ロックバンドU2のボーカルボノの原案を基に、「ベルリン・天使の詩」のヴィム・ヴェンダースが監督した都会の寓話的なラブストーリー。ベルリン国際映画祭にて銀熊賞を受賞

 

 

 

 

 

 

 

 

    -  THE MILLION DOLLAR HOTEL  -  監督 ヴィム・ヴェンダース

 

 出演 ジェレミー・デイヴィス、ミラ・ジョヴォヴィッチ、メル・ギブソン 他

 

こちらは2000年制作の ドイツ ドイツ イギリス イギリス アメリカ アメリカ

                                                                          合作映画です。(122分)

 

 

 

 

  2001年のロサンゼルス。  そのダウンタウンには社会からはじき出された人々が住みつくミリオンダラー・ホテルがありました。その中のひとり、トムトムは知的障害を持つ心優しい青年。 彼は住人たちの雑用をこなして暮らしていました。 そんな彼の気掛かりは、ホテルに住む美しい娼婦エロイーズの事。 トムトムは彼女に密かな恋心を寄せていた​​​​​​ました。

 

 

 

 

ある日、エロイーズがトムトムに声をかけてきますが、それはトムトムの親友イジーがホテルの屋上から転落死したからでした。 自殺か他殺か謎の彼の死。 イジーがメディア王の御曹司だったことで、その父親から捜査を依頼されたFBI捜査官スキナーがホテルに乗り込んできます。エキセントリックなスキナーは、ホテルの住人全員を容疑者として執拗な捜査を開始しますが、住人たちは皆、ひと癖もふた癖もある人間ばかりで思うように捜査は進みません。  FBIが捜査を始めたという事でテレビ局まで訪れる始末。 住人たちもしたたかで、自称画家のジェロニモが描いた絵をテレビのレポーターがイジーが描いたと間違ったのを利用して、画商に売って一儲けしようと企み始めました。 

 

 

 

 

一方、事件のごたごたに紛れてトムトムとエロイーズは急接近。 トムトムの彼女に対する気持ちはどんどん強くなっていきます。 そんな中、捜査が上手く進まない事に苛立ったスキナーは、気の良いトムトムを脅して無理矢理ジェロニモが犯人だと証言させますジェロニモは逮捕されますが、持ち主がいないと絵は売れません。 住人が金持ちになるチャンスを壊したと悲嘆に暮れるトムトムの心を住人たちは利用して、ジェロニモの代わりに彼がイジーを突き落としたと証言した告白ビデオを撮影します。 それがテレビで流れたことで、トムトムは警察に追われることになりました。 事情を知っているエロイーズはトムトムを密かにかくまい、どこか見知らぬ土地で一緒に暮らそうと囁きかけるのでしたが、彼にはそれが夢物語だと分っていました、、。 というお話です。

 

 

 

 

U2のボノが本作の原案者という事で、こちらの地方では劇場公開がなく、ファンの私はサントラのみ購入して、ソフト化されてようやくビデオ?で観た想い出のある作品。今回久々にDVDをレンタルして鑑賞しました。 監督の ヴェンダースも好きな映画が多くて、このコラボに喜んだのでしたが、若干期待を上回る程の内容とはいきませんでした。二人とも好きなのにやや辛口なのは、好きだからこそでもあるのですが、、。

 

 

 

 

実在するホテル ミリオンダラー・ホテルの屋上から始まるオープニングはもう素敵でバッチリな作品でしたが、特に前半部分がちょとゴチャゴチャした印象で、なかなか物語に入り込めませんでした。 FBI捜査官スキナーがかなりエキセントリックなキャラクター設定という事も重なり序盤はかなりコメディ色が強めです。その為、映画がどちらへ向かっているのか分からない状態がつづきます。 中盤からやっと物語に整理がつきはじめてこの作品の核になるトムトムとエロイーズのぎこちないラブストーリーにお話が集約していきます。 

 

 

 

 

軽い知的障害のあるトムトムと、やはり精神に傷のあるエロイーズのまるで中学生のようなピュアな恋愛。 他人から虐げられている二人の、危なっかしく痛みを感じる交流に胸が痛みます。 二人を取り巻く薄汚れたホテルと謎の住民が醸し出すカオス感が無垢な二人の存在をより孤独なものに感じさせます。そんな二人を映すカメラはとにかく美しい映像で、衣装も独特でお洒落なものです。一応ミステリー映画としての要素はありますが、実はそれが余計に思えてしまう純愛の映画で、それほどトムトムとエロイーズの二人には魅力がありました。

 

 

 

 

主人公のトムトムを演じるジェレミー・デイヴィスの屈託のない演技力、それにもましてまだゾンビハンターになる前のミラ・ジョヴォヴィッチの美しい存在感がこの映画を特別なものにしています。 メル・ギブソンの身体に傷を負ったキャラも、トムトムとのシンパシーを感じさせますが、ちょっとエキセントリック過ぎた感があって少し残念でした。他にもジョン・レノンまがいのピーター・ストーメアや、インディアン風のジミー・スミッツ、相変わらずのパンクなアマンダ・プラマーや、ワンシーンだけのティム・ロス、カメオ出演のボノ等、渋めでマニアックな出演陣が楽しませてくれます。 音楽はボノをはじめエッジやブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワといった顔ぶれで映画を引き立てます。 

 

 

 

 

ストーリー自体にはさほど面白さはありませんが、その作品から漂う雰囲気と映像はとても美しい作品です。 特にオープニングとエンディングの陰影のある空の映像は、そのままポストカードにしたい程です。 そこに被さるトムトムのモノローグ 「人生は完璧で最高だ それは 魔法や美しさに満ち驚きがある 皆が切望するものがあるのに 生きてる間はよく見えない」 ヴェンダース作品を最も感じる瞬間でした。 もっと二人のお話に集中すればより好きな作品になった気がしてなりませんが、それでもやはり魅力的な作品には違いありません。

 

 

 

 

映画のラスト ミリオンダラー・ホテルの部屋に佇むエロイーズの姿からカメラが徐々に引いていき、都市の全景が見えて来ます。 古いホテルを囲むように立つビル群、その大都市の片隅で、小さく寄り添うように存在した二人の無垢な純愛。機会があれば一度ご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

U2が歌う映画のテーマ曲です。 宜しければお聴き下さい。 音譜