかなりの人数になります。 

 

 

 

 

その上、基本黒と白の衣装が多いものですから、相関図を把握しようと頭を使うと余計に混乱してしまいます。 そんな事もあってか、以前この作品を観た時はあまりしっくりこなかったのですが、今回再見してなんとか普通に観る事が出来ました。一応ゴスフォード・パークの主人が何者かに殺されて捜査が行われるというミステリー仕立てではありますが、誰が犯人で、どうやって殺されたのかという推理劇の醍醐味となる核の部分は意外とサラリと流され、犯人探しよりも、何故この事件が起きたのかという背景が丁寧に描かれた作品でした。 

 

 

 

 

もっと言えば殺人事件はあくまでそのバックボーンの時代的なドラマを引き立たせる為のもの位の扱いでしかなく、アガサ・クリスティのような推理ミステリーを期待して観ると、少々物足りなさを感じる映画です。 私も初見はそうでしたが、今回改めて観た事で、この作品の面白味にやっと気づきました。 

 

 

 

 

それは衰退した貴族が辛うじて保っている貴族たる生活の細かな描写と、貴族という文化を裏で支えている使用人たちの生活。 これを建物の1階と2階に分け、それを対比して見せている所です。 1階で暮らす使用人たちにも社会があり役割や力関係があったりと、意外や貴族と似たような形態をしていたりする面白さ。使う者、使われる者でありながら互いに依存して、時にどちらが使われているのか?と思えるような所もあります。 招かれた貴族側も既に貴族とは名ばかりで、実状は金欠で、マッコードル卿にお金をせびって暮らしているような有様、なんちゃって貴族という建前だけの存在を痛烈に皮肉って描いています。

 

 

 

 

そんな姿を観客同様にまだ染まっていないフラットな新米メイドのメアリーの視点からそれを見せるという上手さはさすがのアルトマン監督であります。とにかく貴族の生活や付き人の役割、使用人たちの仕事ぶりや身のこなし、佇まい等の当時の細かなディテールを楽しめる方には見所が沢山あります。個人的には主人が亡くなった翌日の夜、有名俳優がピアノで歌うのをこっそりと聞いている使用人たちの姿がなんとも言えない哀愁を感じさせて印象的でした。

 

 

 

 

出演者もなかなか豪華で、 マイケル・ガンボン(ダンブルドア校長) マギー・スミス(ミステリー作意外と多い)ヘレン・ミレン(カッコイイ) エミリー・ワトソン(実力派)チャールズ・ダンス(眼力)ボブ・バラバン(助演感)リチャード・E・グラント(顔)ケリー・マクドナルド(トレスポ)クライヴ・オーウェン(濃い) ライアン・フィリップ(最近見ない)などなど。推理劇としては少しぼやけた感のある作品ですが、きっちりと整えられたテーブルとは裏腹に、そこにいる様々な人間の建前と見栄とエゴがグツグツと煮えたぎっているような映画でございます。 今回も男のだらしなさが招いた不幸な女性の物語、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー