集団ロシアン・ルーレットに巻き込まれる青年の、悪夢のような体験を描き、2005年ヴェネチア国際映画祭最優秀新人監督賞ほか数々の映画賞に輝いたスリラー。

 

 

 

 

 

 

       -  13 TZAMETI  -  監督 脚本 製作 ゲラ・バブルアニ

 

 出演 ギオルギ・バブルアニ、オーレリアン・ルコワン、パスカル・ボンガール 

 

こちらは2005年制作の フランス映画 フランス です。(93分)

 

 

 

 

  屋根修理の仕事で得る僅かな収入で家族と共に暮らすグルジア移民の青年セバスチャンは22歳の若者。 ある日彼は、仕事先の家主が大金を手にする方法があると吹聴しているのを立ち聞きしてしまいます。 その連絡が手紙で届くと耳にしますが、当の家主はそのプレッシャーからオーバードーズによって亡くなってしまいました。修理の仕事の収入を失ったセバスチャンが帰り支度をしていた時、偶然家主が言っていた手紙を見つけ、そのまま持ち帰ってしまいます。

 

 

 

 

封筒の中には、パリ行きのチケットが入っていました。 何があるのか分からない謎の仕事でしたが、彼には家族を養う為には大金が必要でした。 意を決してパリへと向かったセバスチャンは、手紙に入っていた13という数字に導かれるまま、暗い森の奥に佇む不気味な屋敷へと辿り着きます。 しかしそこには、思いも寄らぬ運命が待ち受けていた その屋敷の異様な雰囲気から身の危険と犯罪の匂いを感じたセバスチャンは逃げ出そうとしますが、これから始まろうとしている邪悪なゲームに、否応無しに参加させられることになるのでした。 

 

 

 

 

屋敷の大広間に設置されたゲーム会場には淀んだ熱気が漂っていました。 そこは、銃を持った13人のプレイヤーを円状に配置し、中央にある電球の点灯を合図に、13人が一斉に引き金を引くという「集団ロシアンルーレット」が行われる場所だったのです。 優勝者には賞金85万ユーロが与えられる事に。 会場にはプレイヤーの生死に莫大な現金を賭けるギャンブラーたちの欲望が渦巻いていました。セバスチャンに与えられた番号は皮肉にも13。そして無情にも、進行役の怒声によって第一ラウンドが始まります、、。

 

 

 

 

この設定だけ見ると、よくあるB級のシチュエーションスリラーと勘違いしてしまいますが、こちらはフランスのモノクロ作品。そのモノクロ独特の映像で描かれるアンダーグラウンドのギャンブルが描かれています。 その非現実的世界が妙に生々しく、本当にこんな金持ちの賭博があるんじゃないかと思ってしまいまう程のリアリティ。本作が長編デビュー作になる監督のゲラ・バブルアニは主人公同様グルジア出身という事もあって、移民とその生活の苦しさがセバスチャンに投影されている事が分かります

 

 

 

 

とりあえず何をするのか分からないまま踏み込んでしまった闇の世界で行なわれていたのが、なんと実弾を使ったロシアンルーレット! 逃げようとしますが、もう遅い。円を囲むようにそれぞれが前の人間の頭に銃を当て合図と共に引き金をひくという恐ろしいルール。 皆プレッシャーに震え、薬はやるはお酒を飲むはの地獄絵図であります。モノクロで撮影されている為、余計に室内の重い空気と異常な緊張感が画面から伝わって来ます。 

 

 

 

 

そんな内容からかR15+に指定されていますが、グロイ場面はさほどありません。 ただ、頭から流れる血の黒さが強烈なインパクトを脳裏に焼き付けます。若干本題に入るまでのセバスチャンの生活描写が長く感じますが、その淡々とこなす仕事や家族との生活が描かれる事によって、闇の世界に足を踏み込む彼の動機に説得力と共感を増す効果になっています。

 

 

 

 

ただ難点を言えば主人公がロシアンルーレットに半ば強制的に参加させられる時点で

ある程度までは行き残るという事が保証されている為、次に死ぬかも?という緊張感

と不安が弱くなってしまっているのは仕方ありません。 イーサン・ハントやジョン・マクレーンが映画の途中で死なないのは分かっていますものね。 「ディア・ハンター」 程のもしや次に!という凄まじさが感じられない事に、あれは別格な作品だったんだな~と改めてここで痛感したのでした。 そうはいっても本作の主人公であるセバスチャンを演じているほぼ無名のギオルギ・バブルアニの演技は素敵でした。

 

 

 

 

異常な緊張感と、次に死ぬかも知れないという常軌を逸した精神状態を小刻みに震えながら見事に演じています。 意外にも賭けが終わった後の演出に上手さを感じた私。ラストの描写に往年の「死刑台のエレベーター」等に通じるフランス映画特有の大人の非情さが見える所もあって爽快さはありませんが、現実世界に埋もれて生きる人間のこうまでしないと這いあがれないという深い悲しみと儚い夢が、痛みと共に伝わってくるような作品でした。  ロシアンルーレットのサスペンスと社会の底辺で生きる人間の正にサバイバルを描いた映画です。 機会があれば一度ご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~! パー