『狂つた一頁』(くるったいっページ)は、1926年(大正15年)に公開された日本映画です。 監督の衣笠が横光利一や川端康成などの新感覚派の作家と結成した新感覚派映画聯盟の第1回作品で、無字幕のサイレント映画として公開された。

 

 

 

 

 

 

  -  狂つた一頁 A PAGE OF MADNES - 監督 衣笠 貞之助  原作 川端康成

 

 出演 井上正夫、中川芳江、飯島綾子、関操根本弘 他


こちらは1926年(大正15年)に制作された 日本映画 日本 です。(59分)

 

 


 

 

  激しい雨の降る精神病院 元船員の老いた男は、自分の虐待のせいで精神に異常をきたした妻を見守るため、妻が入院している精神病院に小間使いとして働いていました。 ある日、男の娘が結婚の報告を母にするため病院を訪れます。 そこで父親が小間使いとして働いている事を知って動揺する娘。 彼女は自分の母が狂人であることを恋人に悟られないよう懸念していました。 娘の結婚を知った男は不安の中、縁日の福引きで一等賞の箪笥を引き当てる幻想を夢見ます。 ある日、男は妻を病院から逃がそうと試みますが、妻は外の世界へ出る事を拒みます。錯乱した男は病院の医師や狂人を殺す幻想を見ます。 妻を連れ出す事に失敗した男は、狂人の顔に次々と能面を被せていく幻想を見るのでした、、。

 

 

 

 

とにかくこれが100年近い昔に作られた映画だという事にまず驚くばかりです。そしてサイレント映画でありながら、物語の説明や字幕が一切表示されない事にも驚かされます。 現在鑑賞出来る作品には、監督自ら再編集した際に、新たに音楽がつけられたものを観る事が出来ます。 この後からつけられた音楽がかなり秀逸で、日本的な音色を中心とした現代音楽が映像に合致して、時に不気味に、時に悲しく、映像だけでは判断しにくい感覚的な感情を見事に補ってくれていて、現在の観客にはとても観やすいガイドの役割をはたしてくれています。 この音楽の無かった公開時はかなり難解に思われたのではないでしょうか?

 

 

 

 

そうはいっても初見で映像を観ただけではちょっとストーリーが分かりずらいえ事は確かですが、大まかな設定さえ理解すれば、さほど込み入ったお話ではありませんし、どちらかと言えば、このカオスな世界の映像を自分が精神病院の患者になったように、疑似体験する立場で体感する映像作品として観るのが良いのかも知れません。

 

 

 

 

激しいフラッシュバックや多重露光、短いいショットの繋ぎ、オーバーラップなど、当時としてはかなり斬新な映像表現と実験が観られ、露光が一定していない事で微妙に明暗する映像や、フィルムのノイズ、不安定なコマ等の意図していない部分すら作品の味になっていて、その経年までも作品に独特の不気味さを加味しています。この暗さと不気味さは現在のホラー映画にも充分通じる奥深さがあり、「リング」のビデオ映像がかすむ程です。

 

 

 

 

そういった斬新な映像だけでなく、本作には正に日本映画らしいストーリーが根底にあります。 家族という単位におけるこの時代の封建的な父親像、そこからくる夫婦の歪みや後悔、娘との関係とその娘の縁談や家長としての見栄という因習的なものが破綻した、その先が現実と悪夢の中でかく乱しています。 ラストの能面には狂人と常人の区別の曖昧さに対する皮肉とも読み取れ、人間が本来持っている暗い闇を感じさせます。本作はもとより、本家ドイツの「カリガリ博士」等、前衛的な映像表現や芸術には精神病院や異常な性格といったサイコやホラーな世界観がこのような映像と愛称が良いんだな~とつくづく実感しました。

 

 

 

 

映像の中の女性などはまだ着物姿だったり、男性でも袴姿の人物が居たりと、大正のモダニズムが節々に感じられる絶妙な時代感がたまりません。

ちょっと取っつきにくい映画ではありますが、実験的な映像を観るだけでも興味深い作品ですし、とにかく日本映画としてかなり貴重な作品ですので、精神の安定している方

はこの機会にでもご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~! パー