アメリカが真珠湾攻撃を受けた日から6日後の12月13日の南カリフォルニアを舞台に日本軍が攻めてくるという恐怖の中での住民たちの一日の行動をコメディ・タッチで描く

 

 

 

 

 

 

        -  1941  - 監督 スティーヴン・スピルバーグ 

 

出演 ジョン・ベルーシ、ダン・エクロイド、クリストファー・リー、三船敏郎 他

 

こちらは1979年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(118分)

 

 

 

  日本海軍による真珠湾攻撃から6日後の1941年12月13日。 西海岸の住民は日本の次の標的は自分たちだという見えない恐怖に包まれていました。やがて南カリフォルニア防衛の任を負う陸軍第3軍団司令官にスティルウェル中将が着任し、陸軍、海兵隊に動員命令が下される事になります。 同時に市民防衛作戦が発令され、アメリカ国民は南北戦争以来の、母国の"守り"に就くこととなりました。

 

 

 

 

そんな中、日本海軍の潜水艦は羅針盤が故障したため、カリフォルニア州沿岸に迷い込んでしまいます。 艦長のミタムラ中佐は現在位置がアメリカ本土に近いことを知ると「軍事的価値は薄いものの、ハリウッドを攻撃すればアメリカ人の戦闘意欲を喪失させる効果はある」 とハリウッド攻撃を計画します。 しかし、潜水艦に同乗するドイツ海軍の観戦武官、クラインシュミット大佐はミタムラの作戦に否定的でした。

 

 

 

 

迎え撃つのは、「真珠湾の次はロサンゼルスが標的にされる」 と信じて疑わないP-40 トマホークの飛行士、沿岸の住宅地に高射砲を据える軍曹、それを見て愛国心を燃やす老人、貧弱な民間防衛組織、ダンスと女の子に夢中の青年、爆撃機を見ると欲情する女秘書官、芋畑に敵の秘密飛行場があると確信している大佐、慰問局の開いたダンスパーティにはしゃぐ兵士達、そして、この秋に封切られたアニメ映画 「ダンボ」に涙しながら 「この街の住人は変な人ばかり」と嘆くスティルウェル司令官達。

 

 

 

 

一方、ハリウッドを目指すためミタムラは忍者や侍の子孫である水兵たちを上陸させ、名前がハリウッドに似たホリー・ウッドという名前の木こりを拉致します。 彼の荷物からスナック菓子のおまけに付いていたおもちゃの小さなコンパスを見つけます日本兵はこれで方位が分かると歓喜しますが、ホリーはそれを強引に飲み込んでしまいます。やがて、空襲警報が鳴り響くロサンゼルス上空に未確認機が飛来し、沿岸には潜水艦が浮上します。 そこで見たサンタモニカの遊園地をハリウッドの一部と誤認した日本軍が攻撃を開始するのでした、、。 というお話です。

 

 

 

 

真珠湾攻撃から数日後のピリピリしたアメリカの軍隊と住民が、迷い込んだ日本の潜水艦によってパニックになるカオスな状況を、とことんお馬鹿なコメディに仕上げた「スピルバーグの最大の失敗作」という汚名を着せられた作品です。個人的には、映画というものを見始めた時期で、公開当時本作の試写会に当選して劇場で鑑賞したという思い入れのある作品で、その後も何度か観返しています。

 

 

 

 

で、その都度思うのが、やっぱりお話自体は面白くないという結論になってしまうのであります。 それは何故か、今回観返して思ったのは、本作は群像劇ですが一応ウォーリーという一般青年の恋話エピソードが軸になってストーリーが進んでいくのですが、彼に全く感情移入出来ないつまらないキャラクターの為に、メインのエピソードの顛末に興味が湧かず、ストーリーを引っ張る推進力がありません。 彼が好きなベティという女の子を取りあうチャック伍長とのバトルもどうでもいい事に感じてしまいます。

 

 

 

 

もう一つは、敵国の潜水艦がすぐそこに現われたという緊迫した状況にサスペンス的な緊張感を持たせず、とことんコメディに仕上げてしまった事も残念な所です。その緊迫感だけでも映画の推進力になったと思うのですが、皆お馬鹿なキャラクターの為に恐怖心も緊張感も全くないものになってしまっています。 辛うじて日本軍の艦長を演じる三船敏郎はギリまともなのが救いではありましたが、、。

 

 


 

 

じゃぁ何故観返してしまうのか?という疑問なのですが、そんなお話自体がつまらなくても見所が沢山あるのが本作の厄介な所です。 「未知との遭遇」 と 「レイダース」の間に作られたこの作品にはスピルバーグ映画のエッセンスが盛りだくさんに詰まっているのです。 ソフトフォーカスの映像やディテールの凝り具合、巨大なセットやミニチュア撮影スムーズな移動撮影にダンス、得意なピタゴラスイッチ現象、それらを無駄に壊しまくる破戒のスペクタクル。 本作の一番の魅力は破戒と混沌です。

 

 

 

 

とにかくお金と手間のかかったものを何から何まで破壊しまくるその無駄な映像の美学と迫力は当時のスピルバーグでしか出来なのではないでしょうか? それを観るだけでもこの映画の価値は充分にあります。 戦争は破戒だ!というジョークにもとれますね。そして今作でも映画に貢献しているのはジョン・ウィリアムズの音楽です。 様々な所で使われていてお聴きになった事もあるかも知れませんが、このハチャメチャなカオスの世界をまとめてくれているのが彼のテンションアゲアゲのテーマ曲なのは間違いありません。 「インディー・ジョーンズ」 に通じる高揚感がある曲ですね。

 

 

 

 

ロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルの脚本を、物量作戦でこれでもか!と破壊した本作。スピルバーグ世代には外せない作品です。 色々な意味で物議を醸す映画となっておりますので、この機会にでもご覧になってみて下さいませ、です。

 
では、また次回ですよ~! パー