若年層の失業率が20%に達し、確かな未来を見出せない若者が急増しているというベルギーの社会情勢を背景に、大人になりきれないまま子供を産んでしまった若いカップルの運命を、厳しくも優しい眼差しで見つめた社会派のドラマ

 

 

 

 

 

 

      - L' ENFANT - 監督 脚本 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

 

 出演 ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ、オリヴィエ・グルメ 他

 

こちらは2005年制作の ベルギー  フランス フランス の合作映画です。(95分)

 

 

1999年の 「ロゼッタ」 につづき、第58回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したダルデンヌ兄弟による本作。 アカデミー外国語映画賞ベルギー代表にも選出された

 

 

 

 

  20歳のブリュノと18歳のソニアのカップルは、生活保護給付金とブリュノの盗みから得たお金で生計を立てていました。 そんな生活を送る二人に子供が出来たとき、ソニアはブリュノに真面目に働いてほしいと、紹介された仕事を教えまブすが、リュノはそれを断ってしまいます。  ある時、ブリュノは子供と外で二人っきりになったのをきっかけにお金欲しさに子供を養子として売ってしまい、それを聞いたソニアはショックのあまり卒倒して病院へ。 

 

 

 

 

彼女の状態に慌てたブリュノは、なんとか子供を取り返す事に成功しますが、ソニアは変わらぬ彼の態度に激しく怒りブリュノを家から追い出してしまいます。その後、お金に困ったブリュノが再び盗みを働いた際に、子分のスティーブが遂に警察に捕まってしまいます。 責任を感じたブリュノは警察に自首するのでした、、。

 

 

 

 

主人公は、彼女に子供が出来たにも関わらず、盗みをしてはその日暮らしのような生活を送っています。 役所に子供の認知の書類を出す時も、その意味すら認識していないような態度で、軽くサインをします。 その上お金になるからと、自分達の子供を売ってしまう始末、彼女に「また出来るさ」と盗品を売った時のような軽い言葉をかけ、ブリュノの言葉を聞いた彼女は卒倒してしまいます。

 

 


 

 

そんな彼女の反応で、彼は初めて自分のやってしまった事の重大さを知る事になるブリノ。 そんな事があった後も、仲間の少年と一時のお金欲しさにひったくりをしますが、仲間の少年だけ捕まります。 以前の彼ならそのまま逃げてしまうのでしょうが、彼は自ら警察に少年を訪ねていき、自分が首謀者である事を告白し、刑に服す覚悟をします

 

 


 

 

そして子供の事件以来、会う事も拒まれていた彼女が、刑務所の面会へ訪れます。
そこでブリュノは初めて、自分のこれまで犯して来た罪の呵責の涙を流し、彼女もそれを受け入れます。この映画には映画音楽というものが挿入されていません。 エンドクレジットも無音のまま文字だけが流れていきます。 この無音の余韻によって、今まで観たこの映画としての物語と、今自分がいる現実の世界が混ざり合って一体化するような感覚に陥ります。

 

 

 

 

カメラも手持ち撮影が多用され、若い二人の心理を反映すように不安定で、思わせぶりなカットや編集もそぎ落とされ、そのままの世界がそこに映されています。余計な装飾品が排除される事で、主人公達の生活がリアルに伝わってきます。 その反面、商業映画の短い編集や、音楽で必要以上に盛り上げる映画が好きな方には、少し退屈で凡長に感じてしまう所があるかも知れません。日本のタイトルになっている「ある子供」、原題も 「子供」 になるようですが、これは二人に出来た子供というよりは、まだ大人になりきれない主人公のブリュノの事を指しているように思えます。 

 

 

 

 

他者の痛みを知って、初めて一人の人間として成長する、自分の中の「子供」から、完全ではないにしても、少しづつ成長し、今いる場所からちょっとだけ前へ進もうと歩き出した 「ある子供」 のお話なのではないでしょうか? 機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー