ゾンビウィルスのパンデミックが収束した後の世界を舞台に、ウィルスの感染から回復した人々が、ゾンビであった時の記憶や社会の圧力に苦悩する姿を描いた異色の近未来スリラー

 

 

 

 

 

 

         - THE CURED - 監督・脚本 デヴィッド・フレイン

 

 出演 エレン・ペイジ、サム・キーリー、トム・ヴォーン=ローラー 他

 

こちらは2017年制作の アイルランド  フランス フランス の合作映画です(95分)

 

 

 

 

  感染した人間は凶暴化してしまう新種の病原体 「メイズ・ウィルス」。その感染がヨーロッパ全域に拡散された 「メイズ・ウィルス」は、主ににアイルランドへ壊滅的な被害をもたらしました。 しかし、ウィルスの治療法が発見された事で、世界は秩序を取り戻し始めていました。「メイズ・ウィルス」の拡散から6年後、感染者のうちの75%は正常に戻り、治癒した者はキュアード「回復者」 と呼ばれ社会に復帰します。 しかし、残りの25%は、軍が管理する施設に収容されていました。

 

 

 

 

回復者の1人であるセナンは、施設で友人になったコナーと共に、社会復帰しますが、かつて人を襲っていた回復者を、社会は怪物扱いし、受け入れようとしませんでした。セナンは、義理の姉でジャーナリストの、アビーの家に同居する事になります。彼の兄で、アビーの夫だったルークは、「メイズ・ウィルス」の感染者に襲われ命を落としていました。 アビーはセナンを好意的に迎え入れ、残された息子のキリアンと対面させ3人は家族のように暮らし始めます。セナンは新たな仕事として、「メイズ・ウィルス」の感染者が収容されている、軍の施設で働き始めます。 収容所には、感染者を1人でも回復させて救おうとする、ライアンズ博士が研究を続けており、セナンは助手として雇われたのでした。

 

 

 

 

収容所の感染者は、セナンを襲おうとせず、ライアンズ博士から 「回復者はウィルスが体に残っていて、仲間と判断される為に、感染者に襲われない」 と聞かされます。また、収容所の地下には、治療薬でも回復しない多くの感染者が収容されており、「これ以上の救済は不可能」 と考えた政府は、感染者達の安楽死の計画を進めていました。「メイズ・ウィルス」の回復者は、感染して人を襲っていた時の記憶を覚えていました。日常の生活に戻ったセナンも、ルークの死に関する断片的な記憶のフラッシュバックに悩まされる日々を送っていました。

 

 

 

 

一方、セナンと共に社会へ復帰したコナーですが、感染前は選挙に出馬するほどのエリートだった事から、自身に与えられた、清掃員の仕事に不満を抱えていました。 そんな差別的な社会への反抗心から、軍の上層部にも目を付けられたコナーは、回復者に対する世間の差別に対抗しようと、秘密裏に回復者だけの反乱組織を結成します。コナーは、家族以上の関係であるセナンにも、反乱組織に入るよう誘います。 セナンは、収容所にいた時に世話になった、コナーの誘いに一度は乗りますが、その活動は犠牲者も出してしまう程の、危険な内容でした。 コナーの危険な思想に、恐怖を抱いたセナンは、コナーを軍の上層部に引き渡そうとしますが、コナーは軍を振り切って逃走し回復者による反乱の、最終計画を実行するのでした、、。

 

 

 

 

細かな内容は読まずに、ジャケットとざっくり 「ゾンビ、パンデミック」という文字でレンタルした本作でしたが、イメージした映画とはかなり内容にギャップのある作品でした。本作のいわゆるゾンビ映画とは違う大きな点は、ゾンビに襲われる恐怖が主流のホラー映画ではなく、ゾンビ化するウィルスが既にある程度の終息を迎えた、その後の世界から物語は始まります。 それをあくまで今の現実世界と地続きなリアリティのある描写によって描かれています 映画は一度ウィルスにかかって凶暴化した人間が治療によって回復し、普通の社会生活に戻った事によって生じる差別や偏見、回復者の苦悩というものが中心に描かれたある種の社会派ゾンビ映画とも言える内容です。

 

 

 

 

つまりウィルスに感染してしまった事で凶暴化し、殺人も犯した元ゾンビであった人間と彼らを受け入れようとする社会の両方の困惑した視点から、現在の社会が抱えている問題の提起を試みています。つまりは外国人や移民、低所得者、障害者といった一部社会的弱者を 「ゾンビ」 という架空の存在に置き換え、マジョリティ(多数派)がマイノリティ(少数派)に対して抱く先入観と残酷な不寛容がこの作品のテーマでもあります。第二次大戦で迫害されたユダヤ人や、アフリカ系アメリカ人に対するKKKの所業を連想させる場面も多く登場します。

 

 

 

 

ただし、現実的に考えてしまうと、もし隣人が元殺人者であったり、何等かの問題のある人物だと知ったら、やはり誰でも疑心暗鬼になり素直に歓迎するのは難しいというのが正直な気持ちではあります。 あなたは犯罪を犯した人間を許せるか?と、問われているような気持にさせられる作品です。本作には「JUNO/ジュノ」等のエレン・ペイジが出演と製作でも名前を連ねています。人間の寛容と救済がテーマでもあるゾンビ映画。 一応のホラー演出もありますが、終始重い、曇った空に覆われた、 新たな解釈のゾンビ映画の誕生でございますので、興味がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー