「エコール」で高く評価されたフランスの女性監督ルシール・アザリロビックが、女性と少年だけが暮らす謎めいた島で繰り広げられる美しく恐ろしい「悪夢」を描いた異色ドラマ

 

 

 

 

 

 

 

 

   - EVOLUTION - 監督 脚本 ルシール・アザリロビック

 

 出演 マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、

                                                    ジュリー=マリー・パルマンティエ 他

 

こちらは2015年制作の フランス映画 フランス です。(81分)

 

 

 

 

  映画は静かな海底の映像からゆっくりと始まります。 ごつごつとした岩肌、そこに根ざし、海流の流れのままに揺れるイソギンチャク、、。美しい孤島、その海辺の集落で暮らす少年二コラ。 彼は友人達と素潜りしていた海で水死体を発見します。 その遺体は自分と同じ年頃の少年で、そのお腹には赤いヒトデがついていました。 家に戻って母親にそのことを話すと、きっと何かと見間違えたのだろう言われてしまいます。

 

 

 

 

その後、ニコラは、いつものように母親から薬を飲ませてもらいます。 毎日飲むその薬に疑問を持つ二コラでしたが、母親は「あなたの体は今変化を迎え弱くなるの」と答えるだけでした。 絵を描くことが好きな彼は、ノートにヒトデの絵を描きましたある昼下がり、村の少年たちは女性たちに連れられて海辺で遊んでいました。 一人一人に母親が付き添うその光景は、まるで少年達を監視しているようにも見えます。二コラはあの死体を見つけた場所に再び向かうと、もう1度潜ってみたものの、そこには何もありませんでした。 しかし、あの時見た赤いヒトデを発見したニコラは、それを捕まえて自宅へと持ち帰りました。

 

 

 

 

ある日、二コラは母親に連れられ病院へ行きます。 そこで看護師に絵を描くことが好きだ話すと、どんな絵を描くのが好きなのか尋ねられたニコラは、少し言葉を詰まらせながら、は生物を描くのが好きだと答えます。その後、診察台に寝かされた彼は、腹部に何かの注射を打たれ、1日だけ入院をすることになります。 すると、友達のヴィクトルも同じように一泊入院をさせられていました。看護師のステラは、二コラの絵をに興味を持ち、彼が描いた絵を見せて欲しいとお願いしますす。 ニコラの大切なノートには、海辺では見ることが出来ない動物の他に、観覧車や都会を思わせるものがいくつか描かれていたのです。

 

 

 

 

やがて、病院から帰宅した二コラは、深夜になると浜辺にある家々から母親たちがランタンを手に提げて海へ行っている事に気が付きました。友達のヴィクトルを誘って海辺へ向かうと、岩陰に集まった母親たちが奇妙な儀式のように集い、快楽に耽る姿を見てしまいます。何か見てはいけないものを見たと思った二コラはベッドに入っても寝付けずにいました。そこへ母親が帰宅し、シャワーを浴び始めます。 胸騒ぎを抑えきれない二コラは、こっそりと母親の姿を覗くと、背中にいくつもの吸盤のような形をしたものがあるのを見てしまいます。 気配に気付いた母親も、その視線に気付くのでした。

 

 

 

 

翌日母親に連れられた二コラは病院に向かい、そのまま入院させられてしまいます。

そこには同じように入院させられている同じ年頃の少年達もいるのでしたが、、。というお話です。島には二コラのような少年と、母親という女性達しか存在しないという不思議な設定の物語で、ディティールはとてもリアルに描かれている反面、お話自体はとてもファンタジックで不気味という不確かな世界観の中でストーリーは進みます。子供から思春期へと変化していく少年二コラの疑問や好奇心、喜びや痛みという、ある特有の時期とその瞬間に見る大人という不気味な存在と世界、そして闇。 不安と期待が交錯する少年の心理を説明的なセリフを省いて、抽象的な映像で描いたダークなおとぎ話のような作品です。

 

 

 

 

象徴的に描かれる雌雄同体で無性生殖が出来る赤いヒトデという生物、聖母のようなステラ、羊水のような海、黒い岩肌の海岸と無機質な病院。 そして光と闇。監督のインタビューで本作をこう語っています。

「私は、映画は言葉ではないと思っています。言葉ではないからメッセージも要らない。あくまでも感覚、そして感情的に何か伝わってくれればいいと思っていますし、これはすごく内的な世界のお話であって、男の子が感じている不安や期待感といった彼の内面の世界が画面を通して伝わればそれでよいと思っています」

 

 

 

 

まるでシュールレアリスムの絵画のような世界で、少年のEVOLUTION(進化)を表現した、ホラーのようなダークさで描かれた美しい詩のような物語。子供たちのイマジネーションと成長を描いた、おとぎ話のようなです。 主人公二コラのように現実世界を忘れて羊水のような映像に浸ってみてはいかがでしょうか?

 

では、また次回ですよ~! パー